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『極大繁茂』

「これで一先ずは安心、かしら」

「だといいんだが……」


 最大の危機を乗り越えられたという気持ちを浮かべ、船の中で一息つくサヤの言葉に、ケイスケさんは不安を残した感じに頷く。息を整えるほどに時間が経っていること、先程まで直面していた緊張状態が今なお続いていたこと、その原因たる相手は今も船の上を飛んでいることが、安心しきれない理由だろう。


 かくいう私も気になっている。イグノーツのことだから無事だろうというのは考えているが、あの魔物を相手にどう戦うつもりなのか、それを知りたいという気持ちがあった。ここでただジッと嵐が過ぎるのを待つことなんて出来ない。


「私、ちょっと確認してくる」


 せめて戦いの様子だけでも見ておきたい。そう思った私は、船内から外が見渡せる場所を探すため走り出した。


 前回乗った記憶から、階段やエレベーターの場所、どのデッキにどういう空間があるかはざっと頭に入っている。そこから見晴らしの良いところへ、今いる場所からどう行くか。記憶よりそれを思い出させ、上部デッキへと繋がる階段を上る。


(一番いいのは最上階か船前後にある屋外エリアだけど、外に出たら魔物に狙われる。それに出るなって言われたばかりだし)


 階段を上がっている最中、外で爆発音らしきものが聞こえてきた。方向から、イグノーツが戦っている場所を把握する。


(最上階から……そこで戦っているの?)


 音の発生源に近づくにつれ、空気の震えが肌を刺激する。

 強まっていく振動から伝わる戦闘の進行。時折挟まる魔物の鳴き声。

 一切聞こえてこない彼の音。


(外にいるんだよね……?)


 いい感じに見える場所がなく最上階まで来てしまった私は、ドアの前で立ち止まった。

 ドアの先は露天デッキ。ここを通れば、隠すものは何もない屋上に出られる。そこにはきっとイグノーツもいる。あの魔物も飛んでいるだろう。これ以上先には行けない。


(仕方ない、地図機能で——)


 流石にここでドアを開けてしまうことは出来ず、私は少し階段を下りてから本を開き、確認しようとした。しかしなぜか地図機能が使えず、ページに何も表示されない。


(動かない? どういうこと……まさか故障?)


 うんともすんとも言わない本に、機械ではないが故障を疑う。一方でそんな訳ないだろと思いながら命令を繰り返すが、白紙のページには何も浮かんでこない。念のためパラパラっと捲りページを変えて試してみるものの、結果は同じだった。


(もう、どうしてこんな時に!)


 心の中で叫ぶ。まさかこんな状況で使えなくなるなんて。

 理由は不明だが、これは恐らく故障ではない。もし何らかの原因で故障したとするなら、イグノーツにも影響が出ているはずだ。彼はこの本の機能で現出しているらしいので、その機能が使えなくなれば煽りを受けることが予想される。そう考えると、今も戦っている音が聞こえることが否定材料だ。


(もしかしたら平気なようになってる可能性はあるけれど……どっちにしろ確認しなきゃ。でもどうやって? イグノーツさんに聞くのは……戦闘中だしやめた方がいいと思うから、他に知ってそうなのは……ツェレンとアーノルド。でもツェレンちゃんは本の中で、アーノルドさんはどこ行ったか分からない。——無理じゃん!)


 考えまくった結果無理だという結論が出て、一旦棚上げにせざるを得なくなった私は外の方を窺った。

 イグノーツと魔物の立てる音によって、壁越しに揺れを感じられるほど音が鳴っていたが、今は聞こえていた音が止み静かになっている。ドア越しに響いていた爆発音、魔物の声、それが船近くを通るときに流れる突発的な風などが聞こえない。一体何が起こっているのか想像する私。


 普通なら戦闘音が聞こえないというのは、戦いが終わったことを示すものだ。ならどちらが勝ったか。もしイグノーツが勝ったなら、当然音はしなくなる。そして襲ってくる魔物がいなくなったので、空を飛ぶ音も聞こえることはない。

