マクロとミクロの話
結局その日は静からの決議書は提出が無く、毎日のルーティンをこなすだけの事だった。床に就くとそのまま眠りにつく。そしてまたも奇天烈な夢の中に入り込み、起きてしまうとその大部分を忘れてしまう。その辺はいつもと同じ。だから今日こそはといった気負いは特にない。さて今日は本省からデータが来るんだったな。川本さんに話を通さないと。場合によっては第1中隊にも分担させてしまえば良い。別段どうこう言う話じゃない。俺は指揮官なんだ。俺は命令を下せば良い。傲慢極まりないとも言える。しかしそうでなければ組織は上手く回らない。
そんなことを考えつつ、ラジオを聞きながら朝食。これもルーティンだ。そして部下の「お掃除」の成果を今朝も聞く。
「続いて次のニュースです。昨夜、大阪市営地下鉄四ツ橋線の四ツ橋駅のトイレで、大阪市内に住む無職の男性と不法滞在の外国人男性の死体が発見されました。扉が閉まったままであることを不審に思った清掃会社の社員が発見したとのことです。死体は全裸で周辺に精液の入ったコンドームと注射器が散乱しており、警察では事件の可能性が高いとみて慎重に捜査を進める方針です」
このニュースが忘れられた頃に「犯人」が逮捕され、また忘れられた頃に裁判が終わる。様式美と言っても良いだろう。
でもこんな感じで件数を積み重ねても、目標にはまだまだ遠い。政府は新興企業の内、特に虚業的な企業を補助金という餌で釣って大阪に移転させる。そういう会社を起業もさせる。テレビ局を強引に移転させ、それに伴って芸能人とその予備軍及びその周りをウロウロしている奴ら。こいつらも大量に大阪市とその周辺部に移り住むよう仕向ける。大阪で造られる富に寄生しようという輩をもっと集める。それが政府が進めるマクロの世界の話。俺たちは、その中から穢い対象者を選択し洗濯する。そのミクロの世界で俺たちはあがく。それが俺たちの世界で生活だ。今日もその生活が始まる。




