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何と悲しき身の定め

 大隊長室へ持ち込まれる様々な事を巴が振り分けてくれていたのは、本当に有難かった。しかしそうは言っても、その間をすり抜けて案件を持ち込むものもいる。管理職はこんなにも忙殺されるものだ。それが骨身にしみた。そんな最中に割と大きな声が聞こえて来る。

「ここを通さぬとは、これ如何に!ああっ!大隊長にお目通りかなわぬ我が身かな!何と悲しき身の定め!」

二神だ。何故そんな芝居が掛かった口上を述べるのか?

「さりとて、さりとて、君命に背くこと能わざれば疾く疾く下がり候え」

巴にまで伝染している。

「二神大尉。示し合わせて小芝居ですか?」

大隊長室の扉を開けて顔をのぞかせてから尋ねると、

「これはしたり。小芝居とはこれ如何。我が身の不幸を嘆き悲しんでおったところ」

と返答が返って来た。

「要件が無いのでしたら、第1中隊の執務室へお帰り下さい」

扉を閉めたら、

「天岩戸の故事にちなんで御前で芝居をしておっただけでございます。どうぞここを開けて下され。一大事にございますれば」

などと懇願してきた。

「何ですか。一大事とは?」

再び扉を開けると、二神は扉の隙間に足を差し込んできた。

「第3連隊麾下の部隊からスパイ狩りに人手を貸せとの要求が有りましてな。それで協議に参った次第」

スパイ狩り・・・。どうせそれは口実で目標は他のものだろうがと思わざるを得なかったが、とにかく一大事には違いない。俺は二神を招き入れ、巴にお茶を持ってくるよう命令した。長い話になりそうだ。

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