魔物との戦い(2)
屋根の上を走りながら魔物が行った方へ向かう私。近づくにつれ激しい衝突音が聞こえてくる。
音が発せられている地点まで到着すると、魔物は1階へ降りたケイスケさんのいるところめがけ攻撃していた。しかし建物の間にある狭いスペースへ逃げていた彼には当たらず、助走をつけられない入り組んだ脇道へ来てしまった魔物は苦労している様子。周りにケイスケさんが発動したであろう障壁もあり、余計動きにくそうにしていた。
私は魔物の攻撃が続いていたことから彼が生きていると確信し、不安が和らぐ。とはいえ左右の建物は突進により骨組みが歪み出しており、依然として危険な状況であることに変わらない。急いでこちらへ注意を向けなければと、私は切断系の魔法を発動して真後ろから魔物へ放った。
「ボオオオォォォォォオオ!!」
命中すると魔物は悍ましい声を上げ怯んだ。背中にざっくりと傷が開き、ドクドクと真っ赤な血が傷の形に沿って滲む。射角の関係で魔物の向こうにケイスケさんがいたから強すぎる切断系は使えなかったが、ちゃんと効いたようだ。魔物はすぐさまこちらへ振り返り、狙い撃ってきた私を睨み跳躍する。
(こっちへ来い!)
私のいたところへ着地した魔物はこちらを狙い追いかけてくる。それを振り返って確認しつつ、走って逃げる。だがすぐに距離が縮まってきて真後ろまで迫られたと同時に、魔物は頭を振って突き上げてきた。回避が間に合わなかった私はモロに喰らって吹き飛ばされるが、衝撃吸収魔法によりダメージはない。
(また離される!?)
先程と同じ流れであるように感じた私は、再びケイスケさんの方へ向かい出す魔物を見て焦り、着地するとすぐ追いかける。土煙を上げながら周囲を壊しまくる様子が遠くからでも把握出来、もっと速くと自分を急かした。やがてそこから出ていた音がなくなると、まさかという猛烈な不安が過り出す。
周囲を舞う煙が晴れない中、私はケイスケさんのいる場所へ一直線に行き、その場へ辿り着くと彼の状態を確認しようとした。
「ケイスケさん!」
「ツカサさん!? ——っ、危ない後ろ!!」
彼の声がしたかと思えば、焦ったような目で私の後方を見て叫ぶのが見えた。そして直後、背後から襲ってきた衝撃と共に私はまたも吹き飛ばされ、遠くへと落ちる。一度に連続して起こったことへ脳の処理が追いつかず、混乱する私。しかし自分を吹き飛ばしてきたものの姿を見ると、それが魔物であったと理解して何が起きたのかを察した。
「ボオォォォ……」
こちらが起き上がろうとしている間、魔物はケイスケさんに目をくれることもせず、まっすぐにこちらを見据えてくる。
(あの動きの狙いは……私だったんだ)
魔物は私と対峙してから、私がずっとケイスケさんを守るように動いていたのを見ていた。魔力の動きや攻撃への防御の動きを見て、私達のうちより脅威度が高い方として。その時点では攻撃が通りそうなケイスケさんを狙ったかもしれない。だがケイスケさんを狙えば狙うほど、私の動きをコントロール出来ると感じたのだろう。
もし強そうな相手の動きを自分の望んだ方向へ誘導出来るなら、そのまま罠にかけることも可能だ。だったら私を罠にかけて殺そうとしても不思議ではない。最も、鹿が魔化した魔物にそれを考える知能があるかは疑わしいところであるが、現にこうして私を狙った行動をしている以上、その可能性を感じるのもおかしなことじゃない。
そもそも、魔物の知能は魔化する前と同じであるのか。鹿がもし草食動物ではなく肉食動物だったら、狼のような動きを取れるのか。そういう可能性を検証してみて、実は可能だったら?
