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留学!? 4

 私、下駄箱で上履きに履き替えた。

 一緒に1-Aの下駄箱コーナーで履き替えているありさちゃんに、『先行ってるね』って一声かけて、廊下を足早に歩き出す。

 教室へ向かう同級生たちを掻き分けて進む。おはようの挨拶を交わしながら。

 でも、教室の前までやってきても、私の歩調は緩まない。教室の前を素通りし、さらに、廊下の奥へ。

 すれ違う人も断然少なくなった。

 ほとんど、だれからも見られていない。自然と、瞳がうるむ。

 両下まぶたの上に水滴が浮かび、膨れ、あふれ、しずくとなって頬を伝う。

 キラキラと朝の光を反射しながら、床へ落ちていった。

 そのまま、私、トイレへ飛び込んだ。

 開いている個室にこもって、入り口にカギをかける。

 ポケットをまさぐり、男くさいハンカチで、慌てて目元を押さえた。

 そして、

「う、ううう、うう、ううう・・・・・・」

 声を殺して、私、涙をこぼし続けた。ハンカチをぬらし続けた。

 私の初恋の人の心には、私ではない他の誰かが住み着いている。

 その人とは、たった一度きりの出会いだったというのに。

 その面影を半年以上も、追い求めてしまうほどに、熱く、熱烈に・・・・・・


 しばらくして、落ち着いたので、トイレの個室を出て、入り口の洗面台の前へ。

 帽子を脱ぎ、髪を下ろし、トイレの鏡でチェックしながら、いつものつかさちゃんにもどっていく。

 まだ、目元が赤いけど。でも、大丈夫。だれも気がつかないわ、きっと。

 私の美貌にみんな見とれて、そんな些細なことにだれも注意しない。

 みんなは私の表層的なモノだけをみている。だから、本当の姿を、だれも見通してたりなんかしないもの。

 がんばれ、つかさ! がんばれ!

 私、教室の入り口の前で、大きく深呼吸して、チャイムとともに、教室の中へ入っていった。

いつものように、みんなに挨拶。

 エンジェルスマイルつきで。

 私、自分の席へついた。


 1時間目が終わった。

 授業の内容なんて、ちっとも頭の中に入ってない。

 ただ、1時間、清貴さんのことを、清貴さんが追い求める人のことを考えていた。

 去年の10月に初めて会って以来、一度もあったことのない女の人。

 私たちは、今年入学したのだから、当然同級生たちではない。

 上級生たち。

 2年生か、3年生か、今年卒業した誰か・・・・・・

 秋以来、清貴さんが探し回っていたのに、見つけることのできなかった少女。

 一体、だれなのだろう? どうして、見つけることができなかったのだろう?

 そして、もし清貴さんが、その少女に再び出会うことがあったら、どうなるのだろうか?

 そのまま、二人は恋人同士になるのだろうか?

 あ、でも、清貴さんが一生懸命に探し回ったというのに、見つけることができなかったということは、その少女、清貴さんのことを避けていたってことだよね?

 さくらヶ丘女子高校は、とても大きい学校というわけではなかったのだが、清貴さんは学校の職員ではなく、男性でもあったので、そうそう校舎内に出入りできるってわけでもなかった。だから、特定の生徒を見つけるというのは、意外と難しいのかも。だとしても、10月から半年以上探しつづけても見つからないなんて、ちょっと考えにくい。

 やっぱり、その少女、清貴さんのことを避けていたのよね?

 その子、一度会ったきりの清貴さんのことを警戒して、もしかしたら、嫌っていたのかも。

 そうであるなら、たとえ再会することがあったとしても、二人が恋に落ちるなんてことはないだろう。

 もしかしたら、まだまだ私にだって、チャンスがあるのかもしれない。

 清貴さんがすっぱりあきらめさえすれば、私にだってまだまだ。

 とにかく、その少女がだれなのか、調べて、清貴さんへの気持ちをはっきりさせなくては。

 すべては、そこからしか進まない。



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