表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/43

似ている!? 9

 部屋に飾ってあった、小さなぬいぐるみたちを二つの巾着袋につめ、ヒモを結んで、肩に掛けてあげれば、即席胸パッドの出来上がり。

 私の見立てでは、ぬいぐるみが4つ必要だと思うのだけど、学君2つで十分って。

 な、なんか、くやしい!!

 ともあれ、私は学君の着ていた上着を着込み、下は、部屋着のデニムのまま。

 部屋の中だけど、帽子を被った姿。

 ニセの学君とニセのつかさちゃんが誕生。

 早速、あれこれ実験してみなきゃね。

 まずは、学君の姿で、郵便受けと新聞受けをのぞいてこよっと。

 私、玄関に立って、ひとつ深呼吸。

 そして、一気に玄関のドアを開いた。

 うぉぉ! なんて、声が一瞬上がりかけたけど、すぐに、っちぇ! 野郎か! だなんて、声がチラホラ・・・・・・

 郵便受けをのぞいて、新聞受けから、夕刊を引っ張り出しても、だれも、私だとは気がつかなかったみたい。

 美少女つかさちゃんには、すごく興味があっても、しょっちゅう出入りしている親戚の少年の方には、男たち、興味なんてないのだねぇ。

 それどころか、なんとなく、羨望というか、妬みというか、悪意のこもった視線が痛い・・・・・・

 俺たちのつかさちゃんに、親戚だからって、気安く近づきやがって! ってな感じなのかな?

 きっと、中には、そういう悪意を行動にうつすヘンなやからもいるだろうし、もしかして学君、私と付き合うだけで、結構大変な迷惑をかけているのかしら?

 いつも変わらず優しい態度で接していてくれるけど、私、学君にとても感謝しなくちゃいけないのかもね。

 学君、ありがとう!

 でも、こんなこと、とても本人の前では言えないや。調子に乗りかねないしね。


 無事、私が夕刊をもって、玄関に帰還すると、学君、ホッとした様子を見せた。

 やっぱり、学君も心配だったみたい。

 もちろん、今のが私の変装だと見破られやしないかだけでなく、ヘンな因縁をつけられたりしないか。

 ドアの影で、いつでも飛び出せるように準備して、待っていてくれた。

「ただいま」

「おかえり」

 私たち、にっこり微笑みあった。

 う~ん・・・・・・

 この目の前の天使みたいな心を蕩けさせるような笑顔。これが、私がいつもまわりに振りまいているエンジェルスマイルなのね。

 なんで、男子たちが、この笑顔で目をハートにしてしまうのか、よく分かるような気がした。

 私って、ほんとすごい!

 いいえ、私の美人度って、とてつもなくすごい!


 それから、私たち、部屋へもどるため、玄関からすぐの階段を上ろうとしたのだけど、一階奥の台所の方から、ママの声が。

「つかさ、ちょっとこっち来て、お料理手伝ってちょうだい!」

 はーい、なんて返事をしたのだけど、なんかやだな、面倒くさい!

 私、食べるのは大好きだけど、料理するのって、いまいち好きじゃない。

「ね、つかさちゃん? ママが呼んでるよ」

 なんて、私の後ろから階段を上ろうとしている、ニセつかさちゃんに言ったりして。

「ああ!? いくらなんでも、バレるだろ?」

「どうだろう? ためしてみてもいいんじゃない?」

「ああ・・・・・・」

 って、単に手伝うのが面倒くさかっただけなんておくびにも出さずに、学君の背中を押して、台所へ。

「手を洗って、菜っ葉刻んでくれる?」

「はーい」

 って、返事をしたのは私だけど、台所の中へ入っていったのは、学君。

 包丁を取り、シンクのまな板の上に菜っ葉を並べて・・・・・・

 トントントントントン・・・・・・

 は、はやーい! むちゃくちゃ上手!

「え? つかさ、どうしちゃったの? 急に上手になって」

 ママも驚いちゃってるよ。

「熱でもあるの? 大丈夫、お医者さん行こうか?」

 って、私どれだけ下手くそだと思われてたのよ! もう!

「え、えっと、その・・・・・・」

 学君、どう返事をしていいかわからないみたい。でも、今、学君、声だしちゃったから、いくらなんでもママ気がつくでしょうに! もう! 考えなしなんだから!

「それになに? 私のウィッグ被っちゃって! 毛が入るから、料理のときは脱いでおきなさい」

 って、声の違いはスルーかよ!

「料理をするときは、髪をくくっておくべきなのよ。分かった? つかさ! あんたもお嫁にいったら、ご飯の仕度とかするんだから、これからは気をつけなさい!」

「は、はい・・・・・・」

 ママ、学君の返事に満足した表情で、お鍋の火加減を覗き込んでる。

 ふふふ。

 お嫁に行ったらって、その子の場合は、お嫁をもらったらなんだけど。

 でも、ママ、本当に全然気がつかないみたい。

 うう・・・・・・

 それは、それで、傷ついちゃうなぁ。


 結局、学君、晩ご飯の仕度全部手伝ってくれた。

 いつもと違って、手際よく手伝う私に、ママすごく満足そう!

「うんうん、あんたもやればできるじゃない! さすが、ママの娘よね」

 う~ん・・・・・・

 なんか、複雑。

 パパは今日も遅くなるって電話があったので、学君も晩ご飯を食べていくことに。

 いくらなんでも、家の前を不審者よろしく、男たちがウロウロしている状況で、女二人きりなんて、学君もほっておけない。

 そういうところは、頼りがいのあるいい男なんだよねぇ。

 ホント、学君が私のいとこで幼馴染みで、よかった。

 でも、ママは、結局、私たちがずっと入れ替わっていたの、全然気がついていなかったみたい。

「つかさんちのおばさん、結構、抜けてるとこあるよなぁ」

 なんて、学君、それはちょっと失礼な言い草じゃないの? まがいなりにも、学君のおばさんでもあるのだし。とはいえ、それは的外れではないと私も思うのだけど・・・・・・



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