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4.モノクロの世界で、生きる君




「リズ隊長!」


輝く金髪をした少年が、瓦礫の中で作業を行うリズに駆け寄る。


「ヨキ、どうかしたの?」


ヨキと呼ばれた、まだ幼さの残る少年はリズの傍で立ち止まり、切らしていた息を整えた。



「……た、隊長はもう休んでてください!」


「……そんなことを言うためだけに来たの?」

 

急いだ様子のヨキに、何かあったのかと考えていたが特に何もないらしい。


「そんなこと、じゃないですよ!」


「片付けまでが大事な仕事よ〜」


何故か必死なヨキにそう返すと作業を再開させるリズ。


我が上司はいつでも仕事熱心だな、と感心しつつも、はぁ〜と頭に手を当ててヨキはため息をついた。


「……休んで欲しいのはただただ本心なんですけどね……」


「え〜」


「だって隊長……」



ヨキは辺りを見渡す。


鼻につくのは大量の血の匂い。



視界に染まる赤。





「……僕らより遅れて到着したのに、一発でこの大型魔獣倒しちゃうんだもん」






ヴィスと別れてすぐにエベジア地区に向かったリズが見た光景は、魔獣が人々を襲い、それを部下達が身を挺して守っているところだった。

リズの隊と同時に招集されたはずのシアン部隊の姿は見えない。

そうであれば、ここで一番上なのは自分だ。



即時にそう判断し、ほぼ全ての部下達に住民の避難、残りの数名に自らの戦闘の補助を指示。



魔獣の‘’隙‘’をつき、一撃で終わらせた。




「大型って言ってもB型よ?まぁ君達からしたら強いかもしれないけど、私からしたら雑魚レベルだわ」


「はいはい、リズ隊長には余裕なんですね。わかったんで早く休んでくださいってば!」


「あ、まだそれ忘れてなかったのね」


「魔獣の血を浴びたでしょう?今は大丈夫でも後々何かあるかもしれません」



その言葉に、リズの目の色が変わった。


手を止めて、ヨキに向き直る。




「……私さ、別に自分がどうなろうと良いのよね」


「え?」


「誰かを守って死ぬなら別に後悔はないの。だって……」



「あら〜〜、まぁまぁ、もう魔獣さんは木っ端微塵でしたのね。これはわたくしの出る幕はなかったですわね」



会話を遮る高い声、その主にすぐさま気付いたリズは顔を顰める。


チラリとそちらを見てみると、瓦礫だらけの殺風景な風景には不釣り合いな、煌びやかなドレスを身につけた女が男達を引き連れて歩いてきているところだった。

その女はリズの傍で立ち止まり、これまた煌びやかな扇を口元に当てながら、しゃがみ込んで作業をしていたリズを上から見下ろす。





「これはこれは遅い到着で。シアン部隊隊長のスピロ様」



リズは立ち上がり、声のした方に体を向けて一応礼をとる。


「あら、遅くはないと思うのだけど。あなた達が早いだけであって」


「そうだ!いつだってスピロ様は間違っていない!」


後ろに引き連れたピンク色を纏う男達が一斉にスピロの言葉に同意する。




呆気に取られているヨキはただただ立ち尽くしている。




(あー、本当に面倒くさい!)


リズは心の声を必死に抑えながらも笑顔を崩さない。


(いつ見ても目がチカチカするのよね)



青色の髪をした彼女と、周りの男達が身につけている物は全てピンク色。

あまりの目のチカチカさに、リズはいつもスピロから頑張ってピントを合わせないようにしながら話すようにしている。



まぁそれはさておき、なんと返そうかとリズが頭を悩ませているところに先に口を開いたのはスピロの方だった。


「ところであなた……」


必死に考えていたので、助かった!と自然に先程より明るい笑顔が溢れ出る。


「はい!何でしょうか!」


「え、えぇ……」


リズの無駄に元気な声に若干引き気味なスピロ。

戸惑った声が出てしまうも、すぐにいつもの落ち着きを取り戻した。



「魔獣の血を浴びたと聞きましてよ。少量だからと油断すると体には何かしらの影響が出るかもしれませんの。早く救護班に診せて安静になさい」



「あ、ありがとうございます……」


きょとんとした顔で答えるリズ。


スピロは基本意地が悪いタイプだが、根は優しいお姉さん気質なことをリズはよく知っている。


だが滅多にそんな様子を出すことはないのでとても驚いた。




「コホン、あなたの親友のようにならないために言ってあげたことですわよ」



その言葉にリズの顔から笑顔が剥がれ落ちる。



基本意地悪く、根はお姉さん気質だが若干の天然が入り、一言は必ず余計なスピロだ。



最後はリズを休ませるために言ったつもりだろう。

ふふん、と機嫌よく男達を引き連れて去っていく。





「リズ隊長……」



2人瓦礫の上に残されたリズとヨキ。



俯いて動かないリズにヨキは寄り添おうとするも、


「さ!あとちょっとだし終わらせちゃお!」


伸ばした手が届く寸前にリズはいつもの明るい笑顔に戻って離れていってしまった。





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