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スタンプラリー

 定時が近くなってきたが、指示待ち人間だったせいか、今やっていることだけで手いっぱいで他に気が回らない。最も、優先事項は片が付いた。官吏軍人恩給組合行きの封筒に届出書が封入されていることは確認した。西村に、地下鉄に乗って最寄りの普通郵便局に持ち込み、発送するよう命じたら、小躍りせんばかりに喜んでいた。恐らく帰りに何処かで一息つくつもりだろう。武器保管庫まで行って、装備品を含む銃剣類は確認済。辞令と階級章は配布済。旧階級章は回収済。これは本省との定期便に乗せて発送すれば終了。金庫の中身は確認済。現金残高については、異動無し。取扱者も決定済。

 後、セクハラ対策委員だの内部告発受付者なんてものもメンバーを決める必要があったが、こんなものは俺が責任者ということに自動的になるから、残りのメンバーは各中隊長を始めとする将校たちに、適当に割り振った。内線で通告したら嫌がる者が何人かいたが、文句があるなら他の者を推薦せよと言い張ったら、皆黙ったので了承したものと見なした。

 こうして二神がくれて寄越したリストの記載事項をひとつひとつこなしてゆくと、当然やらなければいけないことが減ってゆくわけで、何となく気分が良い。スタンプラリーでもしている気分だ。しかし、委託仕様書点検などはともかく、目標設定面談【近日中に予定。大隊全体の目標及び大隊長自身の目標を設定せられたし】の文言には参った。何だよそれっ!俺が決めるのかよ、冗談じゃない!実証実験部隊である以上、そういうものは設定しないわけにはいかないのは理解できる。でも、それを何故現場責任者の俺が決める必要があるのか?でも、今はいいや。初日にいきなり決めるようなことじゃない。明日以降に決めれば良い。そんなこと(と言い切ってしまうのもどうかと思うが)より今日の事だ。まともに報告が無いのは皆忙しいからだ。かと言って俺も暇を持て余しているわけじゃないから、様子を見にいくこともままならない。さてどうしたものかと思案しながら決議書に目を通していると、岡田がノックもせずに入室してきた。

「少佐。大隊司令部で全体会議を開きたいと二神大尉が申し入れてきていますが、よろしいですね?」

何故岡田がそんなことを知らせてくるのか?

「ええ、構いません」

と思わず返事をしてしまったが、特段断る理由は無い。こちらとしても報告を聞いて今後の事を考えないと、目標の設定なんて出来やしない。

「では、17時30分に開催予定ということですので、よろしくお願いしますね」

バタンと大きな音をたてて扉が閉まる。不気味なほど静かだったくせに、こういうところで馬脚を現してどうするのか?どうにも苦手だ。


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