20話 手裏剣とボーラ
体術/鈍器/投擲の各グループ単位で移動を開始。
僕たちは雑木林を切り開いて作られた円形の練習場までやってきた。ここで投擲の練習をするのだろう。
地面の草は踏みならされており、人の往来の多さを物語っている。
この練習場は、木と木の間に縄が張られ、木を薄く割った的がいくつも設置されていた。
真ん中付近には一本の広葉樹が生えており、程よい木陰を作り出している。
その木のそばで教官の男性が立ち止まり、後ろを振り返って話し始めた。
「えー。南に雲と書いて〈なぐも〉と読む。
先に行っておくが、俺は対人の訓練を受けたわけではない。
ただ、討伐系のクエストや小動物の捕獲などで投擲道具を使っていてな。それで教えることになった。
今から手裏剣とボーラを1つずつ配る。
投げ方だが・・・まずは教えない。各々が自力で調べたり投げてみてくれ。」
南雲と名乗る先生が手裏剣とボーラと呼ぶ道具をカバンから出して、みんなに見えるよう両手を上げながら説明する。
説明を終えると、近い人から順番に道具を配りつつ、投擲する場所を指示していく。
僕も手裏剣とボーラを受け取り、指示された場所まで歩いた。
受け取った手裏剣は手のひらより少し大きい風車型で黄色に着色されており、ボーラは3つに分かれた縄の先に拳より少し小さめの錘が付いて赤色に着色されていた。
「これで全員による円ができた。
そこから円の外に向かって投げてくれ。
投げる場所だが、できる限り木の根元を狙うといい。拾うのが楽だからな。
目立つように黄色や赤で着色してあるが、失くさないとも限らない。
予備はそんなに無いから気に留めてほしい。」
南雲先生はそう言いながら手裏剣を顔の横あたりで構え、言い終わると腕を振って投げた。
手裏剣は目で終えるギリギリの速度で飛んでいき、20メートルほど先にある木の根元へしっかり刺さった。
((ほぉー。あーやって投げるのか))
南雲先生はそれ以上の説明をする気が無いようで木の根本まで歩いていき、地面に座る。
その姿で悟ったらしく、1人また1人とスマホで調べ始めたり、木の低い位置をめがけて投げ始めた。
僕は一度だけ手裏剣とボーラを投げてから、投げ方が分からないボーラをネットで調べることにした。
調べたことでなんとなく投げ方が分かり、コツを掴めてきたかなと感じた頃。
「各自、昼飯にしていいぞぉー。あまり遠くへ行かないように!」
スマホで時刻を確認しながら、南雲先生がお昼を知らせてくれた。
特にお腹が空いていなかったから、聞いて聞かずで練習していると、
「むっくん、どお? 投げれるようになった?」
もみかちゃんが僕に尋ねながら、お弁当らしき物を持って近寄ってくる。
「んー。ボーラがまだかな。木の枝をめがけて投げても、違う方に行っちゃったり絡ませられなかったりだね」
もみかちゃんの質問に答えながら、ボーラを木の的に向けてフリスピーのサイドスローのような投げ方で投げる。
案の定、ボーラは的から右に1メートル位ずれて飛んでいき、落ちた。
「難しいよねー。私はボーラより手裏剣の方が苦手かも。
練習より探す時間の方が長いよ。」
投げた手裏剣とボーラを拾うため、的に向かって歩きながらもみかちゃんの話を聞いていると小走りで美騎姉もやってくる。
「おつかれー!なかなか面白いね!
手裏剣もボーラも!!」
まだまだやる気満々な雰囲気だ。
僕は頷いて返し、もみかちゃんは、
「だね!でも、私はもう腕が少しだるいよ」
と言いながら左腕をさすった。




