31話 鱒(ます)クエ場にて
|鱒クエ場の近くまでやってきたとき、スマホの通知音が鳴った。
今度は僕のも。しかも連続で。
追加情報かな?と思いながらスマホの通知を見ると〈緊急クエスト2/3/4/5〉と書かれていた。
「ちょ。なんかヤバそう! 確認しよ!」
優兄の掛け声で民家の屋根下へ移動し、内容を確認する。
詳細2。
倒木により養駝場の小屋が破壊。
ダチョウが巻き込まれた。さらに数頭が脱走。その数は増え続けている模様。
緊急クエスト
・Bランク。
倒木の除去。脱走したダチョウの捕獲。
(対象。討伐系ランクC 1名以上)
優遇 スキル〈麻酔銃〉所持者
ダチョウの手当
(対象。支援系ランクB 1名以上)
・Cランク。
脱走したダチョウの捕獲。
(対象。討伐系ランクC 1名以上)
優遇 スキル〈麻酔銃〉所持者
無事な小屋へダチョウの移動。
必須条件
パーティーメンバー三人人以上。
詳細3。
一部地域で停電が発生。
遊泳養殖場(大型魚)の防水フィルターにより、女の子4人が水槽内に閉じ込められた模様。手動操作により開閉の上で、救助されたし。
緊急クエスト
・Dランク。
設備担当者の警護。
フィルターの開閉。および救助。
必須条件
パーティーメンバー二人以上。
詳細4。
一部地域で停電が発生。
遊泳養殖場(小型魚)の防水フィルターにより、男の子6人、女の子3人、男性2人、女性1人が水槽内に閉じ込められた模様。手動操作により開閉の上で、救助されたし。
緊急クエスト
・Dランク。
設備担当者の警護。
フィルターの開閉。および救助。
必須条件
パーティーメンバー二人以上。
詳細5。
生産系クエスト〈植林〉中の男性が斜面で転落。
頭を強打の上、意識不明の重体。
二人パーティーで参加していた模様。
緊急クエスト
・Bランククエスト。
男性の処置。および救助。
必須条件
パーティーメンバー三人以上。
登山靴装備(貸出可)
「マジでやばいじゃん!」
「どーする? もみじ」
「んー。隼人君さがそ?
達成報告まだだし」
「そうね! 受けたモノからクリアしよ。」
優兄は任せるといった感じで黙っており、僕はもみかちゃんに尋ねた。
もみかちゃんの返答に美騎姉も賛同する。
「よし。そうしよう!
このまま鱒クエ場に行って隼人君を探す。」
優兄の言葉に頷き合い、進み始めた。
鱒クエ場につくと、何組かのパーティーがいた。
そこには隼人君と同じパーティーだという教官とメンバーもいて、
「協力、感謝する。申し訳ない。」
と言いながら、知っている限りの情報を教えてくれた。
曰く(いわく)、スマホは部屋に置いてあったこと、
メンバーの中で一番魚が捕れなかったこと、
それどころか一度も捕れたことがなく、悔しがっていたこと、
過去にも何回か誰にも言わず練習していたことを聞いた。
「こんな大事になっているなんて、知らないかもね。」
話を聞いた美騎姉はそう呟く。
そうかもなー。と思いつつ、魚捕りの悔しい記憶は僕にもあったから、隼人君の気持ちも理解できた。
だからもしかしたら・・・という予想が浮かぶ。
鱒捕りと天子捕りが魚捕り系のクエストでもっともランクが低く、初心者の登竜門となっている。
しかし素早い動きで逃げること、
波打つ水面で魚が見にくいこと、
水面から見たときと水中とでは魚の位置に違いがあることから、初心者にとってかなり難易度が高かった。
さらに電撃モリの使い方には慣れていないし、6歳の身体には大きいし、、、
僕と奏騎も苦戦しながら、どっちが先に魚を捕るか張り合ったっけ。
結果は奏騎の勝ちで。
「コツ、教えよっか。」
そんなことを言いながらニヤニヤする奏騎に対抗心を燃やして、必死で捕り方を考えた。
そのとき見つけた糸口が、((ところで、どこから電撃が出る?))という疑問だったな。
電撃が走ると手に独特な振動を感じるらしい。
魚に何度も電撃モリを当てたが、その振動が起きず、魚の動きが遅くならなかった。
だから、そんな疑問が湧いた。
そこで、水の入った空の養殖場で石や水草に向けて電撃モリを突く練習を思いついた。
理由は〈水中でのみ使うこと〉、〈最小の電流電圧設定で使うこと〉と言われていたから。
その練習で、電撃モリの握り方と電撃の当て方、電撃が出る位置を確認したな。
そのことを思い出し、「空の養殖場にいるかもしれない!」と優兄たちに告げ、移動する。
大小様々な生け簀で育てられている魚を無視し、水深が浅くて魚のいない養殖場を探す。
すると、屋内養殖場で電撃モリを持って歩く少年を見つけた。
「隼人君?」
「え!? そうだけど、お兄さん誰?」
「あー。 えっと―――」
緊急クエストとして「隼人のことを多くの人が探しているよ」と、スマホの緊急クエストを見せながら伝えると、驚き慌てる隼人。
だが、少し経つと落ち着き「ありがとうございました。仲間のとこに行きます。」と言って僕たちとともに先程までいた場所に戻ることになった。




