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島田はヤクザで有名人

 射撃訓練というのは、飽くまでもストレス解消にちょっとやってみる、それ以上の意味は無い。後で時間があればやってみたいという、そんな程度のものだ。確かにそうなのだが、横槍が入るのはうざいことこの上無い。本省のセクハラ相談室と電話しているというのに、第3連隊から六塚を出せという強硬な電話がかかって来ているという。

「どうせ島田とか抜かすチンピラからでしょう?」

木村上等兵は吹き出す。

「正にチンピラですわ、ほんま。どないします?」

「そのままずっと保留にしておけば?」

「ええんですか?」

木村が答えるや否や、

「いけないんだ~、少佐殿は木村と悪だくみしてる~」

西村がいつの間にか扉から半身を覗かせ、こちらを咎める様に言って来た。

「おい、健!何しとん自分?俺の方こそ友達止めるぞ!」

木村も西村を咎める。

「ひえ~」

という声を残して西村は執務室内へ去った。

「良いわよ。あんな輩と話す意味有る?」

「大隊長はマジ正直ですね。感心しますわ。あんなんでも一応お偉いさんで、多分大隊長より上の人でしょ?もっかい電話かかってきたら他の誰かが電話取るでしょ?そしたら、又同じやり取りせなあかんし、電話取った人が気の毒ですわ」

「そうか。じゃあ、今六塚は本省のセクハラ相談室の担当者と話していますと。顛末を全部話していて、島田なる人物から今回の件を見なかったことにしろと、隠蔽工作に加担するよう脅されたと証言していますと言いなさい」

「了解」

受話器に手を当てるなどという真似をしていなかったから、向こう側にも筒抜けだったらしい。

「お待たせしました」

「島田か。あのヤクザ、今は大阪で暴れているのですね。あなたも気の毒に。あれはしつこいですよ。この件は早速人事部内で情報の共有をします。適切な処分が行えるようにしますからね。ああ、それとカウンセラーを手配しますか?どうしましょう?」

「明日軍医殿の診察を受けることになっています」

「そう。必要があったら言って下さい。すぐ手配しますから。今回のことは気の毒に。我々としては出来る限りのことをしますから、いつでも言って下さいね」

「お気遣いありがとうございます。またお話しさせていただくことがありましたら、その節はよろしくお願い致します」

 それで本省とのやりとりは一旦終了。それにしても島田の奴、本省内でも「有名人」なんだな。なんともいやはや。まだしばらく面倒なやり取りは続きそうだ。

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