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愚物はいきなりパンツを脱ぐ

 帝国放送協会とは、国民の耳目となり様々なニュースや教養番組を放送する、半官半民の特殊法人だ。国営放送と勘違いしている者が多数いるが、国営放送は内務省管轄の放送局で、ニュースと言えば官報についての放送のみで、後は国会中継しか放送しない。そんな大きな違いはあるが放送局であることに違いは無い。だから当然衛兵なんてものは存在しない。そして恐らくだが、検非違使庁の文官用軍服を着用しているので、誰何されることは無かった。

 それは良いのだが肝心の敵の居場所が分からない。又もしまったと思ったが受付で聞くとあっさりと教えてくれた。なのでそこへ乗り込む。おのれ、見ておれよ。赤穂浪士にでもなった高揚した気分。今から考えると、何故俺はそんなテンションを維持できたのか不思議だ。それだけ怒りが大きかったという事だろう。だがその時は、いざ敵を撃たんと欲してずかずかと庁舎の中を歩いていたのだ。

 そして目標の居る執務室内に入り、

「赤松広氏はどこに?」

と聞いたら奥の部屋を指差すので、突き進む。だがノックを忘れるほどの事はない。そこは冷静だったが中から、

「誰だ!」

などと尊大極まりない返答が有ったのでドアを開けて中に入る。そこには煙草を燻らせながら新聞を読んでいる、でっぷりと太った醜いおっさんの姿が有った。

「何だ貴様!見ない顔だが新入りか?」

一瞬何のことかと思った。

「たまには熟女も良いだろう。よし、まずはしごけ!」

などとほざいて立ち上がり、ズボンとパンツを下ろして両手を腰に当て、ふんぞり返る。見たくないモノがそこにはある。このクソ野郎!俺をデリヘル嬢と勘違いしていやがるな?だから何も遠慮はいらなかった。

「愚物!」

俺は机目がけて穴開けパンチを投げつけた。

「私の可愛い部下を酌婦扱いなど断じて許さん!分かったな!」

右手で指差す。それにしても、自分でも驚くほど大きな声が出た。自分自身の統制が利かなくなっていたのかも知れない。

「二度とふざけたことを要求するな!私の部隊に貴様の指揮権などあるはずが無いだろうが!これ以上私と部下を愚弄するのは許さんぞ!分かったな!」

言いたいことを言ったのなら、こんな不浄なる部屋に居る理由など無い。執務室内から何人か人が入って来たが、

「あんた誰だよ?」

という呼びかけを無視して庁舎の外に出た。思いきり背伸びをする。到底爽快な気分にはなれなかったが、一つ課題が片付いた。そんなささやかな前進を味わうことぐらいは出来た。そしてあの野郎の醜態から、俺への追及はできるはずが無いと、地下鉄の駅に歩きながら思った。さあ、巴が作ってくれたお弁当。今日はどんな感じのやつかな?




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