(……考えたくないなあ)
群れで暮らす草食動物の群れがある日突然肉食に目覚めました、なんてこと。そんな突拍子もないことを考える学者がどれほどいるのか。
なんにせよ、こういう先入観はもう捨てた方がいいだろう。相手が草食動物の鹿だったからといって、現在とても凶暴な魔物になっている以上、元の特徴をどれくらい継いでいるのかなんて知れたものじゃないのだ。私は魔力災害の中で多くの非常識を見てきた。常識をアップデートしていかないと、いつまでも非常識を受け入れられないまま、翻弄され続ける。
それでいいのか。また魔物に誰かが殺されてもいいのか。自分で自分に問いかけた後、決意を固める。
(魔物は、倒す)
私が立ち上がるのを見た魔物が後ろへ下がり始めた。また自分を追いかけさせて誘い込む気なのだろう。己から突進すれば罠にかかると学習し、私に追いかけさせればそうならないと学習した魔物である。こちらが魔法を使おうとすれば分かる以上、次は躱わせないように撃ち、一撃で倒す。
(あっちは私を最大の脅威と見ている。ケイスケさんの動きは警戒しているだろうけど、ちょっとは油断しているかも。ならそこが狙い目)
鹿の視界は非常に広く、ほぼ真後ろ以外に死角はない。だがそれゆえに人間のように両目で立体視出来る領域がずっと狭く、多くは片方の目だけで見ている。天敵の接近などは視界内で動く物体を探知することで認識するらしい。要するに周辺視野に当たる視界が広いということだが、これでは1人で死角からなど到底狙えない。最低でも2人いる。
私はこちらを誘導しようとする魔物の動きに応じるように見せ、ある程度ケイスケさんへ近づいたタイミングで心を読む魔法と心を読ませる魔法を使った。
『ケイスケさん、聞こえますか?』
『え、ツカサさん? 近くにいるの?』
『今、魔法で念話みたいに話せるようにしました。いきなりですみません。魔物を倒す上で話したいことがあるから、聞いてくれますか?』
魔物を倒す作戦について、その仔細をケイスケさんへ伝える。全てを聞いたケイスケさんの悩む心と、作戦の実現性やら成功率を考える思考が私へ伝わってきた。
『死角を突くってやり方は悪くないと思う。どんなに警戒心が優れた生き物でも感知出来ないものに気付くのは無理だし、死角っていうのはそういうものだからね。けど、だからこそ2人だけで死角を狙うのは難しいんじゃないかな』
『それはつまり、魔物側も死角に入られることを警戒しているってことですね?』
『ああ』
自らが見えない方向に何があるかなど分からない。生物というのは生まれながらにして死角を抱えているものだ。そして生死のやり取りをしてきた野生の動物にしてみれば、その死角が何をもたらすかなんて嫌というほど理解しているはず。だから2人だけで死角を突こうとすれば、当然のように警戒されて上手くいかないだろうとケイスケさんは伝えてくる。
『まして鹿の目で見える範囲は広いから、死角に当たる部分も相応に狭い。ほぼ一点を警戒すればいいなんて相手からは楽かもしれないよ。一度死角に入れても、首をちょっと振られたら視界に収まるんだから』
『でも、他に不意をつける方法が思いつかないんです』
ケイスケさんが述べるリスクは私も考えた。少し首を振られたら埋められるような死角など、不意を突くにはあまりにも厳しいのではないかと。だったら死角を突かないで戦おうとすればまだ攻撃が当たるのかと言えば、多分そうはならない。
イグノーツさんがしてみせたように対応出来ないタイミングで罠にかけるというのも手だけど、あれは私よりも戦いの経験があって慣れているだろう彼だからひょいと出来る技なのだ。私があれを真似するにはもっと練習して体に覚えさせないと。
