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タヌキはイヌ科だったっけ?

「ああっ!なんて酷い!ママにいびられて泣き濡れる、可愛そうな私!」

どうせそんなところだろうとは思った。昼過ぎに、メイドに化けるべく出勤する前に静を問い質したら、こんなふざけたことを抜かして誤魔化そうとする。もちろん二神大尉直伝であろう身振り手振り付きだ。こんなところが実に「人間らしい」。

「馬鹿なことを言わないで真剣に答えなさい。鈴木中尉からどんな『指導』を受けたの?その報告と今後どういった点を改善していくか?それをきちんと答えなさい。あなた、自分が評価対象だということ分かっていないの?」

事務的に言い渡してやった。正直言って、静にはムカつくことが多すぎる。あまり良い感情は持っていないし、持つべきでもない。研究所の面々が客観的に評価できるよう、冷静に感情を込めずに運用すべきだ。そう言い聞かせないと、頭をハリセンで叩きたくなる。

「勿論分かっていますよ。鈴木中尉の指導はですね、そのう・・・」

少し間が空く。何をもったいぶっているのか?

「うう・・・辛い、きついものでした・・・。悪夢です。思い出したくありません・・・」

悲劇のヒロインのつもりなのか、身振り手振りをしながら熱演している。そのさまに腹が立つ。

「古田技術少佐にでもお願いすれば、データを閲覧できるでしょうね。あなたの電子頭脳、カメラやセンサーで捉えたものは全部記録されるでしょう?」

「え、ええ、確かにそうなっているかと・・・」

「じゃあ、お話ししなさいね?しらばっくれても無駄よ?」

「い、嫌だなあ・・・しらばっくれるなんて・・・ご説明する前に前置きとして、私の苦しい胸の内を理解して頂きたい、その一心で少し回り道しているだけです。信じて下さい・・・」

泣き真似をして来た。情に訴えて切り抜ける気か?

「それで?どうだったの?」

「はい・・・、中尉殿から、少佐へのご説明を後回しにしていたことの理由の説明を迫られまして、可愛い私の立案した作戦なら、無条件に了承して下さると判断していたと、かように申し上げるとじっと睨まれてしまいました」

ぺろりと舌を出す。何も懲りていないなこれは。

「とてもショックでした。『大隊長殿は、旧型の方を信頼しているように見受けられるぞ』という衝撃的な発言が飛び出しまして、そのせいで後のお話が耳に入りませんでした」

「まだふざけている?」

拳を握り締めて睨みつけると、流石にやばい雰囲気を感じたのだろう。少しだけ態度が変わる。

「私が受けた精神的な衝撃について例えただけじゃないですか~。やだなあ、私の話を聞いて下さいよ~」

「聞いてあげるから真面目に話しなさい」

「はっ!了解であります!」

姿勢を正して敬礼するが、どこまでが本心なのやら。

「『そんな態度では実証実験の中止であるとか、全面的な電子頭脳の書き換え・入れ換えといった対策を取らざるを得ない。ロボットに死という概念が存在するかは私には分からないが、貴様の人格的なものは消滅することは確実だぞ。何なら私が大隊長殿に報告し、大隊長殿から研究所及び本省に上申して頂くこともできるのだぞ』、ときつくお叱りを受けまして。これほどの恐怖を味わったことは無いというほどでした。鈴木中尉は恐ろしい方ですね。眉一つ動かさずに人を処刑できる方ですよ。これは間違いありません」

遠い目をしていた。そんな風に見受けられる。

「今後の作戦行動全般について、どのようにするつもりなのか、詳しく説明しろと言われましてデータ化して提出し、了承を得られました。それらは精査するので後は行動で示せという一言で終わりまして、安堵しました」

「行動で示せ、か。そうね、私もそうしよう。計画することより実績で示す方が重要よね。でもそれはそれとして、鈴木中尉からそれは見せてもらおうかな」

安堵したと言った、そのままのほっとした表情。

「良かった。理解は得られたのですね。私、嬉しいです」

「理解はしたわよ?でもそれは、計画を達成するための行動を取るという前提条件を満たした場合の話。それは理解しているわよね?それと今後の改善案は?」

嫌そうな顔になった。このアマ!まだ状況が分かってないのか?

「まだ私を囮にするつもり?」

「まさか!滅相も無い!囮だなんて!そんな酷い!」

首を左右に振り必死に否定するが、俺を囮にしただろ!

「今回の件はですね、単に私の勇姿を間近で見て頂きたかっただけです!私が一緒にいることで安全は担保されますからね!」

どや顔を決める。自分が言った事を早くも忘れているらしい。何だかどうでも良くなってきた。

「そう・・・。じゃあ鈴木中尉から質問を受けたら『言を左右にしてはぐらかされました』と答えておくわね」

「ええっ!そんな、酷いです!」

驚愕したという表情だった。それ以上何も言えないのがその証だ。

「じゃあ、私の潜入捜査というべきかな?そんなことは今回限りにしてもらうわよ?分かったわね!」

「はい・・・」

「それと今日限りね。『お掃除』対象者の選定は済んでいるでしょう?」

「はい!それはもちろんです!」

しょげかえっていたと思ったら、急に元気になりやがった。ご主人様に悪戯を見つけられて叱られるアホ犬の図、だったくせに。狸ってイヌ科だったっけ?


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