 逆に魔物側が勝っても、音は消える。ただしそれは戦いが終わったら去るような時だ。終わっても留まっていれば羽ばたく音が聞こえるだろうし、あの魔物が一人倒したくらいで引き返すとも思えない。

 あとどちらでもないケースとして、イグノーツから受けたダメージから魔物が引いていく場合。これでも戦闘音はしなくなる。この中で、状況と照らし合わせると考えられるものは2つ。


 出てみることにした私は、ドアの前まで戻ってくると、ドア越しに外の様子を窺って念入りに戦闘が終わっているのを確認後、扉を開けた。周りを見回して魔物の姿がないことも確認しながら、船の中央に陣取るように立つイグノーツを見つけ、彼のところへ駆け出す。


「イグノーツさん!」


 私の声に気付いて振り返った彼。それで無事を確信し、ホッと胸を撫で下ろした。


「——まだ出てはいけません!」


 だから、次の瞬間イグノーツが焦った顔で声を張り上げた時に、「え?」と思わず立ち止まってしまった。

 直後、爆ぜるような音とともに背後から衝撃が襲い、私の身体は風圧に持ち上がり前に倒れる。そしてギャリっという、何かが屋上の床を引っ掻く音がした。


(まさか——!?)


 背後を横切る巨大な影が見え、急いで立ち上がった私は影の向かった方を目で追う。まさか、なぜ、なんでと驚きながら。しかし通り過ぎていったのは紛れもない、あの鳥の魔物。それが船尾側へと飛んでいき、空中で大きく宙返りするとこちらへ戻ってくる。その間にイグノーツが手を伸ばす。


「早くこちらへ!」


 そこにいてはダメだという声にハッとすると、私はすぐさま走り出した。飛んできた魔物は私が屋上に現れた途端、狙いをこちらに変えたかのように滑空してくるが、それを牽制するかの如くイグノーツの魔法が放たれる。再び、鳥のいる場所で爆発が起こり、響き渡る強烈な衝撃と爆風に身体を覆う衝撃吸収の魔法が反応した。ふと疑問に感じる。私は今それを発動していただろうか。


(————い、いまの……)


「大丈夫でしたか?」

「な、なんとか」


 手を掴み取った彼はぐっと自分の隣へ引っ張り、私の顔を見て確認した。

 こちらが無事なことを認めたイグノーツはふうと息を吐き、穏やかな表情を見せる。


「ごめんなさい。音がしなかったらてっきり、終わっているのかと思って……」

「あの本を使ってください。外の様子を見るならそちらの方が安全です」

「見ようとはしたよ? けど、こんな状態で」

「……これは」


 機能しない本を手渡すと、イグノーツは眉をピクリと動かし、無白のページをジッと見つめる。


「何か知ってるの?」

「この状態は、機能制限を受けた時のものです。本の機能を利用する権限を上位の権限を持つ方……【管理者】が実行していますね。うっすらとですが、文字が書かれてあります」

「うそ!? なんて書いてあるの?」


 私がお願いすると、イグノーツは書かれてある内容を読み上げる。


「【管理者】によって全【所有者】の権限が停止されています。現在ご利用出来ません……と」


 文章はきちんと分かるのに、その内容の理解を拒むほど、私は混乱しそうだった。

 管理者。たしかアーノルドが言っていた、この本……異世界災害収集録を管理出来る権限。所有者より上の権限だったか。誰だかは知らないけど既に存在すると聞いていたが、こんなタイミングでその文字を見ることになるなんて。


 なぜ? なんでこのタイミングで?

 文面から、管理者という相手に所有者の持つ権限が停止されていることは理解出来る。ということは何らかの理由で権限を停止させると決めたのだろう。だがその理由はなんなのか、まるで掴めない。


(私が使っていることに気付いたから? でも、それって一ヶ月以上前からだよね。その間見てもいなかったの? そんなことある?)