『だったら、こういうのはどう?』
私の考えを読んだケイスケさんは、自分が考えた方法について詳しく話した。それを聞いた私は意外な内容に「え?」と目を丸くする。
『そ、そのやり方で上手くいくんですか? 確かに人で起こる現象だから、動物で起こらないとは限らないけど……』
『動きを誘導出来れば可能だと思う。俺とツカサさんが動きを合わせて、魔物が一直線に突進してくるように仕向けられれば。どうかな?』
『うーーん』
方法自体は決して悪くないどころか、死角を突くよりもやりやすいかもしれない。死角は見えないというだけで警戒しやすいが、彼の提案したそれは人間でも時たまやらかし事故の要因となる。そして、前にやった肉薄して行う倒し方よりはまだ安全だと思える。
勿論、相手が理想的な動きをしてくれればという前提になるが。でもこの方法なら……じゃあどうすればそういう動きをしてくれるかについて私は考え、一通り思考がまとまると、ケイスケさんに伝える。
『分かりました。それで行きます。ただ、確実に成功させるために専用の場を整えておきたいです』
『殺し間だね。分かった、それまでは何とか耐えるから、早速動こう』
『……はい。気をつけて』
本当は傍にいきたいが、魔物の見ている前で準備などしたら絶対に見抜かれてしまう。頷くしかない。
私はケイスケさんに魔物の相手を任せると、すぐ移動を始めた。魔物は既に視界外。建物の角へ見えて見えなくなっている。
使えそうな道として近くにある高架上の高速道路を選び、横方向に遮るものがない場所へ向かう。そこで私は自分の中のO系魔力へお願いをする。暫くして、すうっと体から抜けていく感覚があった。
(よし、あとは……)
『ツカサさん、立てこもっていた場所を破壊された。魔物が追いかけてくるから、なんとかそっちへ向かうよ』
『分かりました』
どうやらケイスケさんがいた建物が壊されてしまったようである。魔物はケイスケさんを追いかけながらこちらへ向かって来ているとのことだ。誘いに乗らなかった私がいつどこから攻撃してくるか警戒しているのか、逃げるケイスケさんを追う最中も慎重な動きで追跡しているらしい。
開かれたページの片方でケイスケさんの現在位置を追跡しつつ、もう片方のページに映像を映し出す。
(この機能って魔力で動いているんだよね? 魔物にはどう見えているんだろう?)
本に備わる諸々の機能が何を動力にしているか、実は聞いてない。けどこれを説明出来そうなものが現状魔力しかないので、多分魔力で動いていると思う。だが魔物はカメラ視点へ一切警戒を向けてこない。そのことにふと疑問に感じた私はケイスケさんにお願いをする。
『ケイスケさん、ちょっと調べたいことがあるので魔物に向かって魔法を撃ってもらえますか?』
『魔法ならなんでもいいのかい? じゃあ今からやるよ』
ケイスケさんが障壁系を雑に放って魔物の進路上に生やしていく。魔物はそれに従って進路を変えたりジャンプして跳び越えたりといった動きを見せる。いずれも魔法の発生前から予知したかのように避けていた。
(やっぱり魔力の動きは見えている。そして魔物は、ケイスケさんから出たやつを……)
ここまでのことで1つ考えていたことがある。魔物は魔力が見えている。それは間違いない。だけど、既にここには大量の魔力があるはずだ。極大繁茂の予兆に伴って、地中から溢れんばかりのM系魔力が漏れ出している。魔力が見えるから警戒するとなると、魔物は全方位を常に警戒していなければならないはず。
しかし魔物に全ての魔力を警戒するような様子はない。私達が魔法を使う際の魔力の動きだけを警戒している。もしやと思った。
