そのころ宮廷では
【そのころ宮廷では】
『本日の緊急会議を始める。議題は、三男のロレンツォについてだな。議題の提起者、次男レオニダよ説明せよ』
『三男には重大な欺瞞疑惑が持ち上がっております。欺瞞とは魔法の能力があるにも関わらず、魔法がないように偽装して教会そして我々王室を欺いた疑惑です』
『なんと。奴には、魔法が発現しておったのか』
『それがおそるべきことに、王国でも随一と思われるような強力な魔法使いに成長しております』
『なんで、それを隠すのだ?』
『どうやら、彼は城を離れ、自分の領地を持ちたがっていた模様です。彼には強力な後ろ盾がありませんので、窮屈な宮廷生活よりも自由な采配のできる領地経営を目論んだものと思われます』
『それは問題じゃの。我々を謀ったのは罪じゃ。で、領地のほうはどうなんじゃ?』
『それが急激な発展をしておりまして。
まず、製粉魔道装置が王国を席巻しております。
王室でしか味わえないような小麦粉を庶民でも簡単に味わえると評判の魔道装置です。この魔導装置のない領地はそれだけで領土としての格が下がるとまで言われております。
全ての領主たちが必死になって、この魔導装置を求めております』
『パンについても、王室以上のものを提供していると言われております。これがロレンツォが提供しているパンです』
『……なんと、我々の食べているパンより白いし、美味しいではないか。これを庶民連中が食しておるのか。我々をさしおいて』
『それから、驚くべきはスィーツです。我々でさえ味わったことの無いような極上のスィーツが開発されており、王国ではこのスィーツを目指して商人が彼の領地を目指しておるとのことです。これが奴の開発した苺けーきとやらです』
『……おお、気を失ったかと思ったぞ。なんと素晴らしいスィーツじゃ。天からの捧げものだと言われても信じられるではないか。これも庶民が口にしておるのか』
『庶民もですが、特に貴族の奥方連中がこぞって求めておるものです』
『更に問題は、彼の母方の実家であるガルディーヌ家です。ロレンツォと組んで、焼き肉・食肉・酒ビジネスを王国中で展開中です。酒に関してはロレンツォも展開しており、王国中のドワーフを虜にしております。酒を求めてドワーフが移住してしまうため、領では死活問題になっております』
『つまり、何か。パンとスィーツと酒でロレンツォファミリーは王国を席巻しておると』
『はい。由々しきは従来の保守勢力である貴族やギルド体制を打ち壊す動きをしていることです。おそらく、ロレンツォには王国の旧来勢力を破壊する目的があるものと推測されます』
『なんと。捨て置けんな』
『これはあくまで噂ですが。ロレンツォは王室を遥かに上回る金を所有しているとのこと。それから、倉庫いっぱいの宝石がうなっているとの噂もあります』
『よし、決議もいらん。ロレンツォを呼び戻せ。領地は取り上げろ。奴の開発した産業と金や宝石もな。よしよし、奴の果実だけ取り上げるぞ』
『おそらく、ロレンツォは断るでしょう』
『何だと?歯向かうのか?』
『父上、奴の戦闘力は恐るべきものです。王国の総力をあげて彼を亡き者にするのが最も妥当ではないかと』
『それでは奴の開発したものが失われるではないか』
『父上、目先にとらわれるとひっくり返されます。実は私は何度か密偵を放っております。威力偵察もしてきました。簡単に出し抜かれました。千単位の兵力では、太刀打ち出来ないかもしれません。最低でも万近い兵力が必要かと』
『それほどかの?大袈裟ではないか。奴の領地は数百人しかいないのではないか。オーバーキルというものにならないか。みっともないぞ』
『父上、奴の領地はすでに人口が千人を越えております。推定3千人はいるのではないかとの報告がありました。父上、私に5千の軍勢をお与え下さい。必ずやヤツをひっ捕らえて、ここに引きずり出して見せましょう』
『よし、次男レオニダよ。そなたに1万の兵力を与える。更に、隣接するバイシュからも助力を得るがよい。失敗は許さんぞ』
『ははっ』
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