休日出勤は終わらない
そう、まだ何も終わっていない。事態の収拾及び今後の対策。考えるのも面倒だがやらなければならない。取りあえず二神の取調終了待ち。
「あのう、それで今後どうなるのでしょうか?私共としては報告の必要も有りますし・・・」
佐藤が言い出しにくそうにおずおずと述べてきた。
「多分ジロさん・・・二神大尉が上手く取り計らってくれますよ。首輪付けて二重スパイにでも仕立て上げるつもりでしょう」
川本がニヤリと笑いながら言うと佐藤は驚く。
「え、そんなことが出来ます?」
「きっと出来ますよ。ジロさんはこの道30年のベテランですよ?」
川本は我がことの様に誇らしげだ。しかし30年!二神が叩き上げのベテラン(詳しい経歴は知らないが)だということは疑う余地は無いが、それにしても桁違いの長さだ。彼の年齢を考えると、高校に行かずに奉職したのだろう。だから大抵の事は「処理」できるに違いない。
「そうして頂けるとですね、弊社への処分はどのようなものになるでしょうか?」
佐藤はこわばった表情のまま川本に尋ねる。
「少佐。僕の見立てでは結局未遂に終わったわけですから、帝国情報管理システムさんとしては懲戒解雇処分にしてもらえれば、それでいいですよね?うちとしてはどうでしょうね?別役中佐があのまま引き下がってくれて、何事も無かったと。そういう取り扱いで納得してくれますかねえ?」
「その線で行けるかどうか?二神さんに聞いてみましょうか?」
内線電話で二神を呼びつける。
「お疲れ様です。どうですか?素直に供述に応じそうですか?」
「ええ、素直に喋りはじめました。後は高橋君に任せてもいけそうです。そちらに戻りましょうか?」
「お願いします」
こちらに戻って来た二神は、自信に満ち溢れた表情で川本の見立てを肯定した。
「後で確認してみますけどが、多分後輩はガチャガチャ言うてきやせんでしょう。あの若造はわしが首輪付けて二重スパイにしたと。そう報告してやったらそれで収まるじゃろう。委託業者さんの処分についてもああじゃこうじゃ言わんと思うがのう。どうしましょうぞ?」
二神は言い終わると俺を見た。
「ごめんなさい。委託契約書ですとか関連書類にはまだ目を通していないものですから・・・。ただ、作業場所以外の所に立ち入ったら処分でしょう?未遂だった場合は処分対象にはなっていなかったはずですが?でも、隠蔽したって言われませんかね?」
俺の言葉は何だか独り言のようになった。手を叩く。
「分かりました。取調が全て終わってから本省に報告しましょう。多分ですけど、詰まらないことをいちいち報告するなって、怒られるでしょうね」
俺が皮肉っぽく言ってやったら二神は、
「ロボットのお嬢さんが頬をはたかれて腕を掴まれたくらいで報告入れたらそうなるでしょうな」
と言って笑った。すると佐藤は、
「そうすると弊社への処分は無いと。そう考えても差支えはないでしょうか?」
と聞いてきた。俺が、
「最終的な結論ではありませんが、おそらくそうなるでしょう。仮に何らかの形で処分を下すとしても、私の名前で口頭或いは文書での注意程度でしょう」
と答えてやったら、ほっとした顔をしている。
「そうだ。ケチをつけられない様に、前もって口頭で注意の上指導したと報告しましょう。そうした方が良いかもしれない。佐藤さん。もし今から御社に報告されるのでしたら、一応暫定的な結論ということでお願い致します」
例の如く丁寧に礼をしたら、佐藤は感極まったのか泣き出した。
「あ、ありがとうござひます、大隊長さあん・・・ううう、良かった良かった・・・」
「そこまで泣かんでもええやろ。また鼻水拭かなあかんやんか。ほら、ティッシュ。はい、しゃんとしい」
柴田は又しても「おかん」みたいに振舞う。その様がコントの様にも見えた。それを横目に見つつ考える。報告書を作成したとして、本省のどこに送付しよう?別役への対応は二神にやってもらう、それで良いのか?へそを曲げられたらどうしよう?あっ!今日、俺は休日なんだよ!休日出勤して対応しなきゃいけない案件を、軽く考えるわけにはいかないぞ?かと言って連休明けに報告するか?考えなきゃいけないこと、潰さないといけない問題点。何という事だろう。俺の休日出勤は終わりそうにない。




