まだ終わってはいないから
凍り付いていた場の空気は徐々に溶けはじめる。唖然としていた別役の部下は俺を睨みつけながら去って行った。川本がその間隙を突いてこちらにやってきた。
「いや、大丈夫なんですか、少佐。別役中佐も研究所の人達も出て行きましたけど」
心配そうに見つめて来る。
「別段どうこう言う事はありませんよ。横槍を入れられる筋合いはないです。そんなことより、今後の事を考えましょう。二神さんが取り調べを全部済ませてからになるでしょうけど」
「ええ、そうでしょうね・・・。しかし何ですね」
川本は笑う。
「肝が据わっているって言うか、普通上司にあんな事言いませんよ。凄いですよ。こんなこと言っちゃいけないんですけど、スカッとしました」
苦笑しながら柴田の方を見る。
「ねえ、そうでしょう?」
「何言うてはるの、川本さん。それはあんまり言うたらあかんやろ?そらあの人の言う事ムカついたよ?うちら反論できひん立場やし。せやけど、まあ」
柴田は呆れながらなのかこちらを見て、
「大隊長さん、ようやるわ。出世に響かへん?」
と言ってきたので、
「私はもう出世コースから外れていますから、どうこう言うことはありませんよ。どうせ2・3年後にはここにはいないはずですから」
柴田は少し驚いたようだ。
「え?そうなんや?」
驚きつつも間を置かずに続けて言ってくれた。
「せやけどそんなことで腐ってたらあかんで?まだまだこれからやんか?なんぼでも挽回できるやろ?」
「そうですね」
彼女の言葉にほんの少しだけでも救われたような気がする。まだ終わってはいない。そこだけは間違いないから。




