俺はあんな奴らとは違う
別役による取調は終了したが、何故かそれだけでは終わらなかった。研究所の方からお尋ねがあったのだ。俺の大隊付きの技官である長谷川技術大尉が、内線電話で質問してきた。
「大まかなことは別役所長から伺いましたが、六塚少佐相当官からもお話を伺いたいと思いまして。こちらとしては、特に上の人達が第3連隊の仕出かしたことに憤っていまして、事実関係を把握した上で何らかの対応を取るべきではないかと。そういう事になっています。そのう、何といいますか」
長谷川はそこまで言って失笑した。
「別役所長は下ネタと言いますか、下半身にまつわることを平気でそのまま言うものですから、少々面喰いました。マルロクをそのう、性欲を処理するために使おうと考えていた。そういう理解で間違いありませんね?」
「ええ」
「そもそも何が原因なんですか?」
「東京方面の情報収集を行って、『お掃除』をしろという命令が発端なのですが、それは本省が第3連隊へ事務連絡として発出されたものなのです。それが何故か大阪放送局の統括管理部の事務連絡にくっついてこちらに回ってきたのですね。つまりこちらに任務を押し付けようとしていたわけでして。当然拒否したのですが、強硬にこちらがやらなければならないと言い張るので、口論になってしまいました。挙句の果てには、マルロクが任務を遂行する能力が足りないからそんなことを言って拒否するのだと決めつけて話をしてくるのです。それでマルロクを『テスト』してやるからこちらに寄越せと、こういう具合だったのです。思い出すだけで胸糞悪い」
長谷川は苦笑していた。笑わずにはいられなかったのかも知れない。
「『テスト』ですか。なるほど別役所長の言う通りですね。『能力』を自分たちが試してやると。こう称してマルロクを寄越せと言って来たと言うわけですか。なるほど良く分かりました。それにしても困った人達ですね」
「ええ、全く頭が痛いです。運用試験中の試作機を『テスト』してやるだなんて、私物化も甚だしいです」
俺ははっきり言って俺はマルロクことGR06・鎌倉静が嫌いだ。少なくとも苦手だ。だがこんな形で「テスト」されるのを黙って見ているほど薄情ではない。認めてたまるかこんなこと。
「向こうの困った人達の処遇は、うちのお偉いさんと本省を交えて決定されるようです。またお話を伺うことがあるかもしれませんが、六塚少佐相当官は通常任務を継続して頂くということでお願い致します」
「了解です」
俺が「ご立派なモノ」を見せつけられたことは、話がややこしくなってもいけないので伏せておいた。思い出すのも不愉快だ。どんな処分が下るのかは知らないし関係ないが、こんなことは勘弁だ。
それにつけても、ごく一部の者だろうが偉そうな肩書を名乗ってろくでもないことをしでかす奴というのは、どうして湧いてくるのだろうか?与えられた権限を、自分の能力故に与えられた特権と勘違いしているのだろう。そんな陳腐な分析しかできない無位無官の木っ端役人だった俺。その頃の事は思い出したくない部分が多々ある。しかしそれは忘れてはいけないと思う。俺もそんな俗物になってしまわないように。




