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第2話 親友

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「突然呼び出して悪かったな」

「それはいいけどよ……。お前、こっちに帰ってくるなら事前に一言よこせよな」

「それはもう既に、昨日家族に散々言われたよ」

「家族にも言ってなかったのかよ……」


 目の前で心底呆れたといった様子で俺を見るのは、檜山修司ひやましゅうじ。小学校時代からの腐れ縁であり、俺が唯一親友と呼べる人間だ。


 昨夜、昼過ぎにうちに来るように電話で伝え、現在俺の自室で一年ぶりの再会を果たしたところというわけだ。ちなみに、今日は平日ではあるが、今は8月の半ばなので修司は夏休みだ。


「そういえば、さっき母さんに何か言われたみたいだったが、余計なこと言われなかったか?」

「……あ、あぁ。背が高くなったとか、ちょっとした世間話をしただけだ」


 今、少し間があったな……。これは何か余計なことを言われたな。


「まあそんなことより亜蘭、学校はどうするんだ?」

「どうするも何も、もちろん復帰するぞ」

「おーそうか!ならまた同じクラスで……」

「残念ながらそれは無理だ。なぜなら俺はまだ一年生。来月には俺はお前の後輩だな」


 俺が日本を発ったのが去年のちょうど今ごろで、一学期の間は修司と同じ高校に通っていた。しかし留学中の一年間は高校を休学している状態にあり、夏休み明けの9月から復学することになっている。

 つまり、一学年の過程を修了していないのだ。


「でもお前、アメリカでも学校に通ってたんだろ?」

「こっちと向こうじゃカリキュラムが違うってことだよ」

「俺よりもはるかに成績優秀なお前が留年とは感慨深いな……」

「おい、その言い方はやめろ。ちょっと気にしてるんだから」

「ははっ、悪い悪い」


 こんな茶番もこいつとだからできることだ。伊達に長いこと親友をしていない。


「そうだ。修司に一つ聞きたいことがあったんだ」

「何だ?急に改まって」

「家族から、葉音が引っ越したって聞いたんだが誰も引っ越し先を知らないらしくてな……。何か聞いてないか?」

「い、いや……。小日向さんが引っ越したってのは聞いてはいたが、流石に引っ越し先までは……」

「そうか……」


 葉音にとってまともに話せる数少ない人間の中に修司も含まれていたのだが、どうやら引っ越し先までは聞いていなかったらしい。


「葉音のやつ、何も言わずにいなくなるとはなんて冷たいヤツだ」

「お前が言うな」

「うっ……」


 それを言われてしまえばぐうの音も出ない。


「まあそのうち会えるだろ」

「昨日親父にも似たようなことを言われたが、何でみんなそんなに楽観的なんだ?」

「あ、いやこれはだな……。そうそう!お前を元気づけるために元々そう言うつもりだったんだ!」

「無責任じゃねーか。まあ、気持ちはありがたいけど……」

「と、とにかく!久しぶりにあのゲームで対戦しようぜ!実はお前に勝てるように練習してたんだ」


 そう言うと、修司はゲームの準備をし始めた。何だか俺が落ち込まないように気を遣ってくれているような気がして、段々と申し訳ないという気持ちが湧いてくる。


 だから、俺はわざとらしい元気な声で言う。


「望むところだ!一年のブランクがあってやっといい勝負ってとこだろうけど」

「なにおう?」


 そんな会話をしながら、俺は修司とモニターの正面に向かって並んだのだった。


 ここに葉音がいれば、今よりもっと楽しかっただろう。今ごろあいつもどこかで元気にしているのだろうか……。



***



「今日は久しぶりに楽しかった。じゃあまた学校でな」

「ああ。今度会う時は修司先輩と呼ばないといけないかもな」

「……想像しただけで鳥肌が止まらねぇ」


 修司は最後にそう言って、自分の家へと帰っていった。何だか腹が立つ反応をされたので、一度本当に呼んでやろうか。


 修司と色々話したことで、今日一日で日本での思い出がありありと浮かんできた。まあアメリカにいたのはたったの一年だけなのだが。

 しかし、そのどれを思い出しても俺のそばには葉音がいたような気がする。だからこそ、俺はもう一度葉音に会いたい。


 そういえば葉音は今、高校生になったのか……。年齢は俺の方が一つ年上だが、学年では今の俺と同じと言うことになる。葉音が同じ学年にいる学校生活か……。それはまた、随分と楽しそうな響きだ。


 

***


 

 この時の俺はまだ知る由もない。こんなにも早く葉音との再会が果たされることになろうとは……。


 

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