表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/90

21話 昼休憩

((まぁ、いっか))


 円形の練習場をグルっと見渡してから美騎姉ともみかちゃんを見てそう思った。


 ユルガンドのルールで〈武術〉が必須科目となったため、今回の参加者のほとんどがユルガンドの住人だと思われる。


 投擲の学習者は12人中9人が女子であり、僕を除く残り2名の男子とは面識がなかった。


 だからお昼ごはんをきっかけとして2人の男子に話しかけようと考えていたが、美騎姉(みきねー)ともみかちゃんが来てくれたため、3人で食べることにした。


 ちなみに優兄は、鈍器を学んでいるため別行動である。




 レジャーシートを広げて、雑談しながらお弁当を食べる。


((ところでいつまで休憩だろう))


 おにぎりとおかずを食べ終え、水筒のお茶を飲んでいるとふと気になり、周りの様子を伺いつつ、南雲先生を探した。


 雑木林(ぞうきばやし)を切り開いて作られた円形の練習場。

 そこに僕たちはいる。


 その真ん中付近に一本の木が生えており、木のそばに男子グループがいた。他のグループは女子のグループで、僕たちの右手に2グループ、左手に1グループの3グループに分かれて休憩している。

 南雲先生は木のそばにいる男子グループとお喋りしているようだ。


((まだ休憩は続きそうだな))


 なんとなく手裏剣を持ってそんなことを考えつつ、レジャーシートの上で女の子座りをしながらお弁当を食べるもみかちゃんと食べ終えて丸太の上に腰掛ける美騎姉たちの会話を聞いている。


「昼からも同じ練習かな。どう思う?美騎姉」


「んーさすがにずっとは飽きるかも。」


「たしかに!それに手裏剣もボーラも重くないけど、何度も投げると筋肉痛になっちゃうよ。すでにちょっと痛いし。。。」


「あら。私はまだ平気かな。」


 会話に合わせて、


((僕もまだ平気かなー。))


 と自分の腕の調子を気にする。

 そこへ


「君たちは男女混合か。普段もパーティーを組んでいるのかな?」


 南雲先生が僕たちにそう声をかけながらやってきた。


「「はい。」」


「「そうです。もう1人いますが」」


 各々が答えると、南雲先生は豪快(ごうかい)に笑う。


「珍しいねー!

 連携、期待してるよ!!


 昼からは三十分ほど午前と同じ練習をして、採取や狩りへ行くから!そのつもりで頑張ってな!」


 嬉しそうにそう言ってから、じゃ!とでも言いたそうなポーズをしつつ、右手にいる女子グループの方へ歩いていった。


「たしかに混合は私たちだけだね!

 みんなパーティーなのかな?」


「どうだろう。

 ところで、知り合いいる?この中に」


「うん。いるよー。あまり仲良く無いけど・・・。

 あの(右の女子)グループは同い年が2人で2個上が1人の3人パーティーだね。


 他はたぶん知らないなー。みんな年上っぽいね。」


「そうね。左(の2人の女子グループ)は私と同い年だと思う。

 最近、仲良くなった〈いろはちゃん〉がいるからたぶん合ってる。」


 そんな感じでお互いの情報交換が行われ、男子グループともう一つの女子グループは美騎姉より年上だろうということだけ分かった。


 10歳から15歳のメンバーが集まっているから僕より年下が居ないことは分かっていたので、予想は間違っていないだろう。


 まだ食事中のもみかちゃんはデザートのゼリーを食べながら


「狩りかー。グループ単位かな?

 優兄が居ないの初めてだね!あ、むっくんは〈武術〉学習歴長いよね?」


 と尋ねてきた。


「どうだろう。グループだと先生が見れないから違うんじゃない?〈武術〉歴は2年くらいかな。奏騎(そうき)()って少し経ったときに始めたから・・・」


 その言葉にもみかちゃんはハッとした表情をして、すぐに悲しげで寂しげな表情に変わって黙り込んだ。


「えっと。。。触れない方がいい話?」


 その様子を不思議そうに見ていた美騎姉は、小さめの声で呟くように言った。


「いや。いいよ。。。奏騎(そうき)は僕の兄なんだ。双子のね。。。死んじゃったけど。。。


 〈一本木殺人事件〉って聞いたことない?」


 ユルガンドの住人なら誰もが知っている出来事だが、美騎姉は事件の後に引っ越してきたため名前程度しか知らなかったらしい。


 悲しい出来事である。


 好き(この)んで話す人はいないから知らなくても不思議ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