つかさ1/2 4
お昼に制服の交換を済ませて、午後からの授業はいつもの格好。
やっぱり、男くさい男子用の制服なんかより、断然おちつくわぁ。
で、午後の授業も淡々と終わった。
放課後、私はいつものように生徒会室。
熊坂会長の演説を聞き流しつつ、この後、どう話を切り出そうか、考えていた。
やがて、会長の話も終わり。
私、会長の前へ。
「会長、ちょっとお聞きしたいことがあるのですけど?」
「ん? なんだ?」
熊坂会長、手元の書類に視線を落としたまま。
「観桜会でのことですけど、会長、写真部となにか約束をしましたか?」
「写真部? え~と、なんの話?」
ようやく、書類から目を上げて、私を見上げる。
「観桜会のとき、写真部が女子の写真を撮って、生徒たちに販売してたの知ってますか?」
女子っていっても、そのほとんどは私の写真だったのだけど・・・・・・
「ああ、観桜会の写真か」
なぁんだとでもいうかのように、急に興味をなくしたのか、再び書類に視線を落とした。
「大崎、これでいいと思うよ」
そういいながら、会長の判子を押す。
「昨日、写真部の人に訊いたんですけど、あの写真販売で、会長マージンを受け取っていたって話じゃないですか? それは本当なんですか?」
「ん? ああ、そうだよ。ただし、私個人で受け取ったんじゃなくて、さく女生徒会の名義でな。今年は、なかなかいい収入になったよ。今年のメンバーには感謝しているぞ」
さも当然って態度。
ムカムカムカ・・・・・・!!!
「なんで、そんなことするんですか? 人の許可も得ずに、勝手に写真を売るなんて、ひどいじゃないですか!」
ついついきつい口調になっちゃう。
でも、熊坂会長、え? って感じで、意外そうな表情して私を見上げた。そして、冷静な口調で。
「神宮寺、お前なに怒ってるんだ?」
な、な、なんですってぇ~! 私が、なんで腹を立ててるか、分からないとでも言うつもり!?
「なんで、私の許可も得ずに、勝手に私の写真で商売なんかするんですか!?」
でも、熊坂会長の口調は、相変わらず、意外そうな感じ。しれ~と、
「ん? 勝手にって、私の方で写真部に許可出しておいたはずだが?」
「な、なんの権限があって、会長がそんな許可を写真部に出すんですか?」
「なんの権限って・・・・・・」
熊坂会長、私たちの話にそれとなく耳を傾けていた大崎先輩の方を見て、アレもってこいって命令した。
大崎先輩、それだけで分かったみたいで、さっそく、奥の部屋へ行って、なにかの箱を持ってすぐにもどってくる。
その箱を受け取り、熊坂会長、中から書類の束を取りだした。
「ほら、今年の1年生たちの入部届けのコピー、えっと、神宮寺、神宮寺、あった、これだ」
私の提出した分を取り出して、渡してくる。
「ほれ、書いてある文章をよく読んでみな」
私、改めて、その書類にしっかりと目を通した。
そして、中ほどに書いてある一文に目が釘付けになった。
『部活動中における各種権利(肖像権、著作権、その他)は、当部活・同好会に帰属するものとします』
つまり、部活動中の写真撮影は、本人に直接許可を得なくても、部・同好会の判断しだいで、行われるってわけだ。
そうか、私が、このさくらヶ丘歴史伝統研究会(さく女生徒会)に入部したとき、この書類をキチンと読まずにサインしたのだっけ・・・・・・
だ、だまされた!!!
「うっ・・・・・・ こんな条文がどうして、こんなところに・・・・・・」
「ああ、昔、さくらヶ丘の水泳部が全国大会に出場したことがあって、そのときに、水泳部のエースが水着姿を写真に撮られるのが恥ずかしいから、撮らないでくれって、もめたことがあったらしい。それで、以後、同じようなトラブルが起きないように、そういう条文をいれることになったらしいぞ」
「な、なるほど・・・・・・」
「で、気が済んだか?」
「・・・・・・はい」
く、くやしぃ~!!
釈然としない。たぶん、弁護士を立てて、裁判に訴えれば、こんな条文など無効になっちゃうようなものなのだろうけど。
でも、こんなとんでもないことを書いていたのに、よく読みもせず、サインしてしまった私も悪い。不注意以前の愚かな行動だった。
これからは、こんな風にだまされたりしないように、書類とかはよく読んでサインするようにしなければ!!!
「それはそうと、6月からプール開きになるから、神宮寺、水着の準備、しっかりしておけよ」
「え?」
意表をつかれるってこういうことをいうのだろうな。
今まで、写真の話をしていたのに、いきなりプールの話なんて。
でも、会長の話、実は今までの話と密接につながっていた。
「プール開きにあわせて、水着姿の写真撮影をして、写真集を販売する契約になってるから、あんまり食べ過ぎて太ったりするなよ!」
「・・・・・・」
会長、にこやかに私を見つめている。
え~と、今、熊坂会長なに言った?
ニコニコニコニコ・・・・・・
「・・・・・・」
ニコニコニコニコ・・・・・・
「・・・・・・」
ニコニコニコニコ・・・・・・
思わず、大声が出てしまった。
「はぁ!? なんですとぉ!!!」