(魔力は一般的に体の中にある。そして魔法を起こすとこに身体から出るって、学校で教わった。だったら、魔物からは私達が魔法を使う直前、魔力の肢を伸ばしているように見えるのかも。もし魔物がそれを見て魔法の予備動作かどうかを判断しているなら……)
それは間違いなく、この作戦の成否に関わる情報だろう。
やがて私の前方には、高速の入り口から走って上がってくるケイスケさんの姿が見えてきた。その後ろには彼を追いかけて来た魔物の姿もある。私の姿を見てもう周囲を警戒する必要がないと思ったか、見るからに追う速度が下がっていく。
(近づいてはこないか)
私が待ち伏せているように見えたからか、罠を警戒しているらしい。立ち止まると、その場からじっとこちらを見つめて動かなくなった。ケイスケさんがその間に私の方へ合流する。
「怪我はないですか?」
「大丈夫だよ。何度かはねられたけど、この通り傷一つない」
衝撃吸収の魔法を身体に発動しているから、自分に傷らしい傷は一つもないと示すケイスケさん。改めてこの魔法は凄いなと感じた。
「魔物だっけ。こっちへ来ないけど、どうする?」
「考えはあります。一緒に来てくれますか?」
罠を警戒する魔物にどうやって嵌めるか、正直私では中々思いつかなかった。そういうことを考える機会はまずなかったから。ゆえに成功するかはまだ確定でない。
「これからの行動で魔物に、この近くへ罠なんてないって思わせます。背水の陣ごっこです」
「ごっこか……なるほどね。ツカサさん、基本的な動きは付いていくだけでいいのかな」
「私と同じ方へ移動しながら、魔法を使ってください。とにかく、必死で逃げる感じで」
「分かった」
私達は魔物へと背を向けて走り出す。追いかけてくるのを確認すると、高速道路上を逃げながら私は切断系魔法を、彼は障壁系魔法を放って進路を妨害した。無誘導の攻撃なので魔物は鹿らしい横ステップでそれを回避し、生えてきた壁を跳躍で越える。
無論これで妨害は終わりじゃない。繰り返す。走って逃げながら何度も何度も。距離を詰められまいと抵抗する様を見せ、段々と状況を錯覚させていく。これは罠ではなく、必死に逃げているだけだと。
「ケイスケさん、次に合図を出したタイミングで、来た道を戻ります!」
「なるべく早く頼むよ!」
魔法を使いながら走っているため体力の消耗が激しいケイスケさんは、息を切らしながら言った。
罠を警戒していた魔物は次第に動きを貪欲にし、ぐんぐんとその圧倒的な速さで距離を縮めてくる。そして今にも足で蹴られるか頭突きを喰らうかという距離まで縮む寸前、私は叫ぶ。
「今!」
突然の方向転換に魔物は一瞬混乱したのか、そのまま同じ方向へ走り続けていた。その隙に逆走を始めた私達は魔物との距離を開けながら妨害の魔法を放つ。四足歩行の魔物は勢いが乗っていたこともあってか急には止まれず、かといって曲がろうにも道路幅の都合で高架下に落ちかねないことから、速度を落として曲がった。
「ボオオオォォォォォォォォオオオ!!」
魔物は怒りを思わせるような鳴き声を上げ、再びこちらを猛追し出す。
「2度は通用しないって叫んでいるみたいだね!!」
「そうですね!!」
ケイスケさんの言葉に私も同意した。多分もう一度同じことをやればすぐ対処してくるだろう。
脚の回転を速めてまた距離を詰めてくる魔物の動きから、凄まじい気迫を感じられる。
「ケイスケさん、そろそろ目的の地点です! このまま!」
私は例の地点へ着きそうなことを伝え、そのまま走るよう言った。
追いかけてくる魔物の方を振り返り、その駆ける速度を確認する。
(あとちょっと……!)
