男神の復活5
【男神の復活5】
さて、次はエーテルだ。
これが難問だ。
エーテルって、前世地球では否定された物質だ。
ここはファンタジー世界だから存在するのかな?
ハデス様に聞きにいく。
『エーテルは普通に存在するよ。目の前でも。空でも。この世界がエーテルの海に浮かんでいる、と言っても良いかもしれない』
そういえば、この世界には“宇宙”というのが存在しない。
上から天界、地上界、死の国の3つの世界がある。
世界樹がそれら3つの世界を貫き、世界樹の枝が空にひろがり、太陽や月がその空を動いている。これがこの世界の全体像。
天動説の世界だからね。
この世界を包むのがエーテルなのであれば、簡単に摂取できそうなんだけど。
『エーテルはどこにでもあるが、実はどこにもないんだよ』
『意味がわかりません』
『エーテルを管理している神がいる。神といっても猫なんだが』
『猫ですか』
『ああ。いつもニヤニヤしているかと思うと本体は消えていたり、なんとも不思議な猫なんだ』
それって、不思議の国のアリスのチェシャーキャットじゃないだろうか。
ひねくれた猫のことだから、エーテルにもひねくれた性質を与えたのかな。
『いや、決してひねたからじゃないんだ。その猫が言うには、それが物質の本質なんだと』
『どこにでもあるが、どこにもない。謎掛けか衒学みたいな話ですけど』
『その猫の親戚、なんて言ったかな、シュレなんとかっていう猫が証明したらしい。とにかく、あってみるかい?一つ注意するのは、その猫は決して本当のことを言わない。それは心に留めておいてくれ』
森の中に入っていくと、木の上にニタニタと笑っている猫がいた。
どう見ても、チェシャーキャットだ。
『こんにちは、猫さん。エーテルについて教えてもらいにきたのですが』
『僕はエーテルなんて全然知らないよ』
(よく知っているってことなんだな)
『エーテルを手に入れるにはどうすればいいんでしょうか』
『エーテルは手に入らないよ』
(手に入るってことか)
『どこか、エーテルのたまり場みたいなところはないでしょうか』
『エーテルのたまり場なんてないよ』
(当てずっぽうに言ってみたけど、たまり場があるってことかな?)
『たまり場はどこにあるのでしょうか』
『たまり場はないよ』
(ああ、ここで会話がとぎれてしまう)
『ロレンツォ、あかんわ。』
猫マリアがフードから顔を出して文句を言う。
すると、チェシャーキャットが目を輝かして、
『その猫はブサイク』
『あ゛?』
マリアが顔に似合わないドスの聞いた声を上げる。
『マリア、その猫は決して本当のことを言わない。忘れたの?』
『ああ、そうだった。でも腹たつわ』
『猫さん。マリアは美人でしょ?』
『違う。ブサイク』
『やっぱり腹たつわ』
猫はだんだんと焦ったような顔をし始めた。
『ブサイクな猫。アッチへ行って。こっちにきちゃ駄目。名前も知りたくない』
(このチェシャーキャットもどき、猫マリアが気に入ったのかな?)
『猫さん、この猫はマリアってんだけど』
『ああ、ブサイクな名前』
『ああ、ものすごく腹たってきたわ』
ますます焦ったような顔をするチェシャキャットもどき。
『あのさ、君が反対の言葉しか言わないのはわかってる。だから、行動で示したらどうかな。僕たちエーテルを探しているんだけど、エーテルをプレゼントしてくれたらマリアはすごく喜ぶよ』
チェシャキャットはニタニタ笑いを残したまま、宙に消えた。
ほんの数分後、ニタニタ笑いの猫は実体を浮かび上がらせた。
『これ、エーテルじゃないけど』
といいつつ、液体の入った瓶をマリアに渡す。
『ありがとう。ところで猫さん。マリアは猫じゃないけど、知ってた?』
『知ってた』
『マリア、変身を解いてみたら?』
ここでマリアは女神の姿に戻る。
『ああ、とっても美人』
チェシャキャットもどきはがっかりした顔をしたと思うと、そうつぶやいて消えてしまった。
『美人にきまってるやん。馬鹿な猫ね』
『反対の言葉しか言わないって忘れたの?』
『あー、ということは!私、ブサイクって言われたの生まれて初めてや!』
猫に言われたぐらいで。
まー、とにかくエーテルが手に入った。
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