制服プレイも今宵限りか
巴が静に電波通信で話しかけると、静は官舎へ来るのを散々渋ったらしい。
「あのアホ、酢のコンニャクの言うてましたけど、じゃあ己は少佐殿に奉仕するのが嫌なんやな、島田のチビ助にビビってるんやろ?そう言うたったら、そんなわけあらへんちゃんとやりますって言うてました」
「そうなんだ」
「そうなんです」
憤慨してやって来た静を含め三者による処刑計画が練られようとしていた。
「とにかくあなたが殺害されたことにすれば良いのよ。やばいことをしたとびびらせれば良い。逃げるか助けを求めるか?その2択を突きつけてやれば良いのよ。分かる?」
俺の問いかけに静は、
「分かりません」
むすっとした顔で答える。
「何で分からんのやアホ。連れ込まれたらダッチワイフみたいに寝っ転がったらええねん。それが分からんのか、アホ」
「言ってくれますねえ簡単に。どうするんですか?具体的な手順は?」
巴にアホと言われたのが腹に据えかねるらしい。半ギレに近い静に、
「お互いに酩酊状態になっていれば、さほど難しい作業ではないはずよ?」
と言ってやったら、
「ですよねえ。どっかのお馬鹿さんはそんなん思いつかへんみたいやけど!」
巴はここぞとばかりに煽る。
「分かりましたよ、もう!私がお酒を飲んでしなだれかかれば良いんでしょ!」
「そうね。島田の酒には睡眠薬を必ず混入させるのよ?お酒で出来上がるまではメイド服でおさわりをさせてあげなさい。存分にね。それで事前に『制服プレイ』を持ち掛けるのよ。これは必ずね」
「え、何でですか?キモいんですけど?え?高女の制服を着てするんですか?」
「そうよ。普段していることじゃない?」
と言ってやったら、理解できないものを見たと言わんばかりの顔になった。女性がエロ親父みたいなことを言い出したらそうもなるか。
「ええ・・・私達はメイド服だし、やらずぶったくりですから・・・」
「当然それで良いわよ」
静は、ほっとする。
「ああいう手合いはモテる訳ないでしょう?学生時代の憧れのあの子とのセックスを夢見ていたはずよ。だから、それを提供してやれば良い。それを持ち掛けて、部屋に入ったらその後は普段通りのムカつく振る舞いをしなさい。」
そう言ってやったら、
「うわあ、ドン引きですよ、少佐。滅茶苦茶悪女ですね」
などと言ってきやがった。
「何が悪女やねん!鋭い洞察力持ってはるだけやろがい!男の願望はなあ、エロ雑誌の2・3冊読んだら分かるわい、アホ!」
睨み合いが始まったので、2人の頬をつねってやった。
「じゃあ、明日決行する。定時後にホテルに呼び出す。良いわね?」
巴の、
「了解であります!」
という敬礼と、静の、
「了解!
という敬礼の声が見事に重なり、2人の睨み合いが又しても始まってしまった。頭に来たので2人の尻をビンタしてやった。
それからの事は驚くほど簡単だった。とにかく下手に出たのだ。ひたすらおべっかを使い、見え透いた嘘を並べ立てて奴を誘い出すことに成功した。静は「ルアー」としての魅力に溢れているという事だろう。余りにも簡単に吊り上げられたので拍子抜けする。
ホテルのレストランに誘い込み、たらふく食わせて酒を飲ませる。それも簡単極まりない作業だった。
「それにしてもお前ら殊勝な心掛けやな。ええか、これが当たり前なんやで?女いうもんはな、男に奉仕してなんぼやねん。お高く留まって一発やらさん。そんなん許されへんで」
大股を開きながら、おしぼりをテーブルに勢いよく叩きつけ、これで何度目だろう?静の胸を触った後、しっかりと揉みしだいている。静の表情は変わっていないが、俺と電波を使って通信が出来たとしたら散々文句を言われたことだろう。
「女は三歩下がって黙って男を立てるのが当然やねん。ええか、男を立てるんやで?」
島田はそう言って静の左手を自分の股間に持って行く。
「なっ?こうやって男を立てるんやで?」
そしてゲラゲラと大声で笑うのだ。
「なあ、俺の武勇伝聞きたいやろ?なあ、聞きたいやろ?そこまで言うんやったら言うて聞かせてやらんといかんやろ。うん、そんなんいかんやろ。なあ、いかんやろ?」
そこまで言ったら盛大にゲップをして、また笑う。
