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第13独立機械化実証実験大隊編成記念式典

ブーツの音を高らかに響かせながら別役は編成記念式典会場である地下3階へ向かう。俺たちはその後に引っ付いてそろそろと進む。地下3階に降りて会場である講堂に近づくと、本省のお偉いさんらしき恰幅の良い2人組が、その先を歩いているのが見えた。その刹那、別役は2人組に駆け寄って行った。

「佐藤審議官!それに斎藤補佐まで!うち、久しぶりにお目にかかれて嬉しいですき!」

別役は振り返った2人の両手をしっかり握り締め、上目遣いでにっこりと笑う。若い小柄な美人(実際別役は二神より年上には見えないし、美人であることは間違いない)が子犬がじゃれつくように、自分に好意を持っているとしか思えない行動をとってきたら、デレデレになるに決まっている。おっさん、というより男とは得てしてそんなものだ。そしてこれが彼女が中佐の階級章を着けている理由かも知れない。

「おい、六塚!おまん、何をボーっとしちゅう!早うこっちきて審議官と補佐に挨拶ばあ、せんかえ!」

「ああ、理恵子ちゃん。あれが例の傀儡師?」

審議官と思しきおっさんが俺の方を指差してきた。

「そうながですき。うちにもよう挨拶できんがですよ。メンタルは良うなっちゅうって聞いちゅうがですけどねえ」

「ふうん。まあ良いんじゃない?僕は理恵子ちゃんと北新地でこれするのを楽しみに来てるからさあ、他の事はどうでもいいよ」

杯を飲む仕草をする審議官に別役は、

「うちも審議官が来るのを待っちょったがです。とっておきの店に案内するき、楽しみにしちょって下さい!」

そう言って審議官の腕を軽く小突き、補佐と呼ばれていたもう1人のおっさんには、微笑みかけながらしっかりと両手で右手の拳をを握り締め、カラオケでデュエットしようと持ち掛けている。随分とあざとい真似におっさん達の豪快な笑い声が響く。

 そんな光景を見ている内に、二神は式典会場の講堂へ入って行ったらしい。俺と巴も後を追う。講堂には既に兵たちがずらりと集結していた。身の置き所が無いというか、どこで待機すれば良いのかよく分からない。ふと見ると先頭に二神が立っている行列を見つけたので、そちらに取りあえず向かう。二神の後ろには静がいた。俺たちが現れたことに気付いたのだろう、ちらりとこちらを見て巴に対してであろうが、舌を出してきた。

「もう、ほんまにアレは・・・」

巴は小声で呆れたと言って来た。

「それはそうと、さっきのおっさん何か胸糞悪いこと言ってきて、やな感じですねえ」

さらに小さな声で囁きかけてくる。

「少佐を傀儡師だと言う以上、ウチらを人形扱いしてるということですやろ?。ムカつく!」

巴の不満の矛先は別役とのおしゃべりに夢中なおっさん達に向けられていた。

「むかつく連中ですけど、中佐も言うてはったし、一応挨拶しときます?」

巴の囁きにどう反応すれば良いのか少々迷った。巴の言う事を無下には出来ない。そうは言っても、あの輪の中に入っていける自信がなかった。意を決して近づき話に割って入る隙を探すが、輪の中に入って行くことが出来かねる。そこは「勝ち組」の世界で、木っ端役人のまま放り出される寸前だった俺とは住む世界自体が違っていて、気後れどころではない。

 その内先ほどの2人とは別人から、

「何?何か用?こっちはお前なんかに用は無いからさあ、待機してろよ」

冷たい言葉が返って来ただけだった。

「ねえ、参事官。あのデカイ奴、失敗作じゃなかったっけ?何でこんなところに居るわけ?」

さあねえだの、そんなことどうでもいいじゃん、とかいう言葉。笑い声。弛緩した空気の漂うその辺をそっと離れる。

 振り向くとそこに居たのは、俺の大隊の兵達。整然と直立不動で待機している。ピンと張りつめた空気を漂わせている。その対照的な有様に頭がくらくらしてしまった。

 編成記念式典自体は別段どうということは無かった。馬鹿話に夢中になっていたお偉方も、流石に手慣れた様子で偉そうに訓示を述べる。何ということも無い式典の1コマだ。二神は入学式に例えていたが、さもありなんだ。ただそうは言っても勝手が違う。壇上で、二神作成・別役検閲済みの挨拶文を読むだけならともかく、そこで各中隊長・小隊長に辞令と階級章を手渡さなければならなかった。

 登壇して初めて自分の部隊の全容が分かり、怖気づく気持ちを抑えるのに苦労した。巴はたった3個中隊だと言ったが、かなり迫力のある絵だ。各中隊長を先頭に整然としている様は。総数500名(内100名は、軍人ロボットGR05だが)の全てを把握しきれるだろうか?GR05の内94名はたった15名分の顔と名前を、それぞれの製作時期の違いで分けて共有しているので、その事情を予備知識として持っていないと、ある意味直視に耐えない。それに脳が理解を拒否する。

 だから、残る400名についても同じようになるかも知れない。辞令と階級章を手交した中隊長・小隊長はともかくとして、分隊長クラスになると顔と名前が一致するどころか、そもそも自分の大隊の者かどうかすら分からないかも知れない。その恐怖ともいうべき不安を抱えているというのに、登壇してきた静は畏まった顔をしていたと思うと、バレないようにウインクをしてきた。流石に小首を傾げるような真似はしなかったが、豪胆と言うべきなのだろうか?

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