私達と魔物との距離数十メートルに対し、目的の地点までは数メートル。
こちらの一歩が1メートル進む間に、向こうの一歩はその何倍もの幅を進む。道路を叩く恐ろしい音が背後から迫ってきて、今にも踏み潰そうと脚を振り上げては前に向かう。魔物が悍ましい声を上げ、いま私達を踏み潰そうとしたその時——空を切り裂く音と同時に、鳴く声が止まった。
「避けて!」
避けるよう言ったが、ハッキリ言って間に合わない。私達は踏み潰される代わりに思いっきりその脚で蹴飛ばされ、恐らく数十メートルは転がった。蹴飛ばされた私達は水を切る石ころみたいにゴロゴロと跳ねたあと、段々と転がる。速度が落ちて衝撃吸収魔法の効果が減るにつれ、道路の凹凸による擦り傷が出来、その感覚が伝わってきた。
(いたた……)
「ツカサさん、大丈夫かい?」
「は、はい」
先に立ち上がったケイスケさんが私の傍へ寄ると、彼はホッと息を吐き安堵した表情を浮かべる。細かい傷は一杯あるが、致命傷になるようなものは負っていない。後で治さないとと思いつつ起き上がると、首から先を失い倒れた魔物の体を見つめた。
(本当に成功した……)
魔物を倒したのは、走る方向に対し真横から迫っていた4族の魔法だった。
魔物が一直線に私達を追いかけてきている時、同じ速度で直角に進路が交わるよう飛んでいたその切断系魔法は、そのまま進めば衝突するコースにあるがゆえに、魔物からは動いていないように見える。周辺視野では動いて見える物体は認識しやすいが、そう見えない物体は認識しにくくなる。
私達の動きに注目して周辺視野となっていた視野に留まりつつ接近し、その接近に気付くころにはどうしようもないタイミングで魔物は頭を刎ねられたのだ。等速直線運動にある2つの物体が衝突線上にある場合に起こる、いわゆるコリジョンコース現象と呼ばれるもの。自動車同士の事故から航空機同士の衝突原因にまでなるそれは、魔物にも通用する現象だったらしい。
あれだけ道路上にある罠を警戒していた魔物だったが、いくら走っても道路上に罠はなく、実際は道路も通ってない空中に仕掛けてあったのだ。きっと予想外だっただろう。既に来た道を引き返させることで罠がある可能性を低いと思わせるのに成功したのも大きかった。この場で罠にかかる可能性はないと判断した魔物が、私達を狙って猛追した時点で、死が確定したのだから。
「なんとか倒せたね……いやあ、疲れた」
ここまでずっと走って来ただろうケイスケさんが、地面に腰を下ろして休む。私も結構な距離を走りぜえぜえと息が乱れるくらい疲れていたけど、道路の上に座るのはいけない気がするから注意する。
「ケイスケさん、こんなところで座っちゃダメですよ」
「いやごめん。でも本当に疲れて……ちょっとだけでいいから」
「それじゃあ……ちょっとだけ」
ここまで走らせてきておいた私がそれ以上ダメと言うのも良くない気がする。それに本当に疲れた感じの呼吸だったので本当に休みが必要かもしれないと、二言目には了承した。
「それにしても、どうやって遠隔で魔法を発動したの?」
息が整ってきたケイスケさんは、先程のことを振り返り気になったのか、質問を投げる。私は遠隔と聞いてちょっと考えた後、トドメを刺した時の切断系魔法の話だと気付いた。
「あれはO系魔力にお願いしたんです。私達が戻ってきた時、魔物と同じ速さでその進路に向けて撃って欲しいって」
魔物は私達から出た魔力には注意するが、そうでない魔力には注意しない。だったら先に体外へ出して遠くに待機させておくことが可能なら、隙をつけるかも……なんてやったら出来てしまった。途中で魔物の動きを見てから出来るかもと思っていたけど。
「え? じゃあ自分で発動したんじゃないの?」
「それは、多分……」
前に、魔力の操作についてO系魔力が深く関わっている可能性を彼とは話したことがある。その時はまだ確信が持てなかったからぼかしていたが、あの時私は、「もしかしてオドは魔力を操るのを助けているかも」と言った。
だからひょっとしたら、オド単独でも魔力を操作し、魔法を発動出来るのではと考えてみた。正直出来るかどうかは賭けだったけれど、こうして成功したので一先ず良かったと思える。ただ、新たな疑問が浮かんできた。
(ツェレンちゃんは、オドに意思があるか分からないって言っていたけど…………私のお願いを聞いて指示通りに魔法を発動するのは、意思がなくても出来ることなのかな。ねえ、どうなの?)
私は自分の中にあるオドに向けて聞いてみる。しかし答えらしきものは返って来ず、代わりに少し、身体の奥があったかくなったような気がした。




