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8話 翔君とおじいちゃん

 家に着いたらすでにご飯の時間だったため、今日の出来事をお母さんに話しながらご飯を食べる。


「ただいま。」


「おかえりー!!」


 食べ終えたタイミングでお父さんが帰ってきたため、お母さんに話した内容をかいつまんでお父さんにも話し、風呂場へ向かう。


「命の有難(ありがた)みかー。

 普段、意識しないよな(みのり)


「そうね。お父さんも豚狩りやってみる?」


 そんな親の会話を耳にしながら、服を脱いでお風呂に入る。


 いつもとは違う筋肉と緊張を感じたクエストだったが、それほど疲れがある訳ではないので、じゃぼんと入ってお風呂を出て自分の部屋へ。



 何気なく目に入った電撃モリ。

毎日、枕元に置いて寝ている。


 まさしく〈相棒〉


 明日は使うかもしれないので、((よろしく!))と心でつぶやきながら触れる。


 布団に入ってゴロゴロとスマホをいじり、クエストの内容確認や明日の道順をマップで見ていると眠気が襲ってきて、いつの間にか寝ていた。


 ーーーーー

 ーーー

 ー


((ここはどこだろう。。。))


 なにか乗り物に乗っている。


((あぁ。。。今どき珍しい車かな?))


 そんなことを思いながら流れる景色を見たり、前に座る人を見ていた。


 車には僕とおじいさんとおばあさんの3人が乗っていた。知らない人?。。。いや、よく知った人―――のように思える。


(かける)。最近どおだい?

 また釣りに行こうな!」


 そんなことを前の席の右に座るおじいさんが話す。


「あー」


 思わず開いた口から、漏れた声。

そのときふっと記憶が蘇り、(かける)とは僕のことだと理解する。


 そして、この二人はおじいちゃんとおばあちゃんだと悟り―――湧き出るように色んなことを思い出す。


「じいちゃん。。。

 うん。行きたいなぁ。。。」


 そう口にしながら僕の目から涙が溢れ、視界が(にじ)んでいく。

、、、と共に、〈夢で逢えた〉喜びと悲しく切ない気持ちが混じりながら、ある記憶が流れ込んできた。


 翔のおじいちゃんは、数年前に他界。

 そのお通夜には、翔だけが行けなかった。


 正確には、亡くなった次の日にお通夜が行われるとは思いもしなかったらしく、早朝にかかってきた母からの電話で〈じいちゃんが亡くなった〉と知らされたときには、その言葉が信じられず〈仕事だから〉と向き合うことから逃げてしまった。


 だから行けなかった。


 しかも〈亡くなった〉ことを信じることさえできていなかった。


 その日から半月前に行った最後のお見舞いでは、やせ細っていながらも元気そうだったし、数日前に母へ電話したときには、


「昨日は廊下を歩いたり、リハビリが始まったよ~来週、退院できそうだよ!」


 といった話を聞いたばかりだったからだ。


 そのことが嬉しくてばあちゃんに、


「退院したら、うなぎ食べに行こう!って誘おっかな~。あ、ばあちゃんは嫌いだったね笑」


「そうね〜行ってきな笑 あの人は半分くらいしか食べないけど、並を頼むから残ったら食べてあげてね。。。」


 といった電話もしていた。


 だから危うく葬儀も参加しないところだった。



 そんな記憶があるので、完全に夢だと自覚しつつ、声を(ふる)わせながら楽しくあろう・・・とか、夢を見続けたい・・・という気持ちが伝わって来る。


、、、とともに、〈ここでの約束が果たされることはない〉という虚しい気持ちも混ざり、僕は演技ではない言葉で話していた。


 幾度か会話が続いた後、車が止まる。

 と同時に、景色がぼやけ始め。。。


 振り返ったじいちゃんが「ありがとう」と、口にしたように感じた。


 ー

 ーーー

 ーーーーー


 薄明るい景色を感じた途端(とたん)、アラームが鳴り始めた。


 ボーッとしていたい気持ちを抑えてスマホを探し、みつけたスマホの画面を見ながらアラームを止める。


(((かける)君とおじいちゃんか・・・))


 翔という名前とおじいちゃんが出てきたなぁーという記憶を残し、すでに他の内容は何一つ思い出せない自分にもどかしさを感じた。

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