山賊退治2
誤字・脱字・感想等ございましたら、遠慮なくお願いします。
【山賊退治2】
山賊たちは、鶏や山羊、牛を飼い始めた。
狩猟が難しいことを彼らは良く知っている。
僕は定期的に食料を提供した。
小麦栽培は問題なかった。
子供の頃からさんざん手伝わさせられてきたのだ。
僅かながら、自分たちの畑もあるしね。
ついでに、野菜も栽培するようになった。
収穫の前に、僕は市場で食材を買い込んできた。
そして、パンの作り方を教えた。
魔道具の使い方なんだけど。
『えらく簡単に製粉できるんでやんすね』
『しかも、王族や貴族が好むという白いパン。本当にこの世にあるんですね』
『最高のパン作りには修練が必要なんだけどね』
肉の熟成も順調だ。
『肉を熟成させる必要があるってのも、寒い地方のことで、ここら辺りじゃ暑くて難しいってのが常識でしたが、この魔道具のお陰ですか。柔らかくて、臭みもなくて、本当に上等な肉になるんでやすね』
一ヶ月もすると、すっかり安定した運営ができるようになっていた。
みんな、パンと熟成肉に喜色満面だった。
『順調みたいだから、今日はエールを持ってきたよ。樽の中身、全部飲んでいいよ』
山賊は30名ほど。樽は200㍑はある。
『これがエール?これがエールなら、今まで飲んでたのは、馬のションベンでやすな』
『いや、まったくだ。ワインばっかり飲んでエールを馬鹿にする貴族連中に飲ませてやりたいな』
『そんなもったいないことするなよ』
『まったくだ』
みんなたらふく飲んで食べて、その日は全員つぶれた。
次の日、二日酔いで頭痛の残る元山賊たちを前にして、
『村長はグストフでいいよね。今後は、武器の練習も行ってよ。普通の村なら、自警団がいるでしょ』
グストフは山賊の頭の名前だ。
『坊ちゃま、村長はあっしでいいんでしょうか』
僕は、いつの間にか呼称が坊ちゃまで統一された。
ランベルトがそう呼ぶからだけど、僕も王家の一員だから、どうしても育ちの良さが出る。
『グストフは山賊の頭だけあって、リーダーシップがあるから。それに根っからの悪人じゃないし』
僕は、1週間ごとに村を視察しにきた。
ランベルトには山賊の剣の指導をしてもらう。
彼は元冒険者Bクラスというだけではなく、その後の精進で王国でも有数の剣士になっている。その分、指導は鬼のように厳しいんだけど。
僕もランベルトに力を見せつけて欲しいと頼んでいる。
彼は僕以上にそこらへんの機微に詳しい。
彼が山賊になったら、数千人の集団の頭になるかもしれない。
山賊の群れを上手く村経営に誘導できるようなので、僕は周囲半径50~100km以内の山賊たちを拳で会話して、見込みがあるようならこの村に連れてきた。
見込みのない山賊や指名手配されてるような悪質なのは、街の冒険者ギルドで引き取ってもらった。
数年後には、山賊村は200人ほどの集団となった。
一度ははみ出した連中なので、気が荒いし、ワガママなことが多いが、
そこは飯の美味さと、僕とランベルトの拳でねじ伏せている。
それでも急ごしらえの山賊集団だから、どうしても軋轢が出る。
『わかったよ。じゃあ、トップになりたい人、手を上げて。これからデスマッチを行うよ』
腕に覚えのあるのが8人ほど出てきた。
トーナメント戦を行う。
『一応、僕は回復魔法を使えるけど、殺したりしたらダメだよ。腕とかとれちゃったりしても回復手段はあるから、多少無茶しても大丈夫だけど』
勝ち上がったのは、グストフと山賊の元頭の一人だったバジーリオという人物。
バジーリオは東隣のボネース帝国の元百人隊長だった。
博打好きらしい。
二人の闘いは拮抗してなかなか勝負がつかなかったので、年齢の上のグストフが村長、バジーリオが副村長ということにした。
『坊ちゃま、お役人が来たらどうしましょう』
『君たち、過去はともかく今は法律に反していないから。ここは君たちの土地だよ。それに過去のことだって、黙ってたらわかんないでしょ?』
王国には、無主の土地は開拓したものの私有地となる、という法律がある。
一人あたり約10ヘクタールまでだけど。
山賊とかの犯罪者は、貧乏ゆえの部分が大きい。
犯罪は確かに罪であるが、重大な犯罪を犯していないのならば、ある程度情状酌量の部分がある。
『仮に理不尽なことを役人が言うようなら、僕に言ってよ。こっそりと相談してくるから』
『坊ちゃまの相談はおっかないね』
『いや、マジでおっかない』
『冗談抜きでおっかない』
ちょっと、怖がらせすぎたかな?
拳で会話するのは好きじゃないんだけど。
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m
 




