魔物との戦い
北側にいる魔物から細い道を2、3通り挟んだ場所。
草を踏み鳴らし道路を進む音が聞こえ出し、私達は足を止める。
(近い)
カカッ、カカッという四本足で移動する動物らしきものに、全員が構えた。
「こっちに気付いているかな」
「どうでしょう。動きに変化はありますか?」
イグノーツに本のマップ機能を使うよう促されたので、本からマップを開いて魔物の動きを確認し、声を抑えながら伝える。
「あんまり動いていない。互いに逆の方を見る感じで建物の方を向いている。ひょっとしてまだ気付いてない?」
「どうだろう。草食動物って目が横についてるから視界が人より広いらしいし、逆に道路上で動くものを警戒しているんじゃないか?」
向こうが無警戒と判断するには早いとケイスケさんは語った。
よく見れば魔物同士、お互いを視界に入れながら死角をカバーし合うような立ち位置である。
恐らくどこから接近しても不意はつけない。
元が野生だけあって周囲への警戒に慣れているのか、ずっとマップから様子を窺っていても隙を晒す様子はなかった。
「このまま待っていても埒が明かない……ここは俺が遠くで注意を引いたらどう? 戦った経験はないけど、逃げるのと攻撃を防ぐのだったらきっとやれると思う」
「ケイスケさん!?」
動かない状況を前にして、ケイスケさんが提案を出した。
私達と違って魔物と相対するのはこれが初になる彼。
必要以上に危険なことをして欲しくない私は、その提案に不安を出さずにいられなかった。
「危険ですよ! 私の知っているやつなら、アレは人の足じゃすぐ追いつかれます! 油断しなくても危ないんですよ!」
「同意見ですね。魔物を普通の動物くらいにしか思っていないなら命取りになります。初めて戦うのであればもう少し慎重さを身につけるべきです」
私とイグノーツに反対され、少しの間びっくりしたようにかたまるケイスケさん。
「な、なら……どうするんだい?」
自分が囮になる以外の方法で。
そんな目を向けられたに私は考える。
実際どうだろう。
最悪なのは、こちらが様子を窺っている間に西の2体と合流され4体全部相手にするという状況か。
それとも北の2体に手をこまねいている間に、西の2体が更に西進し私達の避難所を襲ったり、さっき訪れた船を襲いにいくことか。
(イグノーツさんならどうする?)
私はこの場で一番詳しいであろうイグノーツの方を見た。
まだ何も口にしていなかったけれど、彼は私の考えを読み取ったみたいな早さですぐに答える。
「隙が見えないなら作ればいいのですよ。私が片方を引き受けます。そちらはその間もう一方の足止めに注力していてください。よろしいですか」
「うん。任せて」
私が頷いたのを確認したイグノーツは、数メートル以上の跳躍を行って屋根に移り、真っ直ぐに魔物を目指していく。
私は彼の使った魔法を真似し、ケイスケさんも上れる場所から屋根へ飛び移って、後を追いかけた。
(——動いた)
こちらが動き出した途端、魔物の方にも動きが生じた。
動きが固くなって、しきりに一方を気にする風に首を動かしている。
私達の存在へ気付いたらしい。
その後、『逃走』でなく『闘争』を選んだようである。
魔物は大ジャンプをして屋根へと飛び乗り、こちらを目視。
察していたとおり、見覚えのあるタイプの魔物だった。
(——来る)
私達を視界に入れた途端、迷うことなく突っ込んでくる。
まさか一気に撥ね飛ばすつもりか?
暴走車かよこいつ。
『回避せず、そのまま向かってください』
イグノーツからの指示が聞こえた。
私はその指示へ従って、先頭を走る彼の後ろを進む。
(どうするの!?)
まさか真正面からぶつかるつもりじゃないよね。
一瞬そんな想像が過ぎった私に、イグノーツは答えを見せた。
そこからはほぼ一瞬の出来事。
自重で屋根を砕きながら突進してきた魔物は、イグノーツの目前にまで迫った途端、何かに躓いたかの如くバランスを崩した。
走ってきた勢いそのまま、前に倒れそうになる魔物。
(ちょ————!?)
