岡田中尉は怒りを露わにする
そんなわけだから、技術班が作成した整備計画を丸飲みするよりほかは無かった。とは言っても特に異論があるわけじゃない。巴が暫く定期点検とやらでいなくなるのは寂しい上に心細くて仕方が無いが、止むをえないだろう。
「ほんなら六塚少佐に了承してもろうたって、報告しときます」
「ええ、よろしくお願いします」
互いにお辞儀をし、竹原を送り出した。
連休中にことが終わってくれるならそれで良い。文官は完全週休2日制。当然祝日も休みだ。職場であれやこれやに煩わされずに済む。当然仕事については巴を当てにすることも無い。そこだけはプラス材料だろう。複数のことを同時進行で処理するなど今の俺には荷が重すぎる。
だが定期点検に時間がかかったとしたら、何日かは岡田を当てにせざるを得ない。それがどうにも気が重いのだ。嫌すぎる。だが嫌でたまらないからと言って報告を怠るわけにもいかない。巴と岡田を呼びつけ、話をすることにした。
「竹原技術中尉のお話の内容は、兵たちの、マルゴの整備計画についての説明及びその承認についてでした。一つはそれで、技術班の作成した整備計画を承認することにしました。もう一つは木曾川准尉の定期点検についてでした。日数がかかるという事でしたので、明日からでも作業に取り掛かって頂くと言うことなので、お願いしたところです」
「それを私に聞かせてどうなさるおつもりですか?」
岡田は飽くまでも俺に突っかかるつもりらしい。
「報連相というやつですよ。お互いに情報の共有が行われていないと。ねえ、木曾川准尉?」
巴を非難する意味を込めてからそっちを見た。
「定期点検のことも、日数がかかることも聞いていないわよ?」
「あ、はい。すんません!」
巴は気を付けをしてきてから頭を下げてきた。
「失敗作!何だ貴様!重大なことだろうが!何故報告しない!」
岡田の怒声に巴は一瞬ビクッとした後、
「は、はい。研究所の方から日程の連絡があるやろ思て、報告はそれからでもええんちゃうかなって」
「早めにしろっ!馬鹿!」
「はい。すんませんでした・・・」
縮まる巴に追い打ちをかけるような真似はしたくなかったが、
「それなりに時間がかかるなら、早めの報告・連絡・相談を欠くのはいささか問題よ。今後気を付けるように」
と苦言を呈さざるを得なかった。そして岡田に対する牽制も。
「それから岡田さん。貴女が木曾川准尉のことを内心どのように思うかは自由ですから、名前で呼んでやって下さい。私が名付け親ですので。お話は以上です」
言い渡してやるとすっきりした。もっと早めに言っておくべきことではあったが。
「ちょっと待って下さい!それはどういうことですか!」
残っている決議書の束に手を掛け机の上に乗せていたら、またしても岡田は「元気な」声を浴びせてくる。
「言葉どおりですよ?」
それで話を打ち切り巴に退出するよう促すと、案の定岡田は詰め寄って来た。
「皮肉ですか?厭味ったらしいことは止めていただけませんかねえ!これだから『高文組』は!現場のことを何一つ知らないくせに!」
乱暴に扉を閉めて出て行った。




