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4話 冒険者ギルドアプリ〈ルークス〉と パティチャ

 

「あず、、、生きてたんだね。」


 目を開けると、男女の姿が視界に映る。

 その女の子に意識が向いてそんな言葉が口から漏れた。


「ん?」


 意識が戻ったことに気づいてこっちを見た少女は、キョトンとした表情をする。


((あれ?変なこと言ったか。な。))


 表情に疑問を感じて回想。

 すると少女の名前が思い浮んだ。


 百美香(もみか)

 同い年で幼馴染みのもみかちゃん。

 それと共に色んな記憶が蘇る。僕の記憶と僕ではない誰かの記憶が入り混じって―――。


 ボーッとしているように感じたのだろう。もみかちゃんが口を開いた。


「目が覚めたんだね! よかったー。

 体調どお? まだ痛む?」


 心配そうに見つめるもみかちゃん。


「大丈夫。何ともない。。。かな」


 なんともないことを行動で表すべく体を起こす。


 視界が広がったのであたりを見渡すと、真っ白の布団とカーテンで仕切られた4つのベットが置かれていた。


((ここは・・・病院?))


 そんな疑問を抱いていると優兄が、「僕らの家だよ」と教えてくれた。それで理解する。


 優兄(ゆうにー)ともみかちゃんはシェアホテルで暮らす住人で、シェアホテルは地域の人も入れる区画とそうでない区画があり、ここは普通ならシェアホテルの住人しか入れない区画だということを。


 なぜなら僕は、シェアホテルのそばの一軒家で父と母と3人で暮らしているため、見知ったシェアホテルにも関わらず記憶を辿ってもこの場所がどこか分からなかったからだ。


「あー、ありがと。ここってあれだよね?」


 申し訳無さそうに僕がいうと、優兄は悟ったようで、「緊急時は誰でも使えるルールだから大丈夫さ!」と教えてくれた。



 心臓発作(しんぞうほっさ)のような症状で突然倒れたらしい。体調は万全になったので、点滴を外してもらえるか優兄に伝え、やってきたお姉さんが問診と診察をしてくれた。


 点滴を外してもらい、一人で帰ってはダメと言われ、優兄ともみかちゃんと3人で家へ向かうことになった。



「そういえば、僕の親にした?連絡。」


「あ、してない!」


 優兄も慌てていたのだろう。もう平気だし今更感があるので僕も言わないことにした。




 家に着くと料理の匂い。

((いるなぁーお母さん))と思いながら扉を開け「ただいま」と言って家に入る。


「「おじゃましまーす」」


 僕に続いて二人も家に入った。



 そこで不意に今の時刻が気になってスマホで確認すると、17時ちょっと過ぎだった。


 ついでに通知を見て思い出す。


((まだやってない!?))


 慌てて優兄に質問する。


「優兄。カツクエ――」 


 すぐさま冒険者ギルドアプリ〈ルークス〉を開き、クエストの実績を確認する。


 1番最後に受けた(カツオ)獲りクエスト。通称〈カツクエ〉はクリア済と書かれていた。


「よかったー。」


 カツクエは17時までに報告しなければいけないルールがあり、その時刻を過ぎると〈失敗〉になる。


 カツクエは何度失敗しても大丈夫だが、クエストによっては降格や禁止、違約金の支払いなんてのもあるらしい。


 〈カツクエ〉が完了していたことに心から安堵。そこでふと疑問が浮かんだ。


((この世界には冒険者ギルドがあるんだ。しかもスマホで完結!))


 そんな疑問を否定するような((まぁ〜普通だよなぁ。今更驚くことでもないか。なんでそう思ったんだ?))と思い直し、優兄ともみかちゃんの方を見た。


 もみかちゃんはコロコロ変わる僕の表情がおかしかったのだろう。クスッと笑って、「むっくんまだ体調悪いんじゃない?なんか変だよ」と言ってきた。


「ん?そう?まぁ、そうかも」


 曖昧な返答をすると、もみかちゃんは心配そうな顔を一瞬して笑う。

 そこに優兄が「まぁ今日はご飯食べてさっさと寝なよっ!」と言って立ち上がった。


「また明日!」


「おう!」


 優兄と言葉を交わし、お礼を言おうともみかちゃんを見る。


和多志(わたし)も! 

 和多志(わたし)もやりたい! クエ」


 今まで一緒にクエストをやったことがない。

 意外な発言に優兄と顔を見合わせ、優兄が代表して「いいよ! 一緒にやろ」と答えた。


「いいの? ほんと? やったぁ!!」


 不安そうな表情から一変。笑顔でそう言うもみかちゃんは、さらに表情を一変させて何か考えている。


「えっと、、、もう一人誘っていい?」


 また不安そうな表情でそんなことを言う。


 優兄は迷っている表情で僕を見るので、「良いんじゃない?」と答えると、


「まぁ、いいか。いいよ!」


 優兄もそう言って賛同してくれた。


 それから玄関で少し話し合い、集合時間やクエスト内容はパティチャで決めることになった。




 パティチャとはパーティーチャットの略称で、冒険者ギルドアプリで使用できる機能の一つである。友達同士のフレチャ機能もあるが、パティチャならではの機能が多数あり、パーティーを組んでクエストを受ける場合、必ずと言って良いほど使われる機能がパティチャである。


 そのパティチャには以下の機能がある。


 ・チャットや通話、ビデオ通話ができる。通話は、相手が電話に出る動作を省いて繋がる〈即通〉機能も選べる


 ・画面に〈クエスト一覧を表示/クリア報酬の表示/物品貸出返却・売買/スキル確認〉などを表示し、画面共有や画面専有ができる。

 それにより、お互いのスキルなどの情報を見合うこともできる。


 ・物品貸出費用や物品購入費用を共同で出し合うことができる。


 ・冒険者に支給された足首装着型のウェアラブル機器から心拍数などを読み取って、パーティーメンバーの状態を表示することができる。

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