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帝国のご飯が美味しくなる

【村の特産品の開発 ステンレス】


『サラマンダーさんとノッカーさんとドワーフのドガエ集合』


 帝国に納品する製粉魔導装置の材料として、

 ステンレスを生産しようと思う。


 ステンレスは鉄とクロムが主な成分。

 あと、ニッケル、モリブデンなどの用途に合わせて添加される。


『ノッカーさん。鉱物でクロムを探してます。この付近にあるかどうかわかりますか』


 僕は、クロムは銀色の固い金属だって説明した。

 酸化してるかもしれない。そうなると色はわからない。


 しかし、そこはファンタジー世界。

 ノッカーさんは一発でクロムを出してきた。

 隣の神聖イスタニアンに鉱山があるという。


 ちなみにノッカーさんはどんな金属だろうと探し出せると豪語していた。

 頼もしい。



『では、カオリン石はどうかな。白色してるけど』


 ノッカーさん、これもすぐに言い当てた。

 これは裏山というか、裏の山脈にあるらしい。

 高さ8000m級の山脈だけど。


 ノッカーさんと猫を連れて、ビュンと鉱山まで飛んで行く。

 猫マリアを連れて行くのは、現物を鑑定してもらうためだ。


 クロムもカオリンもトン単位で採取する。

 あと、ついでにニッケルも探してもらう。

 ニッケルは色々と使い出があるしね。



 次は、サラマンダーさんとドガエの出番だ。

 まずは、カオリンを使って耐熱レンガを焼き上げる。

 これで1500度以上の高温にも耐えられる高炉が建設できる。


『鉄とクロムを混ぜるとステンレスといって腐食に強い金属ができる。試してみてよ』


 サラマンダーとドガエは鉄とクロムを合金にした。

 また、鉄・クロム・ニッケルの組み合わせも試してみる。


 ニッケルを混ぜたほうが調子が良さそうだ。

 混合比率をいくつか試してステンレスが完成した。


 魔道具と言いたいところだが、僕では作り方がわからない。

 何度も失敗を重ねながら、ドガエにアドバイスをもらいつつ、

 ステンレス製造の魔道具を作る。

 それでも肝の部分はドガエの手が必要だ。



 サラマンダーとノッカーにはお礼のスィーツを。

 本日はレアチーズケーキにしてみた。

 そしたら、ノッカーは腰を抜かすほど感激したらしい。


『おいら、毎日食べたい』


 全然問題ありません。ノッカーさん、マジ有能ですから。

 そしたら、他の精霊たちや何故か三毛アトラクさんと猫マリアもちゃっかり席に座ってる。


『私もちゃんと働いたでしょ』


 確かにそうだ。マリアいつも寝てるから、仕事すると本当にずうずうしくなる。あ、しなくてもずうずうしかった。


『普通のチーズケーキも美味しいのじゃが、レアチーズケーキは濃密な感じがたまらんのじゃ』


 アトラクさん、クッキーの次にレアチーズケーキを気に入ったとのこと。



【帝国のご飯が美味しくなる】


 なんとか、魔導製粉機を100台つくり、帝国に納めた。

 完成品はこれで終わりである。

 ここから先は帝国の内製ということで、魔石動力源とステンレスだけ納めることにした。



『人はパンのみに生きるものにあらずとはいうが、パンを美味しくするだけでこれだけ民心が向上するとは』


 皇帝はとりあえず領地に製粉魔導装置をばらまき始めた。

 それだけでも、パンの劇的な質の向上に寄与していた。

 街に喜びの声が溢れていた。



 皇帝は数百人の料理人を集めた。

 僕は、パン酵母の作り方とパン製造の微妙なさじ加減を指導していく。

 料理人たちは、特にパン酵母という耳慣れないものに興奮していた。


『みなさん、ビールの樽を使ってパンを作ることがあると思います。ビールの樽にはビールの酵母がくっついているのです。酵母がビールを発酵させるのです。パン酵母もパンを発酵させ、ふっくらさせるもととなります』


『『『『『パン製作の革命ですな』』』』』


 料理人たちはこぞって称賛する。まあ、数世紀先取りした技術だから当たり前。

 でも、僕が凄腕の魔法使いだと紹介されると全て納得してくれた。

 魔法。この世界でも万能のパワーワードだ。


 ただ、料理人たちに告げた。。


 目的はみんなの食生活が豊かになること。

 そのために、僕はノウハウをみんなに伝えている。


 だから、ノウハウを自分にだけ抱え込まないように。

 少なくとも僕の教えるものは。

 君たちオリジナルのはいいけどね。



 料理人たちがちゃんとパンを作れるようになったら、地元に戻した。

 魔導製粉機は誰でも使える装置であるが、パンを実際に作れる経験値はパンの出来具合を大きく左右するからだ。


 製粉・パン製造に携わる人はかなりの名誉職になった。

 何しろ、皇帝自ら普及に努めたからだ。

 お陰で皇帝の人気が爆上がりしている。


 前世日本の銀シャリのような感覚で白いフワフワパンは庶民の憧れであった。

 それが安価に気軽に入手できるのだ。

 魔導装置をみれば、それは神の御業に見える。

 まるで魔法のような装置なのだ。確かに魔法でパンを作っているが。

 この後、皇帝の版図では急速にパン製造技術が向上した。

 それは民の隅々まで伝播するのであった。


 障壁は旧来勢力であるギルドとか保守派の貴族であるが、帝国では皇帝の力が強すぎて、旧来勢力は力を失いかけていた。


 それに、ふかふかパンを目の前にして、それに反対でもしようものなら、消費者の怒りが爆発するのであった。



『さて、次は製糖魔道具と乳製品魔道具です。これで質の高い砂糖とバター、生クリームができます。卵と小麦粉、砂糖で多くのスィーツを作ることができます。とりあえず、クッキーとプリンを』


 その先は各自の努力ということで。

 僕は目標として、ベリーケーキを食べてもらった。


 1年以内に、帝国内のスィーツのレベルがバク上がりし、菓子屋だけではなく、家庭レベルにおいても美味しいクッキーが焼き上がるのであった。



『ロレンツォ、おまえが俺の寝室に来たときはなんたる無礼者だと頭に血が昇ったが、おまえの提案、本当に感謝している。城におっても民の喜ぶ声が聞こえてくる』


 一時期、ロレンツォとの戦争に負け続けて立場を危うくした皇帝であった。

 結局王国領土を編入して報奨はたっぷり与えることができた。


 庶民は戦死者が比較的少なくあまり悪感情がないうえに、従来とは一線を画したふかふかパンとふんわりしっとりスィーツにやられてしまった。

 むしろ、戦争によって食生活が豊かになり、今となっては皇帝への好感度へと変化していた。


 神の御業により憧れの白いフワフワパンを安価に手に入れることができる。

 皇帝が行幸すると、道でひれ伏し感謝を述べる人が続出した。


『うむ、お前の言う"そふとぱわあ"とやらは効果が高いの』


 などとニヤニヤしている。人気があるのを実感しているのだろう。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

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