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新たなるセクハラの予感

 巴と吉岡が出て行った後、俺はどう対応して良いやら分からず固まってしまった。仕事中に部下に好きだと言われた。一目惚れだって。独断で行動したのはそんな俺のため。頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。初めて好きだと言われた相手が男・・・。耐えられない・・・。涙が出そうだった。全く泣きたいのはこっちだよ。

 だが、泣いている場合じゃないので第1中隊司令部に連絡する。

「私です。六塚です。二神大尉はいらっしゃる?」

内線電話に出てきたのは福留だった。

「今、便所に行っております。どんなご用件でありますか?うん?あ、今戻って来たようですね。お電話代わります」

直ぐに二神が電話に出た。

「何ですかのう?もしや、吉岡君の件ですか?」

「ええ、そのとおりです。何から説明すれば良いのやら・・・、そのう、あまりにもショックだったので・・・」

俺としては頭を抱える事態だ。

「え、そりゃまた大事ですな。そちらへ行った方がよろしいか?」

二神の声は焦りの色を帯びていたかも知れない。

「いえ、傍から見れば大したことじゃないのかも知れません。吉岡中尉から好きだと言われたのですよ。今般の一連の行動は数字を上げて、私の本省での覚えを目出度くしたいからだと。何と言うかどうしたものかと」

少し声が震えた。そのせいか、

「何と!」

二神は驚愕したのか、その後の言葉が直ぐには出て来なかった。

「いやはや、何とも・・・。わしも何と言うてええやら・・・、よい、福留君。今、吉岡君はどこにおるんぞ?」

福留は分からないと言った後、給湯室で茶でもすすっていないかと大声で確認する。

「いないようですね。何か有ったのでありますか?」

二神が顛末を説明すると、福留は絶句したようだ。

「あのう、吉岡中尉は木曾川が医務室へ連れて行きました。少し落ち着いて欲しかったので。私が両方とも断ると、癇癪を起して泣き出しましたから」

電話の向こうからはため息が聞こえた。そして続いて、

「よい、福留君。事情聴取してきてくれや。頼まいの」

二神は福留に命令する。

「大丈夫ですかな、もし。まずはそれじゃが、気分が悪いじゃとかそんなんはありゃせんですか?医務室へあなたも行かんと」

「いえ、今のところは何と言いますか、動きが取れないというか・・・、今目の前のことが現実とは思えません。少なくとも今は仕事に手を付けられそうもありません。目標設定しないといけないのに」

「何を言うておいでか!そんなもんは脇に置いておきなさい。最初からわしがやっつけても良かったんですよ、そんなもん。状況が変わったんじゃ、わしがやります。あなたは暫く医務室におりなさい。軍医殿の診察を受けた方が良かろう。わしが連絡するけん、医務室へおいでなさい」

二神の声はだんだんと柔らかくなっていった。しかし、あのセクハラ軍医の所へか・・・。流石にあの爺さんも新たなセクハラ、パンツの色を教えろなどとは言ってこないだろうが、なんだか心配だ。

 それにしても女の子として男に絡まれるのと、男として女の子に相手にされないのと、どちらがつらいだろう?余計なことは考えるべきではないけれど、ふとそんなことが頭をよぎった。


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