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熊はぬいぐるみか?

 休みの日であろうとそうでなかろうと、雨の降る日は格別に憂鬱だ。2日も雨に降られて端午の節句。そんな日は出歩く気もしない。だからろくでもない夢にうなされる。日曜日に見た夢の内容は忘れた。だが、昨夜の夢の内容は良く覚えている。射撃練習場に居る俺は、教官を務める巴が言ったことが何故か飲み込めない。的へ向かって機関拳銃を構えると、それは熊へと変化し咆哮を上げてこちらへ突進してくる。俺はセレクターレバーを「全自動」へと切り替え、熊へと目がけて撃つ。だが、熊が拳銃弾ごときで仕留められる訳が無い。怒り狂った熊の猛烈な突進で俺は弾き飛ばされ、そのまま気絶してしまう。目が覚めたのは熊が俺を食べているからだ。熊は俺を容赦なくむさぼり食う。それを俺は黙って受け入れるしかない。その痛み、手足を食いちぎられているという痛みが伝わってくる。

「あ~ダメっすね。はい、もう一度!」

巴はまるで映画監督の様にメガホンからそう声を張り上げ、隣にいる熊に怒鳴る。

「自分、もっと可愛げのあるとこ見せんかい!熊いうのはなあ、大きなぬいぐるみ!怖がらせてどうすんねん!」

「あ、はい。そうっすね。善処します。こんな感じっすか?」

熊はたちまち巨大なぬいぐるみに変化する。

「俺が全力で突進しないと射撃訓練にならないじゃないっすか?全力でいきます。大丈夫っしょ?」

熊の両目は紅く怪しく光る。俺の手の内には50口径の機関銃。睨み合いになると、静がちょっかいをかけてきた。

「え~、信じられない!可愛い熊さん相手に50口径持ち出すとか!ありえないっしょ!」

へらへら笑いながらそんな無責任なことをほざいている。それに影響されたか兵達も口々に熊さんが可哀そうだなどと、太平楽なことを述べる始末。

 だが俺はそんな声に構わず、12.7ミリ弾を有りっ丈熊にぶち込んでやった。そして、口々に涙ながらに俺を非難する兵達目がけて銃口を向ける。しかし弾倉の交換方法が分からない。夢はその辺で覚めた。本当にぶっ放してやりたかった。その何とも言えない不快感。不愉快極まりない。

 だから今日は1日中パソコンに向かい合う。端午の節句は独身で子供などいなかった俺には縁のないイベントだ。そして今後も。男と結婚して子供を産むなんてまっぴらだ。冗談じゃない。それからふと気づく。ある意味男なんて熊みたいなものじゃないか。鋭い爪で皮膚を切り裂くことは無い。だが、優しい顔をして近づき豹変するのは狼ではなく熊だ。狼は可愛らしいぬいぐるみになったりはしない。ティディベアは突然ヒグマに変身する。俺は男という存在、その恐怖に怯える必要は無いが(今の俺から見ると大抵の男はチビだ)女の子はそれを感じているのかも知れないし、男など自分の若さと美貌で手玉に取れると感じているのかも知れない。

 そんな答えの出ない命題についてぼんやりと考えながら、楽市証券とやらに何故か開設されている「六塚冬実」名義の口座を片っ端から見て回る。良さげな銘柄は無いか?多額の含み損を抱えている銘柄と、それを打ち消すほどの含み益を出している銘柄と。それを見ながら降りしきる雨の中、ため息をつくのだ。

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