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情報収集業務委託事業者は励ます

 着替えている最中に、女物を着用することに何の抵抗感もないということが、ふと頭をよぎった。順応早過ぎか?不思議なことだ。念入りに化粧をするわけでは無いから、男だった頃と大して変わっていないはずだ。言葉遣いを変えているだけで、意識は変わっていないのに。食事をしているこっちを見ている巴を、本当に美人だなって思うからなあ。しかも厚かましくも頭の中では、嫁さん扱いまでしているし。本当、ただの男性、女性として出会えたら良かったな。叶わぬ夢だけれど。

 だが出勤してからもそんな気持ちを持っている訳にもいかない。例えばらしたところで誰も信じないだろうけど、そんなことは噯にも出さない。俺はこれからは女性として生きるんだ。おばちゃんになり、おばあさんになるんだ。人生の残り半分を巴と共に生きていくんだ。改めて決意して庁舎の受付に居るメイドロボットと挨拶を交わし、巴達を引き連れてエレベーターホールに向かうと、大勢の職員の中に居る委託事業者の社員である柴田と出くわした。

「大隊長さん、おはよう。何か昨日難儀したんやって?」

「おはようございます。そうなんですよ。仕事の話をしていたら、いきなり好きだなんて言われまして」」

「え、何やのそれ!」

柴田は手で口を押え、

「そんなん一方的に言われたかて、どうしたらええねん?」

と付け加えてきた。

「そうでしょう?どうして良いか分からず固まってしまいましたし、断ったら泣き出したのですよ、その人。頭が痛いです」

「うわあ・・・」

柴田の顔が少し歪む。

「最低やん、その人」

エレベーターに乗り込みながらそう言った。そこで気づいた。

「柴田さん。どうして知っているんですか?」

「え?昨日第2中隊の人ら、えらい騒いではったで。何事やろか思たら、大隊長さんがえらいことになったっはるって聞いたんやわ」

「下へ参ります」

エレベーターは下降し始めた。

「それにしても難儀やね。振ったら目の前で泣かれるって。そんなん、男ちゃうわ。ねえ?」

「どうでしょう?そこは何とも」

「そうなんや。せやけど、落ち込んだりしてたらあかんで?気持ち切り替えて前向きに。ね?」

「そうですね。有難うございます」

そんなやり取りをしている内に地下1階。俺は柴田に礼を言ってエレベーターを降りた。軽やかな気持ちになった訳じゃない。それでも俯き加減な姿勢が、ほんの少しだけ前向きになった。そんな気がした。

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