宴の後始末
正直言ってあまりにも展開が速い。たっぷりと酒を飲ませ睡眠薬を混入させたのだから、程なく意識が無くなり、目覚めた時には静の「死体」とご対面という筋書きだったのだ。だから一旦引き上げて手勢を連れて乗り込む。もし逃げたのなら追いかければ良いと思っていた。しかしあにはからんや、既に「死体」になっていたとは。
だが、事ここに至っては計画を中止する気は無い。修正すれば済む話だ。
「状況はどうなの?報告させて」
「あ、はい」
巴は電波を飛ばす。
「キモいおっさん、私が死んでいることに気づいたら泡を食って逃げました。腰抜かしてましたよ。面白かったです、やて。どないします?もう、ほんまに勝手なことを」
「逃げたか。収拾狼狽しているところに乗り込みたかったけれど仕方が無い。行方を追うわよ」
「はい!」
この世界の防犯カメラの性能は頗るよいのだ。どこへ逃走したかははっきり分かる。駅の公衆電話から第2中隊に連絡する。
「大隊長の六塚少佐相当官よ。防犯カメラの画像を精査しなさい。場所はキタのZNHホテル大阪近辺。標的は帝国放送協会大阪放送局次長・島田金助。そう、第3連隊連隊長補佐の。第1中隊・第3小隊長の鎌倉静曹長に損傷を加え、機能停止状態にした後逃走中。行方を追いなさい」
当然第1中隊にも連絡しなければならないので、内線を回すようにさせた。
「お電話代わりました、鈴木です。どうされましたか大隊長。珍しいですね、外からご連絡を頂くなんて。第一今日は土曜でしょう?」
「諸般の事情により大阪放送局次長の島田中佐を追っています。行方が判明したら逮捕する予定ですので、尋問する体制を整えて頂けますか?」
「ほう。諸般の事情とは?概略だけでも願えますか?」
隠し立てすることもあるまい。相手が鈴木ならばこういえば良い。
「新型を利用した工作活動の標的に島田中佐を選んだということです。私も参加してどのように標的を篭絡するかを観察しました。その過程において、島田中佐が新型に損傷を与えて逃走しました。よって身柄を拘束する必要があると判断しました」
例え相手が鈴木であろうがなかろうが嘘は禁物だ。俺はここまで「本当の事」しか言っていないはずだ。鈴木は俺の命令を受領。後は手勢として、犬萩と犬樫を呼び寄せよう。敵の喉元に食いつきたいと言っていたからな。喜んで馳せ参じるだろう。
さて、ここまでで手抜かりはないか?俺はそれを考えながらホテルへ引き返し、部下たちの連絡を待つことにした。




