ボネース帝国が攻めてきた3
【ボネース帝国が攻めてきた3】
僕は逆に帝国に攻勢をかけた。
というか、皇帝に交渉しにいった。
『皇帝、お初におめにかかります。元ジョージャン王国三男のロレンツォです』
『なんだ、ここは余の寝室であるぞ。不届きものめ、誰かおらぬか』
『皇帝、外にはあなたの声は聞こえません。結界魔法をかけましたから』
僕はボネース帝国首都のフォトコン、皇帝の居城にきていた。
『うぬぬ、何しにきた。俺の命か』
『命を狙うなら、とっくにやってました。お邪魔したのは、侵略をやめてほしいからです』
僕は説明する。
僕は山の奥でゆっくりすごしたいだけ。
人の命をとったりするのは性に合わない。
ひいてくれませんか。
『馬鹿な。ここまで被害を受けたからにはもう後には引けぬぞ』
『あのね、皇帝。損切って知ってます? ギャンブルなんかでこれだけ金つっこんだんだから、ってずるずると辞め時を失う人、多いですよね。失敗したときはいかに過去を切り捨てて前を向けるか。それが損切』
『むむ、言うではないか』
『皇帝、僕は魔法使い。いつでもあなたの枕元に現れることができます。このようにね。どれだけ防御を固めても無駄です。あなた方の被害が増えるだけです』
『確かに、次男王子との戦いといい、我々との戦いといい、指揮官クラスを効率的に刈り取り、あっという間に勝利をおさめておる。兵士に被害が多くないから、民の間では悪感情もあまりない。敵ながらその腕前は感心しておった』
『皇帝、僕はスィーツとか美味しい食事とかをみんなと楽しみたいだけ。これ食べてみて下さい』
僕はクッキーをかじりながら、いくつか皇帝に渡す。
『うぉ、なんと美味なクッキーであるか』
『このクッキーは精霊や神のお使い様も大絶賛のもの。僕がいなくなったら、彼等は暴れまわりますよ』
『なに、本当の話とは思えんが、クッキーが大変美味なことはわかる』
『こんなものもあります』
といって、チョコレートケーキやラムレーズンアイスクリーム、プリンなど評判の高いスィーツを並べていく。
『マジックバッグか。しかし、なんという美味さ。特にラムレーズンアイス。少し酒が入っておるな』
僕はラム酒を取り出し、皇帝に飲んでもらう。ストレートとラムハイで。
『この酒、実に酒精がきついな。しかし、なんとまろやかな酒だ。ラムハイとやらは一転爽やかな味わいだな。暑いときにぐっとやると良さそうだ』
『でしょ? スィーツにしても酒にしても、僕はまだまだネタをもってます。戦争なんかやめて人生を楽しみましょうよ。そもそも、皇帝、民の心を鷲掴みにするのは、武力じゃなくてソフトパワーですよ』
『そふとぱわあ?』
『楽しいことってみんな好きでしょ? それを戦略的にもりこむのです。民の毎日のご飯が美味しければ、それだけ国は治めやすくなるでしょ』
皇帝は、僕のペースに乗り始めていた。
そもそも、命を狙うのならば、とっくに刈り取っている。
そんなことのわからない皇帝ではない。
僕のいったことを反芻しているようだ。
それにしても、突然現れた敵の存在にこうした態度を取れるのはさすが皇帝ともいうべきか。
『おい、このクッキーとやらは増産できるのか』
『皇帝、まずはパンを美味しくしませんか』
といいつつ、皇帝にパンを食べてもらう。
『なんだ、このフカフカのパンは。パンの常識が覆るな』
『僕のやり方は、もっと簡単に安くしかも大量に、このふかふかパンを製造する方法です。これを一気に皇帝の領地にばらまくというのはどうですか。民の喜ぶ顔が見えませんか?』
『よし、わかった。おまえオレに仕える気はないか』
『皇帝、僕は自由人。相談役、というのでいかがですか。必要なのは安寧。それさえ保証してくれたらタダ働きでも構いませんよ。金とか間に合ってるし。娘さんとかもダメですよ』
『タダ働きというわけにはいかぬ。せめて、伯爵の地位を受け取ってくれぬか。スィーツとかの話抜きにして、そなたの胆力、みあげたものだ。豪傑じゃの』
いやいやぜひぜひのやりとりのあと、僕は伯爵の地位をもらうことにした。但し、名誉伯爵で義務なしということで。
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m




