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3話 異変

 シャワーを浴びながら、さっき見た夢を思い出す。


((あずきちゃん可愛かったな。やっぱり死んだって嘘で、どこかで生きてるんじゃないかな。


 夢の続き、気になるな。あの後どうなったんだろう・・・。夢の中とはいえ助けられてたらいいなぁ))


 そんなことを思いながら着替えや朝食などを終えると、いつもより5分早く仕事へ行く準備ができた。


 何気なくスマホの通知を確認。

 すると、学生時代からの友人である直樹君からチャットが来ていた。


 内容は〈仕事でそっちへ行く。明後日の昼に行く予定が明日の夜になった。ホテルが予約できていないから泊めてくれないか〉というものだった。


 今までにも何度か泊まりに来ているし、半年ぶりに会えるのが楽しみなので、快く〈いいよ〉と返信する。

 そのままスマホをポケットに入れて家を出た。



 昼休憩。

いつものように社食でご飯を食べてお昼寝。愛用の座布団代わりのクッションを枕にして目を閉じる。


「ちょっと早いけど、準備するか!」


「はい!!」


 初めて聞く声。いや、聴き慣れた声に思わず反応する。

 夢ではない。次の会議の準備があるため、先輩が俺に声をかけたのだ。




 いまは夢の狭間といった感じだったが、いつもは二度寝やお昼寝などのちょっとした睡眠でも夢を見る。


 その夢で色んな世界へ行った。

例えば、生き別れや死に別れた人と過ごす過去や未来の並行世界、空を飛んだり、謎な武器で戦う異世界、大型バスを運転するなどの誰か別の人になった現代風の世界――――。


 もちろん、楽しい夢ばかりではなく、金縛りにあって動けない夢や身体を思うように動かせず、ぎこちなく必死に走る夢も見た。


 内容はすぐに忘れてしまうことが多い。

ただ〈夢だと自覚しながら夢の世界を生きていた〉という認識が残る夢は1割くらいある。


 いわゆる〈明晰夢〉という夢をよく見るのだ。






 偉い人が出席する会議は13時から5時間かけて行われ、会議室の片付けをして業務終了。


 ポケットからスマホを取り出して通知を見ると直樹君からチャットが来ていた。



〈着いたよー仕事終わった?〉といった内容だったので〈終わって今から帰る。飯どこにする?〉と返信。

 すぐさま〈前話してたラーメン屋に行こうよ〉と返信が来きたので〈いいよー〉と返して会社を出る。



 家につくと直樹君と見知らぬ青年がいた。


「わりー後輩も泊めてやってくれね?」


「んー、いいよ! 前話してた後輩君?」


「あぁ、そうそう!」


「あーね。じゃ、ラーメン食べに行こうか」


 後輩君は無言のまま二人で会話を進め、ラーメン屋へ。


 ラーメンは二郎系で、ガッツリこってり美味い。

 後輩君の自己紹介や軽い仕事の話をしながら食べ、一度家に寄ってから近くの公衆浴場に向かう。


 風呂の後は家に戻り、寝る場所を決め、雑談しながら眠りについた。


ーーーーー

ーーー


「*************」


 僕は同い年くらいの少年と歩いていた。


 知らない人・・・いや、とてもよく知っている人だ。

 ボーッとしていたことに気づいたのだろう。少年は「おーい、聞いてる?」と呼びかけてきた。


「あーごめん。なに? なんて言ったの?」


 そう聞き返すと、またか〜といった感じで「今日は負けないからな!って言ったんだ。」と勇ましい顔をしながら、宣戦布告のような発言をした。

 その仕草と水着の格好を見て思い出す。


((あ!魚捕りクエストを受けたんだ))


 よく分かっていないが、川から取水して何か混ぜることで、陸上で海の生き物も養殖できるようになったらしい。

 いくつもある池で色んな魚や海老や蟹などが育てられている。そこでは魚を網や竿で捕まえることは稀で、クエストを発注して必要な量の魚介類を捕らえている。

 その一つのクエストに優兄(ゆうにー)と一緒にこれから挑むのだった。


 獲物は(カツオ)。数は二人で10匹。制限時間は15時まで。

 それが僕らが受けたクエストの内容だ。

 まぁ、何度もクリアしたクエストなので余裕なのだが・・・


 真夏へ向けてまっしぐらと言うような夏日。

 水が気持ち良い温度と天気のため、他にもクエストを受けて魚捕りをやっている人たちが何人もいた。


 もちろん、遊ぶために来てもOKな場所である。水遊びをしている人も大勢いた。



 目的の池に到着したのだろう。優兄は軽く腕や足を振って準備運動を始めた。

 僕も同じように身体を動かして準備運動を行う。


「さて、行くか!」


「うん!!」


 優兄は僕より一つ年上。体格も僕よりガッシリしている。だが泳ぎに関しては自慢ではないが僕の方が上手いと思う。そして、獲物を狩る腕前も・・・


 どの(カツオ)でも良い訳ではない。

 大きさが一定以上ではないと(しめ)てはいけないルールがある。だから獲物を見定めて一気に潜る。


 狙った獲物がどっちに泳ぐか予測し、電撃を出す機能が先端についたモリを右手で突きだす。

 手応えを感じるとともに動きが鈍ったカツオを目で捉え、(カツオ)のえらに左手を入れる。

 (カツオ)の抵抗を無視して水面まで全力で泳ぎ、えらに入れた左手を極力水面から出すような姿勢で平泳ぎをしながら査定場へ向かう。


 これが一連の魚捕り。


 計量をクリアして()()担当のお兄さんに(カツオ)を預け、二匹目の狩りに向かう。

 ちょうど優兄も査定場へ向かう姿が見えた。


 手を振って再び池に入る。

 悔しそうな顔をする優兄を想像しつつ、再び集中して獲物を定める。


 そんなこんなで10匹捕り終えた。

 結果は僕が7匹で優兄が3匹。


「また負けたー。」


 査定場でクエスト完了の手続きを行いながら優兄が悔しそうな声を漏らす。


「えへへ。」


 笑顔で続きを話そうとしたとき、何か音がした。


 ん?どこから聞こえた?と思った瞬間。

 心臓付近が強烈に熱く、苦しい気持ちが込み上げ、景色がぼやけ真っ暗な部屋と男の姿が見え――――意識が途絶えた。






「武咲!武咲!大丈夫か!!!」


 誰かが僕を呼んでいる。


「むっくん!ねぇ〜むっくん!!目を開けて!」

「医療班。体制準備!   散!!」

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