 推察しようと試みるも情報が全く足りず、いくら頭をフル回転させようと無駄だった。なにせ分かっている情報が今思い出したものだけなのだ。私はその管理者とやらへコンタクトが取れないか、または何らかの別の情報を引き出せないかをイグノーツに聞こうとする。


「イグノーツさん、あの……」

「待ってください。詳しい話はあとで……先程の魔物が」


 しかしそれは魔物によって遮られる形となった。

 イグノーツの攻撃を受けながら、あの魔物は地に足すら付けていなかったのである。ここまで何度も攻撃を受けたであろうはずなのに、その翼は未だ力を失っておらず、健在のように窺えた。


「まだ飛べるの!?」


 野生動物は痛みを我慢してある程度動き回れるとは聞いたことあるけれど、あれだけの魔法をぶつけられて今も平気そうに飛んでるなんて信じられないと、目を疑うような光景に驚いた。


「やはり、こちらの魔法を覚えていますね。使っている様子を見ただけで」


 魔物は船の遥か上を通りすぎると、口元から何かを生み出し、こっち目掛け放つ。太陽の光もあってそれがなんだかすぐ視認するのは難しかった。けれどそれがこちらに近づくにつれ、私はその正体が光線を放つ魔法であると気付く。


「あれは私が使った——!?」


 真上から降ってくるそれを避ける術はなく、衝撃吸収魔法を張って防御する。続いてイグノーツが魔物へ攻撃を当てる。けれどダメージを受けた様子は見られない。まるで私達が使った魔法のように、一切の衝撃が届いていないみたいに。


「……ねえまさかあれって」

「まあ、そういうことでしょう」

「ど、どうするの!?」


 私はイグノーツに問いかける。魔物のしたことが衝撃吸収魔法(そういうこと)だとするなら、殆どの魔法が通用しないどころか、速度の出る飛び道具全般が無効化されたも同然だ。しかも相手は飛んでおり攻撃手段が飛び道具にほぼ限られる。


 焦る私だが、何をされたか予想がつき、にも拘らず落ち着いた様しか見せない彼。こちらの気持ちに気付いているだろうイグノーツは、そのままニコリと微笑んだ。


「対処は可能です。見た魔法が覚えられるといっても、見ていない魔法は覚えられない。当然向こうは警戒するでしょう。1発で仕留める必要はありますが……」

「で、出来るんだよね?」

「勿論です」


 そう言うと彼は左手を伸ばし、魔物に向ける。すると魔物のいるところへ連続して爆発が起こり、あっという間に爆焔に包まれた。羽ばたいて逃げる魔物だが、その先でも同様に爆発。また回避しようとして爆発……を繰り返す。もはや自分から爆発に突っ込んでいるようだと錯覚しそうな光景に息を呑んだ。


(す、すごい)


 魔法の種類は分からなかったが、魔法が全て命中しているのはハッキリ分かった。攻撃の軌跡が見えないほど速く、相手に回避する暇すら与えていない。恐らくは放射系か活性系のどちらか。魔物側の魔法により傷を付けるには至ってないものの、相当鬱陶しかったらしく魔物は声を上げ反撃した。


 次々と降り注ぐ光線。私が使うものより量も速さも上のそれが、海面にドスドスと突き刺さっていく。水の奥深くまで進んで勢い衰えぬ光の矢、それらが船体に当たっては船を覆う魔法が煌めいて、船を守る。直後にイグノーツの反撃によって魔物が爆発すると途絶えるが、やはりダメージを受けた感じは見られない。


(あの魔法をどうにかしないと! でもどうやって——)


 改めて自分が使っていた魔法がいかに厄介かを認識した刹那、魔物の口がパカっと開く。そして次の瞬間、魔物の口から放たれたそれは紺碧色の渦となって私の方へ伸び、私達のいる場所へと襲いかかった。衝撃吸収の魔法が働く……が、全身に凄まじい風を感じていた。


(やばい!?)


