やり場のない怒りを300連発
96式機関拳銃の弾倉に入っている弾丸は30発だ。通常その弾倉をバンドなりガムテープで互い違いに縛り付けて使用する。素早く弾倉の交換を行うためだ。だからワンセット60発の弾丸になるわけだが、それを5セット分撃ってしまった。自分でもドン引きだ。自分の行き場のない怒りをぶつける。そのためだけに300発の拳銃弾を使用すると決めたのだ。その結果残ったのは虚しさだけだったが。
患ってから自分の胸中に去来するものは虚しさだけのような気がする。何をしてもそうだが今日は格別だった。巴は嬉しそうな顔を浮かべこちらに歩み寄ってくるから、愛想笑いの一つも浮かべねばなるまい。多分気分が晴れてすっきりしたかと、質問してくるはずだ。それに対して俺はそれを肯定する。そんなやり取りに今はげんなりする。どうしたんだろう?
ついため息が出る。疲れているのか?それを言い訳にしている、自分に腹が立ち呆れているのか?その答えを見つける前に巴も梅も心配そうにするので、空元気を出す。心配をかけさせたくない。だからその辺は上手く誤魔化さないと。俺はこの世界に居る以上、真実など打ち明けられたものではない。
しかし96式機関拳銃以下装備品を武器庫に収め、ついでに武器庫内を点検している内に気持ちは落ち着いてきた。このままの気分で大隊長室へ戻ろう、そう思っていたら巴が静からの電波を受信したと言う。
「ママ今どこ?生贄候補が見つかったよって、訳分からんこと言うてまっせ。何のことです?」
「ああ・・・」
静もいつもと何ら変わらない、それにどこか安心する。
「この前メイドカフェに潜入させられたでしょう?」
「ああ、結構似合ってましたよ、あれ」
巴はにっこり笑う。その無邪気な笑顔を見ると、あんなコスプレ感丸出しの衣装でも似合っていたのかと思うと、悪い気はしない。それが例え巴が気を使って言ったお世辞でも。
「それでね、今日のお昼前だったかな?状況に応じてママ役をやってもらうって言っていたのよ。新設定の新企画らしいの」
巴は上を見上げた後呆れ果てたという顔をこちらに向ける。
「またあのアホは・・・。無視してええですよ、あんなん。どない言いました?」
「決議書出せって言っておいた。提出はまだ」
「何ですの、それ・・・」
巴は再び上を見上げる。
「それで?その続きは?」
「はあ、何!ほんまか?・・・あ、通信切りやがった!」
怒る巴。
「どうなったの?」
「決議書は中隊司令部へ回してますから後で決裁承認お願いします、ですって!」
「ふうん。じゃあ、後で見ておくか」
勝手に動いていると言うべきか?自主的に任務に精励しているというべきか?答えは後で出る。期待せずに待っておこう。




