月曜日を憂鬱にさせる殴り込み
雨降る日曜日だけが憂鬱なものではない。月曜日の朝の方がよっぽどだ。平成27年5月25日はそんな忌々しい月曜日になってしまった。目覚めが悪いのは今に始まったことでは無いし、月曜日だから瞼が重い訳では無い。そろそろ何か動きが有ってもおかしくないと思っていたら、そんな動きが有った。そういう事なのだ。
ようやく仕事モードになったかなと思った朝の10時頃、事件はド派手におっぱじまった。別役中佐から電話が入ったのだ。
「六塚!おまん、何しちゅうが!早う1階の受付のところに来んかえ!えらいことになっちゅうがやけんど、おまんが原因ながやき何とかせんかえ!」
「すいません、お話が見えてこないのですが、どういう状況ですか?」
「寝ぼけちゅうがか!おまんを出せって押し問答になっちゅうが!何とかしちょけ!」
電話は唐突に切れた。仕方が無いので巴を伴い1階の受付に向かうと、とんでもないことになっていた。
1階のエレベーターホールから、警備用に配置されているメイドロボットに対して巴が電波通信で状況を聞いてみると、発端は放送協会から島田が手勢を何名か引き連れて、俺に対して謝罪を要求しにきたことのようだ。当然アポイントメントなど取っていないから、メイドロボット達と押し問答になっているところに出撃しようとする吉岡小隊と鉢合わせし、さらなる混乱が生じたようだ。そこまでくると流石に研究所の管理部門が動き、別役中佐からの電話となった。そういう顛末だった。
「どないします?出て行ったらますます揉めそうですけど?」
「そうね・・・」
さてどうしたものか?揉め事は嫌いだし、突然起こった出来事への対処ってのは苦手極まりない。だがこの事態をどうにか収拾しないと。意を決して罵り合っている渦中へ飛び込むことにした。
「すいません。これどういう状況ですか?」
わざとらしく言ってみる。すると早速島田から反応が有った。
「何を抜かしとるんじゃ、ボケ!ぶっ殺すぞてめえ!」
「お前こそ何やねん!よその部隊へ横槍入れるな!おい、しゃくれ顎!聞いてんのか!こらっ!」
吉岡が噛みつく。
「何じゃこらっ!クソガキは黙っとれや!」
島田が吉岡に殴りかかる。
「じゃかましいわ!クソおやじ!嫁に相手にされてへんから少佐に粘着してんねやろ、スケベ爺!」
吉岡も負けずに大声で言い返す。
修羅場?なのか。仕方が無い。まずは話をややこしくしている要因を排除だ。
「吉岡さん。あなたはこのまま任務へ向かって下さい」
「いえ、でもこいつに一発ガツンとかまさへんと」
などと言うので、
「何を抜かしとるんじゃクソガキ!おどれは中尉風情やんけ!この俺様を誰やと思うとるんじゃ、ボケッ!」
島田がヒートアップする。
「あなたが居ると話がややこしくなるから早く出て行って」
「でも・・・」
「早く!」
吉岡は部下を連れて渋々出て行った。
「このくそババア!勝手な事すんな!なんでこの俺様が中尉風情に偉そうなこと言われたんをなあ、黙っとらんといかんのじゃ!」
島田は殴りかかってくる。見事に当たってしまい、尻もちをついてしまった。
「立て、こらっ!俺様の怒りはこんなもんちゃうで!とことんいわしたるで!覚悟せえや!」
いきり立つ島田。俺は巴の方を向いて確認した。
「今の場面、記録出来ているわよね?」
「はあ、もちろんです」
巴は島田に目線を向ける。
「ああっ!何じゃこらっ!何こっち見とるんじゃ、おどれっ!ぶち殺すぞ!」
巴はこっちを向いた。
「少佐殿に暴力をふるったところはかっちり記録してますから、本省に報告しましょう。うちのカメラで記録してますから、すぐに憲兵隊が調査に乗り込んでくることになりますよ」
憲兵隊という単語に島田は反応したようだ。
「な、何言うとんねん!憲兵隊は関係ないやろ!関係ないもん巻き込むなや!第一、記録したってどういうことじゃ!寝ぼけんなや!」
次の瞬間島田のスマホが鳴り響く。島田はびくっとした。
「今、メールに動画を添付して送りました。確認して下さい、中佐殿」
恐る恐るスマホを取り出す島田。スマホが操作されると、島田のけたたましい怒鳴り声が聞こえてきた。
「な、なんじゃこりゃ!」
俺を殴りつける場面もきっちり記録されている、その様が音声からでも簡単に分かった。
「どないしはります?」
巴の語り掛けに島田はまだ悪態をつく。
「やかましいわ!こ、こんなん捏造や!」
きょろきょろと周囲を伺ったと思いきや、
「俺様はおどれなんかと違うて忙しいねん!やらなあかん事思い出したよって、今日はこれで勘弁したる!せやけど、覚えとれよくそババア!」
捨て台詞を吐いて帰って行った。