 それはこの魔法にとって中途半端なエネルギーだったのだろう。魔法は発動していたが、これまで防いでくれた時より効果が弱かった。私の身体は渦の起こす烈風によってふわっと持ち上がり、飛ばされようとする。その直後、イグノーツの右手が私の腰をガッチリと掴んだ。


「危ないですよ」


 彼はそのまま引き寄せ、飛ばされないようしっかり押さえる。必然として密着する体勢になる私だが、それに嫌という気持ちは湧かなかった。


「少しの間辛抱してください」


 優しげな彼の声。見上げた私の目に映ったのは、いつもと同じ顔。戦っている最中だというのになんとも涼しげで、柔らかな笑顔。強風の中心にあっても一歩も動かず、さも些事であるかの如き姿勢。それに、言葉にならない気持ちが込み上げてくる。


 実力が違う。私なんか比べ物にもならない。

 魔法を使う者としての実力。分かりきっていたはずの経験の差。ちょっとやそっとのことでは揺るぎすらしない精神。戦いの中で周りへ気を配るのを欠かさない判断力と、それを可能とする余裕の大きさ。全部、負けている。


(すごいけど…………悔しい)


 惨めだ。彼の隣では、私はまるで子供だった。

 大人である前に女性、女性である前に子供。こうして傍にいると、彼が私を庇護すべき相手としか思っていないように感じられる。その目は私をすくすくと育つ子を見守るように見ているんじゃないかと思えてくる。腰に回る手も、純粋に私が飛ばされてしまわないようにする気遣いで、そこには何の邪意も感じられず、それをこの距離で、痛いほど感じた。


「どうやら逃げるつもりみたいですね」


 空に何度目かの魔物の声が響いた頃。

 互いに傷を与えられず膠着状態にあった魔物が、反撃の魔法を受け吹き飛ぶ。魔法による防御が維持出来なくなり、ついにまともなダメージが入った。私にはそう見えたが、衝撃を利用して逃げるつもりだとイグノーツは述べる。


(逃げ出したの? 魔物が?)


 本当に? そう疑うような目で同じ方を見上げれば、魔物はこちらへ背を向け本当に逃げようとしていた。逃げてくれるのならそれに越したことはない。ただ魔物は危険だ。これで敵わないと理解してもう2度と襲ってこないのならいいけれど、あの学習能力である。逃げたあとに力を付け直してから襲ってくるようならば、逃がしてはいけない。


 どうするの、と彼の目を見つめた。魔物の飛ぶ方を見ていたイグノーツは視線に気付く。私の顔を見て優しくニコッと微笑み返すと、逃げていく魔物の鳥へ開いている手を伸ばす。


「あの魔法は遠くからの攻撃を防ぐのに有効ですが、エネルギーの相対差が大きいほど効果を発揮するという性質上、移動方向が同じ時ほど効果が弱まりやすい。なので……」


 説明を挟んだ後、イグノーツは手のひらより魔法を放った。

 それは三日月状の刃物のようであり、空から射す光に輪郭を黄色く輝かせ、魔物を追いかけるように飛んでいく。初めはビュンと素早く、次第に速度を落としていきながら、逃げる魔物の至近まで迫った時、縦に交差した。


「当たった?」


 離れた場所でのことなので肉眼で見づらく、魔法を使ったイグノーツに聞くと、彼は頷いて答える。


「ええ、掠めました。終わりですね」


 掠めたと言うように、魔物に入った傷はここからでは見えなかった。

 しかしそれは段々と広がっていくと、魔物の体を二つに切断していく。広がっていくヒビのように、それは割れていく。


 十秒と少しの時間の後。魔物は空中で真っ二つになった。

 力なく海へと落ちていき、視界から姿が見えなくなる。


(なんだか……)


