嵐の前の静けさ
金曜日の午後が何の波乱もなく順調に経過してゆく。こんな嬉しいことは無い。ちょっとぐらいサボってみても良いだろう。勝手に決めつけ、給湯室へ向かう。先客がいた。丸山少尉相当官と小畑一等兵だった。二人してマグカップを片手に何か話し込んでいる。
「あ、お疲れ様です少佐相当官」
丸山は軽くお辞儀をし、小畑もそれに倣う。
「こんなところで何をしているの?」
問いかけると2人ともびくっとした。
「すいません、少佐」
小畑は深く頭を下げる。
「ああ、別にとがめだてしている訳じゃないのよ。単に聞いてみただけ」
「なあんだ、良かった」
小畑はほっとした顔を見せ、丸山は軽く笑った。
「少佐は何でここに?
小畑が聞くので、
「コーヒーを飲みに来たの」
と答えてやった。電気ケトルを見ると水が継ぎ足されていないようだ。蛇口に持っていって水栓をひねると丸山が、
「ああ、すいません」
と謝ってきた。
「何を謝る必要が有るの?」
「いえ、水を入れていなかったので」
「こんなこと、どうこういう物じゃあないでしょう?」
電気ケトルのスイッチを入れる。さて、聞いておくべきことを思い出したぞ。
「そんなことより超過勤務手当の件、どうなっているの?私の方でも超過勤務しないで定時で帰るよう見回っているけれど、実際どう?予算オーバーしそう?」
そう水を向けると、
「はい。皆さん残業が多くて、かなりのペースで超勤手当の消化が進んでいますけど、年度当初は忙しいですからこんなものかなって気はしますけれど」
「そう。こっちでも勤務記録確認するかなあ」
お湯が沸いたのでコーヒーを入れる。その間に2人はお辞儀をして、給湯室を出て行った。