それにしても、同席している俺と巴には目もくれずメイド服姿の静をしつこく標的にする。この時点で処刑することの正当性が担保された。そう言っても過言ではあるまい。その標的は静の尻を撫でまわしながら言う。
「なあ、自分は高女の学生言う事になってるんやろ?」
言い終わると静の胸を撫でる。
「ええ、そうですよ中佐殿」
静がにっこりと微笑むと島田は下卑た笑い声を響かせる。
「制服持って来てんのやろ?」
「勿論ですよ。やだなあ~そんな重大な事、忘れるはずが無いじゃないですか~」
「そうやろ、そうやろ!よしっ!たっぷり可愛がってやる!制服プレイじゃっ!2・3発やってやるでえ!覚悟しとけよ?俺のビッグマグナムでひいひい言わせたるでえ!銀座の姉ちゃんを撃沈してきた大砲やからなあ、腰抜かすなよ?」
静の手を取り、自分の股間に持ってゆく。
「中佐、部屋を取っていますからそっちでたっぷりと可愛がってください。こんな所でご奉仕させて頂くのは恥ずかしいです」
静は耳元で囁く。島田はそれを真に受けたのだろう。ひと際下卑た表情を浮かべる。真っ赤に染まった顔になっていたから不気味極まりない。島田は、ふらふらと立ち上がると、思いきりよろける。
「大丈夫ですか、中佐!」
静は手を伸ばし抱き締めて島田の体を直立させる。
「ふふ。中佐の男を立てて差し上げました。この続きは上のお部屋でたっぷりと楽しみましょうね」
ぐへへと島田の下卑た笑い声。静の全身を舐めるような目で見る。
「なあ、自分、乳はDカップ言うてたなあ。そうか、そうか。Dカップジャパンやな」
また笑う。そして急に真顔になる。
「せやけど、ほんまにDカップなんか。うん?そんなにある様には見えへんぞ?」
平然と静の乳房を鷲掴みする。
「やだなあ。お部屋で確認しましょうね、先輩。ねえ、先輩で良いんですよね?制服プレイをするんですから」
「おう、そうやで。よっしゃよっしゃ。今晩だけは特別に『先輩』と呼ぶことを許可してやる」
「わあ、嬉しい。有難う、先輩!」
静もあざといものだ。心底嫌であろうに、両拳を握り締めて顎の下に持って行き、少しかがんで上目遣いで島田の目を見つめて笑みを浮かべる。そして不意に抱き着きキスをする。しかも舌を入れて!見てはいけない卑猥なものを見せつけられた気分だ。長いキスが終わったら静は、とろけた眼差しで島田を見つめるのだった。
それを見ながら作戦の成功を確信していたら、島田は不意にこちらを振り向く。
「おう、お前らには用は無いねん。さっさと帰れや。これからこいつと楽しむんじゃ」
完璧に酔っている。島田は静の臀部に腰を当てて前後左右に動かしながら、右手を乳房、左手を股間に持って行ってしきりにまさぐる。理性が完全に飛んでいるのは間違いない。それにしてもチビだとは思っていたが、静とさほど背丈が変わらないのが滑稽だ。まあ、どうでも良いことだが。多分これで奴を見るのは最後だろう。
2人を見送ってから官舎へ帰る。ホテルで人目を引くのはまっぴらだ。あのチビ助の御命令通り退散する。
「股間のデリンジャーをやたらと触らせたがるのですけど、この人、どっからこんな自信が湧いて出て来るんですかねえ。ですって」
「デリンジャーか。それを触らせたがるのか」
「はあ、ほんま相手にすんの疲れました。自慢話にエロトーク。いつブチ切れるか分からへん。最低ですわ。酒場の姉ちゃんも、あんなん相手にするの嫌やろなあ」
巴は心底嫌そうだ。
「そうねえ、でもそれも今宵限りよ」
堂島川を渡ればすぐに京阪電車の駅だ。さっさと帰ろう。
しかし、駅の改札に辿り着く前に巴に通信が飛んできた。
「こらっ!もう死んだふりか!早すぎやろ!」
声が出ない。余りにも想定より早い。
「このキモいおっさんの相手したく無いんで、しばかれてよろけた弾みで頭を打ち付けて死んだふりしました。良いですよね?そんなこと言うてますわ。どないします?」
巴が困ったことになったという顔をするので、
「生き返らせるわけにはいかないでしょう?打ち合わせどおり、当分死んだふりしておきなさい。今夜島田金助は、社会的に抹殺されるのよ」
「はいっ!」
巴の声が震えているような気がした。