 例え危険な魔物で人を襲ってくるといえど、あまりにも惨く、痛ましく思える死に様。そんな最期に私は少しの憐情を感じ、しかし胸に秘める。


「どうしましたか?」

「……ううん、なんでもない。これで、大丈夫なんだよね」


 強い生き物はその強さがゆえ、生半可なやり方では命に関わる傷を負わされる。残酷なほど優秀で、一方的とも思える方法が使われるのは、こちらの被害を抑えるためだ。例え倒せてもその結果犠牲者が増えるようなことがあっては良くない。都合の良い倒し方を選べる相手ではなかったのだ。彼にも、彼の使った魔法にも悪いところはない。そう考えることで納得させ、彼から一歩離れた。


「見える範囲において脅威となる魔物は退けました。数分の間は、魔物に襲われる心配はなくなるでしょう。私は船を動かすため中へ戻りますが、ツカサさんは?」

「私も戻るよ」


 極大繁茂とやらが起こるまでもう時間はない。万一ここに立ったままでいてまた魔物がやって来られても困る。私はイグノーツの後ろをついていく形で屋上デッキを去り、彼と途中で別れたあと、サヤ達のいる階に戻った。




 私達が乗り込んでから暫く経ち、上空にいた鳥の魔物もイグノーツに倒されたことで、接岸していた船が陸より離れ始める。船の巨体さゆえ動き出しは遅いものであったが、岸と平行であった船の向きはもう直角に近くなり、陸から離れるスピードも増していっている。


 その様子を空室であった個室の中から見ていると、段々と遠くなる陸地の方、船の船尾側に見える森と化した街の景色が、急速に動き出す。


(始まったんだ……)


 極大繁茂。イグノーツの本にそう記されていた魔力災害が、本当の姿を見せ始めた。


 逃げる時でも非常に早く成長していた樹木や雑草。それがその時の比ではない、学校の敷地内で見た巨大植物と同じほどの速度で成長を始める。雑草は数秒程度で3階ほどの高さまで巨大化し、木々に至ってはそれを悠に超えていく。その高さに並び立てる建物は近くにはない。10階はあるだろうマンションさえ、大きめに作られた模型の如く小さく見えた。


 下にあった家は巨大化する木に巻き込まれ持ち上げられるか、ページをめくるようにひっくり返され砕けていく。二つ以上の成長する木に挟まれ潰れていく家もあった。大きめの集合住宅など、頑丈に作られた建物も壊れていく。潰された建物の瓦礫や看板が、高層ビルより高い場所から降り注いでいた。


 逃げてきた魔物達でさえ例外ではない。地表へ広がっていた巨大な根に絡まれ、それに飲み込まれていく個体。枝に絡まれ身動きが取れず宙吊りとなった個体。生えてきた巨大な雑草に全身を串刺しにされる個体。


 そんなものが街中どころか、窓から見える陸全体で起こっていた。







 船のブリッジ。そこより遠隔で魔法具を動かしているイグノーツは、極大繁茂が発生したことを後方から伝わる揺れと音で知る。


(極大繁茂の発生に伴い、地球人類は大きく数を減らすでしょう。万象演算によって求められた想定被害地域は日本、中国、東南アジア、インドなど、魔力嵐が通過した・近くを通り過ぎた国々。地球人口の半分近くはこれで削られるでしょうね)


 周囲では、災害の規模とその異様な光景に三者三様な反応が聞こえる。ある者は愕然とした様子で陸を見て、ある者はそれが信じがたかったのか引き攣った笑みを浮かべ、ある者は焦点の定まらぬ目で俯いてた。船内はきっとどよめいていることだろうと思うイグノーツ。起こることを分かっていたのは自身を含めごく一部のみだった。多くは半信半疑か、信じてすらいなかっただろう。そう理解していた。


(人命救助のために船を動かしてもらえたのは有り難いことですが、いずれはお別れしなくてはならない人々。どうしますかね……学校の時のように勝手に自滅してもらえるのが一番良いのですけれど)


 陸より船を遠ざけながら、今後のことを考える。


(まあ、いずれ何とかなるでしょう。しかしどこへ向かいましょうか……)


 そして船の行く先に思いを馳せつつ、魔法具を操作するのだった。

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