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勉強しましょう! 2

 次に気がついたときには、保健室のベッドの上。

 最近、こんなのばっかりの気がする。

 観桜会の準備のときも、だれかに太い枝をぶつけられたし。

 気がついて、ベッドの上でモゾモゾしていると。

 ベッドのかたわらには、学級委員長がいて、心配そうに私を覗き込んでいた。

「え? ここは?」

「あ、気がついた? 保健室よ」

「っつ、いったぁ~ぃ!」

 いまさらながら頭がズキズキする。

「大丈夫? まだちょっと寝てた方がいいわよ」

「う、うん」

「つかさちゃん、祐一が蹴ったボールで、頭打ったの」

 そ、そうなのか・・・・・・

 確か、あのとき、裏門から玄関へ向かって歩いている最中で、グラウンド脇を通り抜けようとしていたのだっけ。そういえば、グラウンドでは、サッカー部の練習が行われていたような。

 ん? それはそうと、祐一? 祐一ってだれ?

「サッカー部が午後の練習試合に備えて、試合形式で練習してたのだけど、祐一がシュートしたボールがゴールポストに弾かれて、たまたま、そのすぐ後ろを歩いていたつかさちゃんに当たっちゃったの」

 ああ、なるほど。単に、私、運が悪かったのね。

 ん? でも、私が歩いていたところから、ゴールのあった場所まで、結構離れていたような気がするのだけど? たぶん、30メートルぐらい。

「ええ!? 危ないから、気をつけて、ゴールからかなり離れたとこ、私、歩いていたはずだけど・・・・・・?」

「うん、普通の男子が蹴ったシュートだったら、いくらなんでも気絶するなんてことはないのだろうけど、蹴ったの祐一だったから」

 委員長、目元までポッと赤くなっちゃって。

 ちょっと自慢げな感じがそこはかとなく・・・・・・

 なんとなく、祐一がだれなのか、見当がついていたけど、一応、質問しておこうかな?

「ねぇ、委員長がさっきから言ってる祐一君って、だれ?」

「ええ!!」

 途端に、委員長、非難がましい目で私を見る。

「忘れちゃったの! ひっどーい!」

「え~と、ええっと・・・・・・?」

 委員長、ベッドの上に身を乗り出すようにして、私の耳元で、そっとつぶやいた。その名前が触れれば壊れてしまいそうなガラスででもできているかのように。そっと。

「島崎祐一君」

 あはは、やっぱり。

 そういえば、観桜会のとき、島崎君のお母さんがやってきて、息子の祐一がどうとか言っていたっけ。


 それはそうと。

「ねぇ? 委員長は何でここにいるの?」

「え?」

 委員長、さらにもっと顔中を血の色に染めた。

「だ、だって、つかさちゃんが倒れたあと、サッカー部の男子たちが、救急車呼べ! だとか、心臓マッサージだ! だとか、いや、ここは人工呼吸だ! とか騒いでて、果ては、だれから順番に人工呼吸するかで殴り合いの喧嘩になっちゃったりしたから」

 私、慌てて、唇を押さえた。

 って、ことは、私のファーストキス、サッカー部の誰かに・・・・・・?

 い、いや! そんなの絶対いや!

 私、ファーストキスは、清貴さんにささげるって、決めてたんだもん!

 あんな汗臭い、泥臭い男どもに、奪われたなんて、絶対にイヤ!

 まして、私が気を失っている間にだなんて、イヤすぎ!

 私、おびえた目をして、委員長を見つめたのだと思う。

 委員長、やさしく、私に微笑みかけた。

 大丈夫よ、ってやさしく。

「私が割って入っていかなかったら、つかさちゃん、いまでも、グラウンドの隅で伸びていたままじゃなかったのかしら。みんな相手を押しのけるのに、夢中になっていたし」

「そ、そうなの・・・・・・」

「ともかく、あのままじゃラチが開かないので、祐一と私で保健室へ運び込んで、ベッドに寝かせてあげたの。だから、だれもつかさちゃんの唇は触ってないわよ」

「あ、ありがとう!」

 最後の言葉をきいて、私、猛烈に感激した。感謝した。

 そして、思わず熱烈に委員長を抱きしめていた。

 ありがとう! ありがとう、委員長!


 でも、それはそれとして、やっぱり、

「で、なんで、委員長があそこにいたの?」

 委員長、途端に追い詰められた獣みたいになっちゃって・・・・・・

 眼鏡の奥で、目が泳いじゃってるよ。

 うふ。かわいい。

 なんとなく、どんな答えが返ってくるのか、分かっちゃった。

「ああ、そうか、島崎君の応援をするために、早めに学校へきてたんだ」

 途端に、委員長、真っ赤な顔のまま、小さくなっちゃうし。

 図星だったのね。

「そっか、もしかして、毎日、早めに学校へ来てるの?」

「うん」

「ひょっとして、同伴?」

 ぷしゅ~!

 なんて、頭から湯気出してるよ。

 はいはい、それはお幸せなこって。

 はぁ~~~



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