表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/102

お祖父様の家に遊びに行く5

誤字・脱字・感想等ございましたら、遠慮なくお願いします。

【お祖父様の家に遊びに行く5】


 エールは作成自体は難しいというほどではない。

 何事も同じだが、品質高く、が難しいのだ。


 エール作成の大きな流れは、


 大麦を発芽させる⇒乾燥⇒麦芽粉砕⇒お湯を加える⇒麦汁を濾過

 ⇒常温発酵


 領内にいるエール製造に携わるドワーフを呼ぶ。

 品質をあげるために工程の細かなチェックを検討するためだ。



 その結果、次のとおりになった。


 前提として、シャワー室で体を洗い、新しい服に着替える。

 余計な菌をもちこまないためだ。


 ①成熟した大麦だけを選別する。

 ②大麦に水を与え、発芽させる。

  水は何度か取り替える。埃などを取り除くため。

  発芽させるのは、大麦を麦芽糖に変化させるためだ。

 ③温風で乾燥させ、発芽を止める。麦芽完成。

  温度によって、ビールの色が決まる。

 ④除根する。これは風魔法で根にあたる部分を一気に除く。

  根は不要なものだからだ。

 ⑤麦芽を粉砕する。

  デンプンが糖に効率的に分解されるように。

 ⑥お湯を加えて糊状に温めた後、濾過する(麦汁)。

  この時、酵素がデンプンを糖に分解する。

 ⑦濾過した麦汁に苦味成分を添加して煮沸する。

 ⑧麦汁を冷まし、苦味成分の元を取り除く。


 ここからは、常温発酵をさせるとエールになる。

 冷やして発酵させるとラガービールになる。

 エールとラガーの違いは酵母の違いである。


 発生する二酸化炭素は、魔道具でドライアイスにする。


 なお、酵母は小麦エキスで培養する。

 果物などから酵母を培養しても個性的な味わいになるかもしれない。



『ハイホー!』


 ドワーフがごきげんだ。

 最初にしては質の高い酒ができたのでは?


 ただ、問題はホップが見つからない。

 そこで、ハープや柑橘類を使って味の調整をしてみた。

 確かに、ビールではない。

 しかし、質の高い酒ができたと思う。


『噂では東の国に苦くておいしいエールがあるらしいですね』


 調査に飛んでみることにする。

 その結果、ホップがあることを発見した。


 さらに、僕は専用の冷蔵魔導装置を開発した。

 出来上がりのエールは冷やした上でマジックバッグに保管する。

 ただし、エールだから冷やし過ぎには注意する。



『どうでしょうか、もう少し煮詰めたら、製品化してみますか?』

『おお、そうじゃの。これを飲んだら、ぬるいエールなぞ飲めんな。柑橘系のもホップ系のも実に質が高いではないか』


『しかし、けっこう面倒なものじゃの』

『そうですね、お祖父様。基本はそんなに難しくはないのですが、細かい気配りを列挙していくと、どうしてもややこしく見えてしまいます』


 僕は、ところどころ魔道具化して作業の効率を高めた。

 しかし、醸造は繊細なので、職人の経験がものを言う場面が多い。


 できれば、全行程を魔道具化したいのだが。



 とりあえず、キンザの街で富裕層向けと庶民向けの2店舗を出してみた。


 富裕層向けには、肉の特上部位を提供した。

 庶民向けとして内臓を安く提供した。


 内臓は富裕層にも評判が高く、

 結局、内臓は富裕層にも提供することにした。


 この世界では、冷凍・冷蔵技術が高くないので、

 内臓という傷みの早いものはなかなか食べられないのだ。



 焼き肉レストランは評判を呼び、1日50万pほどの売上をあげた。

 キャパいっぱいの売上であった。


 ガルディーニ牧場製品はレストランだけでなく、肉屋にも卸した。

 高級品として喜ばれたので、領内の肉類や乳製品とはバッティングしなかったからだ。


 マヨネーズ、ゴマダレ、タルタルソースも人気が高かった。

 特に評判をとったのが、テリヤキソースだ。


 後年、領民も一家に必ず常備する程度には人気の調味料となった。

 肉・魚・野菜いずれに使っても美味しくなる万能調味料だ。

 キンザは港町だから、魚のテリヤキも評判の高い料理となった。


 テリヤキソース以外は日持ちがしないので、一般販売できなかった。

 そのかわり、店ではそれらのソースは大変な人気となった。



 お祖父様との話し合いで、他領地への出店は見送ることにした。

 他領地へ出店となると、どんな横やりがくるかわからないのと、

 お祖父様は王家の一部から睨まれているとの感触を持っていた。


 前にも話したとおり、

 僕のお母様の死とお祖父様の事業失敗、そして僕の病気は繋がっている、

 そうお祖父様は考えていた。

 3つには毒が共通する。



 焼き肉レストランの出店は見合わせたが、肉類と乳製品は流通させた。

 評判を聞きつけた貴族や富裕層がこぞって購入していくのだ。

 それらの製品は、すぐにでも王国随一の評判をとるようになった。


『ロレンツォよ、これで数年で借金が返せそうじゃわ。爺孝行の孫で誇らしいわ』


 実際、お祖父様は2年で借金を完済したという。


 

『牛さん、僕らのためにありがとう』


 僕とお祖父様は毎月ティオルマー島のパパ平原の事務所横にある

 牛慰霊塔で感謝の念を捧げるのが通例となった。


ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