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おお、猟犬よ!彼奴の喉笛に食いつくが良い!

金曜日の朝出勤後にまずしたことは、川本に内線電話を掛けることだった。本省からの命令を田中に申し渡したことを説明したのだが、田中からそんな話は聞いていないと言う。最もよくあることらしい。川本は少しも慌てていなかった。

「ジロさん、二神大尉には連絡入れました?」

「いえ、これからです」

「そうですか。いえね、以前の体制なら第1中隊つまり、直接お掃除を担当する部隊あてにデータが送信されていましたから、今回もそうなるかも知れない。それもあるんですよ」

「なるほど。ではすぐに連絡します」

二神に内線電話を掛けると、俺の端末で処理する必要が有るらしい。

「電子決裁ですよ。受領したことと各中隊へ転送したことを入力処理して下さい。指示を見る限り相当な分量ですけん、役割分担をせにゃならんでしょう。3人で話しましょう」

それで大隊長室で相談することになった。そこで話している内に俄然やる気が出てきた。大隊司令部からも人数を出してくれと言われたからだ。

「実はこっちも手が足らんのですよ。複数の標的を追いかけておりましてな。それが結構な数になります。適宜分類してから分析せにゃあならんですが、追い付けるかどうか微妙なところ。正直なところ猫の手も借りたいのが現状でして」

吹き出しそうだった。確かにうちの猫ちゃん達ならきっちりとこなせるだろう。しかし猫の手ではなく犬の手だったら?自分から喜んで名乗りをあげるだろう。その様が目に浮かぶようだ。それが顔に出ていたのだろう。

「おお、そう言えば大隊司令部にはちょうど猫がおりましたな」

二神と川本は顔を見合わせ笑った。

 そんな調子で話は順調に進んだ。お掃除要員の選抜もだ。話は聞き耳を立てていた犬萩と犬樫が聞いていて、是非参加したいと熱望するので対象者を選択したら今夜にでも出動する。それ故それまで待てと命令したら、興奮した様子で持ち場へ戻って行った。実際データは整理されていて対象者の選択というか、どれから手を付けるか?というこちら側の問題だけが存在していた。

 俺はテレビ局のプロデューサーと称する輩から手を付けることにした。芸能人の女、芸能人に憧れる女。いずれも若くて美人の女を弄んでいる輩。そんな怪しからん奴は他にもいるが、こいつが一番影響力がありそうだ。

「こいつがスパイ野郎ですか!」

犬萩は今すぐ飛び出して行きそうな声を張り上げる。

「どうやってぶちのめしましょうか?」

犬樫はぴょんぴょんと飛び跳ねている。

「囮を使う」

俺は眼鏡のブリッジを右手の中指で押して位置を修正した。

「囮!」

2人は同時に叫んだ。

「犬萩!この男の懐に飛び込み、喉笛に食いつきなさい!」

「了解であります!少佐相当官!」

俺も高揚感を抑え切れない。ようやく秘密警察の一員になれそうな気がする。それが良いことかそうでないか?そんなことはその時の俺にはどうでもいいことだった。

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