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つかさ1/2 6

「あ、それはそうと、つかさちゃんは、どうしてこんなところに? 今日は学やありさちゃんと一緒じゃないの?」

 清貴さん、私に向き直った。

「あ、ちょっと、部活で不愉快なことがあったので・・・・・・ それに、まだ、学君たちと合流する時間じゃないから」

「そっか、なにがあったのかは知らないけど、高校って、勉強の内容が高度になったり、いろんな中学出身の生徒が集まってくるから、価値観の相違とかで、衝突したりすることも最初のうちはあるだろうけど、結構、たのしいこともいろいろあるから、たくさん友達を作って、いろんなことに挑戦して、たっぷり高校生活を楽しむといいよ」

「ええ、そうします・・・・・・」

「10代の後半の時期は、一度きりなんだし、後で後悔しないように、今しかできないことを、思いっきり楽しんだものの勝ちだと思うよ」

 なぜか、清貴さん、フフフと笑った。

 自分の高校時代の想い出を振り返ってでもいるのかな?

「清貴さんが高校生の頃って、どんなことをしていたんですか?」

「ん? 俺? どんなことしていたかなぁ~」

 楽しげな様子で、いろいろ思い出そうとしているみたい。

 なんか、今の状況、他の人が見たら、恋人同士が仲良く会話しているように見えちゃうかも。

 そんなことを考えたら、ほおが自然と熱くなってきた。

「俺、高校時代、天文部に入っててさ。よく学校にとまりこんで、望遠鏡で星をながめてたなぁ」

 へぇ~ 清貴さんが星に興味があったなんて話、初耳。

 って、だから、宇宙人に会いたいなんて、言っていたのかしら?

「高1のとき、2つ上の先輩に素敵な人がいてさ。その人に憧れて天文部に入ったんだ」

 んん!? 清貴さん、高校時代の恋話、聞けちゃうの?

「俺、その当時は全然、星とか、星座とかに興味がなかったのだけど、その先輩に、いろいろと教えてもらって、夢中になって話しているのを聞いているうちに、しだいに星の魅力のとりこになってさ。気がついたら、先輩への憧れなんて、もうどうでもよくなってて、ただ、星空を眺めているのに夢中になってたんだよな」

 清貴さん、高校時代の思い出がよみがえってきたのか、生き生きとしてきた。

「結局、高校時代の3年間、母さんの道場で、体を鍛える以外のほとんどの時間、星のことを考えて、星を眺めてばかりだった」

 え~と、ってことは、清貴さん、高校時代、天文部に入るきっかけの憧れ以外、恋とかしなかったのかな? 健全な高校生。ちょっと清貴さんらしいかも。

「清貴さんって、高校時代、人を好きになったりしなかったんですか?」

 そういえば、私が初めて会ったとき、清貴さんは高校生だったっけ。高校3年生の清貴さんに危ないところを助けられて、私、恋をしちゃったのだった。

 私、耳まで赤くなっちゃったかも。

「ああ、もちろん、好きな人がいたさ」

 ええ! だれ? どんな人が好きだったのだろう?

 高校生のころに、私とも出会っていたのだから、もしかして、もしかするのかな?

 ちょっと期待しちゃう!

 でも・・・・・・

「同級生でさ、笑うとえくぼができて、すごくチャーミングな子だったよなぁ」

 う~ん・・・・・・

 ちょっと、落胆。

 まあ、そんなに都合のいい話なんて、ないよね。

 大体、私、その当時は小学4年生で、清貴さんは高校3年生だったのだし、恋愛がどうとかって関係になるなんて、ないよね。

 それに、10代の多感な頃、好きな人がひとりや二人いるのが当然なんだし、こんなに素敵な人を、女たちがほうっておくなんて、ありえない!

「何度かデートをしたけど、結局、高校卒業して、彼女、東京の大学に進学したから、それっきりになっちゃったな」

「そ、そうなんですか・・・・・・」

 ついつい、相づちの口調に喜びが混じっていたのは仕方がないか。

「大学時代も何人か女の子と付き合ったけど、結局、あんまり続かなかったなぁ だから、今もひとりなんだよねぇ~」

 ってことは、今、清貴さん、彼女募集中?

 あ、ああん! こ、これは!

 今が、告白のチャンス!

 心臓がドキドキしてきた。頬がさらにさらに、赤くなる。

 瞬きの回数が途端に多くなった。

 勇気を振り絞って、大きく息を吸い込んで・・・・・・

「あ、あの・・・・・・」

「あ、いた、いた! つかさちゃ~ん! お~い!」

 お約束のように、間の悪いときに、間の悪い登場の仕方をするのは、当然、間の悪いマイペース娘。

「つかさちゃん、こんなところにいたんだ。探してたんだよ」

「友達がよんでるよ」

「ええ、すいません」

「いってあげなよ」

「はい」

 折角のチャンスを、折角のチャンスを!

 ちょっぴり涙目になっちゃった。


「ね、ねぇ~? つかさちゃん、さ、さっき一緒にいた人は?」

 私たち並んで生徒会室へもどるところだった。

 ひかりん、なんか動揺しているみたい。

「ん? ああ、えーと、選択の時間の武道教えている三木先生って、知ってる?」

「え? えっと、うん。たぶん」

 さくらヶ丘女子高校時代からの伝統で、1年生は、週一で選択科目を受けることになっている。選択できるのは、華道・茶道などの文化科目と剣道・柔道などの武道科目のどちらか。

 私とひかりんはもちろん、文化科目だけど、学君とありさちゃんは武道科目。驚いたことに、委員長も武道の方を選択していた。

「その三木先生の息子さんの清貴さん」

「・・・・・・?」

 なんでそんな人とって目だね、その目は。

「清貴さんって、結構優秀で、今、大学院に通っているんだよ」

「そ、そうなんだぁ~」

「それに、大学院に通いながら、毎週、月曜日と水曜日と金曜日の放課後、三木先生の手伝いをして、柔道部とか、合気道部とかのコーチもしているんだぁ」

 えっへん! 私、ちょっと自慢げ。

「へぇ~」

「それに、三木先生の自宅にも、道場があって、柔道や合気道、空手なんかを、子供たちに教えたりもしてるの。学君やありさちゃんも、そこで、教わってたんだよ」

 私、自分のことのように、鼻高々。

 清貴さんがどんなに格好がいいかとか、強いかとか、まだまだいろいろ伝えたいことがあったけど、話をする前に、生徒会室までもどってきてしまった。

 ちょっと残念! ううん、とっても、残念!!



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