天界でスローライフ
【天界でスローライフ】
ランベルト・ブートキャンプもいいけど、
並行して何か有益な活動はできないか、と考えた僕。
じゃあ、神様の好きなスィーツと酒を自製しようかと思い立った。
『バカを言うでない。儂らは崇められるポジションだぞ。なんで土にまみれなくてはならんのじゃ』
ああ、そういう神様はスィーツも酒もなし。
そういうことにしたら、皆渋々農作業に従事し始めた。
僕も神様の末端に納まったので、やけに強制力が強くなった。
悪魔のみなさんも、冥界に戻らずちゃっかり天界のスィーツに篭絡させられているので、当然のように農作業に参加させる。
『そういう問題ちゃうで。ロレンツォの力、神々の中でも飛び抜けて強いわ』
みんなひいひい言いながら畑を耕している。
そもそも、神々なのに単純な4魔法(火水土風)を使えないのが多い。
特に、土魔法を使える神が一人もいない。
だから、いちいちクワを振り回している。
『だって、天界の地面は雲やし』
うーむ、そういう問題なんだろうか。
それに雲を耕すと、土になるのだろうか。
ファンタジーの世界では細かいことは後で考えるのであった。
そういうわけで、最初の小麦は大変な苦労をした。
しかし、腐っても天界。
肥料に世界樹の雫を与えたせいか、
むちゃくちゃ豊作、しかも極上の美味。
『私が豊穣の神だからよ』
『おまえ、戦いの神の座をかけてマルスとじゃんけんして、負けたから豊穣の神やってるやん。名前だけなのは皆知っとるで』
『そうじゃ。世界樹の雫は万能じゃ。ワシでも豊作にできるぞ』
ケチョンケチョンに詰られる豊穣の神。
実際、豊穣にするための力を持っていないから仕方ない。
では、僕が製粉を行う。
天界で酵母を育て、パンを焼いた。
『これは今までにない無上の味じゃの。食べる前から芳醇な小麦の香りが漂ってきてるわ』
『食感もふんわりみっちり、極上のワインのような香りとはちみつのような甘みのあるパンじゃ』
確かに、さすが天界のパンというべきか。
続けて、牧畜を始めた。
牧畜はヘルメス様の子供パインがほそぼそと天界の隅で行っていたが、
十二神もまじって大々的に行うことにした。
動物はシンプルに牛・豚・鶏であるが、天界で育てられるから、天牛、天豚、天鶏と呼ばれた。
『てんぎゅう、てんけいはええわ。てんとんってなんかおかしくないか』
『じゃあ、ぶたてんは』
『なんや、豚の天ぷらやんか。あれはうまいで』
『豚と天かすのお好み焼きという線もあるぞ』
マリアは僕と日本に行くと、1日6食はグルメ周りをしていた。
そのたびにランベルト・ブートキャンプのお世話になるのだが。
けっこう好きなのが豚の天ぷらである。
『ロレンツォは卑怯やで。私と同じ量食べてるのに、ちっとも太らん』
『マリア、そのコツを教えてあげようか』
『あ、そういう使えるネタ、まってたわ』
『あのね、魔法を使いまくるといいよ』
マリアは久しぶりに教会へ行って、この世の奇跡、回復魔法を乱発してきた。
『……ロレンツォ、ギブ……』
マリアは1日でげっそりした顔で帰ってきた。
魔法は大量のエネルギーを必要とする。
まあ、そんなこともあったが、いつのまにか豚のブランド名はてんぶたということになった。
“天”の文字がつくだけあって、天牛、天豚、天鶏による乳製品、肉類、卵すべてが規格外に美味だった。これで作ったスィーツには、神々一同大満足である。
『流石は我々は神じゃの』
『うむ』
『日本を抜いたの』
『うむ』
『じゃあ、日本行きはもうなしですね』
『それはそれじゃ』




