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勉強しましょう! 3

 しばらくして、痛みが引いたので、私たち教室へもどった。

 今日から、私は授業中、教科書を開くだけでなく、参考書も机の上に。

 さすがに、その授業とは違う教科の参考書を開くのはまずいので、英語の授業なら、英語の参考書。数学なら数学。古文なら古文の参考書を用意してある。

 でも、教科書・ノートだけでなく、各教科の参考書まで持っていくなんて、私のカバンだけじゃとても足りないよ。

 中学のときみたいに、ザックを背負って、毎日学校へ来なくちゃ。

 みっともない! 格好ワルい! ダサダサ!

 けど、いちいち家と学校の間を分厚くて、重たい参考書を毎日運ぶなんて、面倒くさいなぁ。それに、この学校、中学のときみたいに、平地にあるのじゃなくて、長い坂道の丘の上。荷物を運び上げるだけで、相当疲れちゃうよ。

 今日はパパに車で送ってもらえたからよかったけど、毎日歩いて、重たい荷物を担いで往復するなんて・・・・・・

 こういうときに、どこか個人用の荷物を保管して置けるロッカーみたいなものが、学校にあると便利なのにな。

 残念ながら、神宮寺高校も、旧さくらヶ丘女子高校も、そういう個人ロッカー制をとっていなかったみたい。

 やっぱり、机の中に置きっぱなしにするしかないのかなぁ?

 かといって、学校におきっぱなしにしちゃうと、家で復習ができなくなっちゃうし・・・・・・

 委員長はどうやっているのだろう?

 今度、訊いてみようかな?

 なんて、授業中に考えていたら、今授業がどのあたりを進んでいるのか、わからなくなってしまった。

 そういうときに限って、先生というのは、勘がさえるみたいで。

「次、神宮寺さん、読んで」

「え?」

 慌てて、隣の子に、『どこ?』って小声で訊く羽目になってしまった。


 ようやく、午前の授業も終わり、お昼ご飯。

 今日も私、ありさちゃん、委員長、ひかりん、それに、名もなき女子4人組の大所帯でお弁当。

 いつものように、委員長のお弁当箱を覗き込んで、『カラフル!』とか、『おいしそう!』なんて、やっている女子たち。

 どういうわけか、委員長とひかりんに感化されちゃって、彼女たちも自分でお弁当を作ってくるようになっていた。

「みてみて、このタコさんウィンナー、お母さんに上手ねって褒められたの!」

「ほら、私、シャケの焼き加減がうまいって、パパがいうの!」

「お兄ちゃんが、こっそりつまみ食いしようとするから、朝から大変だったのよ」

「おばあちゃんに、ご飯の炊き方おそわったら、ご飯ツヤツヤ~」

 はいはい、それは、それは・・・・・・

 ようございましたわね、オホホホ。

 う~ん・・・・・・

 なんか、このパターンってヤな感じ。

 まるで、私だけがお料理もできないダメ女。

 でも、まだまだ、私負けない! 私には、同志がいるのだから!

 我が同志は、この女!

「ぐふ。今日も卵焼きおいし」

 などとのたまいつつ、大口開けて、今二つ目の卵焼きをほおばったありさちゃん。

 ありさちゃんなら、どう見ても、自分でお料理するようなタイプじゃないし、絶対、朝、早起きして、自分でお弁当を作ってくるなんてありえない!

 私たちは、目に見えないけど、何者も断ち切ることのできない、固い絆で結ばれているのだよ。なぁ、我が同志ありさ姫よ!

 そうして、ありさちゃんとの固い友情をかみしめつつ、おにぎりをほおばる私。

 うへぇ~

 梅干だった。


「ねぇ? 委員長? 参考書をいつも学校へ持ってきているみたいだけど、あれって、毎日家から運んできているの?」

「え? ああ、あれ?」

 委員長、意味深に、にこりと笑う。

「え? 参考書? 参考書なんて、学校へもってきてるの?」

「ええ? 参考書って学校へ持ってくるものだったの!?」

「えええ!? 参考書なんてなくても、教科書開くだけで、ぐっすり眠れるじゃない!」

「サンコーチョってナニ? おいしいの?」

 などなど、名もなき女子たちは騒いでいるけど、ここは思い切って無視。

 ありさちゃんもひかりんも黙って委員長の答えを待っている。それぞれに、ハンバーグやコロッケを刺したフォークを口に咥えながら。

「ううん。私の使っている参考書は、生徒会室の備品のだから、毎朝、その日使う分だけ借りてきて、使っているんだよ」

「ええ!? 生徒会室の備品って、そんなのあった?」

 私たちが放課後、毎日顔を出す生徒会室。

 黒板と長机がいくつか、何世代か前の型のPCが3台、それに椅子が何脚かある以外、なにもない空間。

「ど、どこに?」

「ほら? 生徒会室の奥にドアがあるでしょ? あそこが資料室になってて、参考書とかいっぱいあるんだよ」

「し、知らなかった」

「ええ!? ほんとに!?」

 私とひかりん、同時に声を上げてしまう。

 なんでも、歴代の生徒会役員たちが、受験を済ませ、要らなくなった参考書のたぐいを後輩のために残していくのが、さく女生徒会の伝統であったらしい。

 参考書だとか、教科書のたぐいは、新品ほど値打ちがあると思うかも知れないけど、実は逆。

 ボロボロになり手垢がついて黒ずんでいるものほど、価値がある。

 ボロくなっているってことは、それだけ、前の持ち主がその参考書なり教科書なりを熟読したってこと。そういう人に限って、本文中の重要箇所に赤や青やいろいろな色で下線を引き、一目でどこがどれぐらい重要なのか分かりやすくしてあるもの。そして、その余白部分に気づいたこと、派生的な知識などなど、メモが書き加えられ、分かりやすく要点がまとめられていたりするのだ。

 もし、参考書を選ぶ必要があったのなら、書店で売られている新品のまっさらな参考書ではなく、町の古本屋で売られているような参考書のたぐいを買った方が、はるかに勉強になる。



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