だがその直後、魔物は上に吹き飛ばされる。
私達の頭上を、何トンもありそうな巨体が通過していき、ガッシャーンと落ちた。
一瞬の間に起きたことで私は理解が追いつかなかった。
この時何をやったのかはすぐに分からなかったけれど、後で聞いた話じゃ、イグノーツはこういう流れで動いたという。
まず、何が起こっても突進の進路を変えられない距離まで迫る。
その次に障壁系で、躓くように見えない壁を足元から伸ばした。
これによって魔物は、急に現れた透明な上り坂に足を引っ掛ける。
その後、イグノーツの『物を飛ばす魔法』で上方向に吹き飛ばした。
結果、前進する力と押し上げる力が合成され、放物線を描くように魔物は飛ばされた。
斜めの壁は、吹き飛ばされた魔物の動きを阻害しないため。
万一私達の上に落ちてきても、それで受け止められるようにするため。
全部、イグノーツの一瞬の判断によるものだった。
「あなたはこっちです」
前を行く1体が飛ばされたことで、後ろを追従していた魔物も罠に気付く。
しかし止まろうにも間に合わない距離。
仲良く転んで同じ方向に吹き飛ばされるかに思われたが——イグノーツはそれを良しとしなかった。
見えない壁に躓いた2体目を、そう言ったのち1体目とは真逆の方へ吹き飛ばす。
さっきと同じ魔法だけど、さっきよりもバァンと響く轟音が大きかった。
(たった一瞬で……)
あっという間に2体の分断を成功させてしまうイグノーツ。彼は2体目が吹き飛んだ先を確認するとこちらへ振り向き、告げる。
「あの1体を私がやります。ツカサさんたちは後ろへ飛んでいった方を」
「は、はい」
いつもと変わらない微笑を浮かべた後、イグノーツは2体目の方へ跳んでいった。
私達も魔物の方へ向き直り、後ろへ吹き飛ばされたやつを確認出来る位置まで近づく。
「やっぱ、あれくらいじゃ生きてる……よね」
見に行った時、魔物はもう起き上がっていた。
まるでこんなのへっちゃらであると言わんばかりに。
頑丈がすぎる。
「ケイスケさん、気をつけて!」
「ああ!」
魔物はこちらを視認すると即座に屋根へと飛び乗ってきた。
私は目を離さないようにしつつ構える。
「傍から離れないで」
二人別れて行動すれば狙いはどっちかに絞られ、片方が攻撃しやすいだろうが。
サヤの大切なお兄さんに囮なんてさせたくないし、なにより自分を狙って欲しいので一緒に行動した。
(ヘイト管理? とかいうのが出来たらなあ……)
ゲームだと率先して狙われるような行為をして注意を引くヘイト担当というのがいるらしいが、ヘイトを受けやすい人には共通点がある。
体力が低くて倒しやすい。
与えているダメージが最も多い。
残しておくと厄介な技を使ってくる。
味方の体力を何度も回復してくる。
一度にまとめて倒しにくい状況では、自然と倒す順番に優先度がついてくる。
その中でも残すメリットの少ない、早く倒さないとデメリットが大きくなる相手を狙うらしい。
弟から聞いた話だ。
賢い敵ほど、そうした思考は自然とするらしい。
(ケイスケさんを先に倒した方が良いって思われるのは避けたい。どうしよう。私が攻撃に専念すれば積極的に狙ってくれるかな? でも……保証はない)
向こうがどっちを優先して狙うかは、向こうが決める。
私の方が危険だから私を優先……と考える可能性もあれば、先に倒せそうな方を優先……なんてこともありうる。
とにかく、戦った経験のない彼を守るために、出来ることをするんだ。
「このっ」
牽制用にと当たればラッキーくらいの気持ちで、光線を放つ魔法を何発か打ち込んだ。
予想していたけれど、全部躱されている。
(当てられる状況を作るのが先だ)
魔物は一緒にいる私達の方へ踏み込んでこない。
多分、イグノーツにやられた罠を警戒しているのだろう。
あれを経験したことで迂闊に近づけず、私達はただ睨み合っているだけで時間を稼げる。
出来ればイグノーツが向こうを倒して戻ってくるまでこうしていたい。
だけどそんな時間がいつまでも続くわけがなかった。
魔物はその場から大きく跳び上がる——真上に。
(真上? 何を……っ!)
そして跳躍地点と同じところへ、勢いよく落下した。
嫌な予感がして衝撃吸収を発動すると、あの巨体が墜落したことで生じた威力により、真下にあった建物が粉砕され、辺りに無数の破片が飛び散る。
「うあっ!!」
「ケイスケさん!」
破片の1つがケイスケさんの右肩を突き刺さってしまう。
痛みに膝をつく彼の方へ目を向ける。
「ごめん……判断に迷って、魔法を使うのが遅れた……」
「いいえ、私が油断していたせいです……!」
魔物の動きを予測出来なかった私のせいだ。
何の捻りもなく真上に跳ぶ。
それによって大量の破片を撒き散らして攻撃なんて、想像していなかった。
私自身は咄嗟に衝撃吸収の魔法を発動済みしていた。
なので飛んできた破片は肌をも刺せず弾き切ったものの、ケイスケさんはそうはいかなかった。
(障壁系を使っていれば、一緒に防げてた……)
魔物の意図に気付かなかったこと。
破片を防ぐために使った魔法の選択。
彼の受けた傷は、二つの判断ミスが重なったことで生じている。
私は悔しくて、手を握りしめた。
「くそっ……」
「ダメ、下手に抜かないで!」
ケイスケさんが自分の肩に刺さっている破片を引き抜こうとしたので、慌てて止める。
太い血管に刺さっていたりしたら大変だ。
消毒や止血する準備をしてからじゃないと。
(ミスしたことを気にしている場合じゃない。考えろ、考えろ!)
魔法を使えば傷の治療は可能だが、ケイスケさんはその魔法を覚えていない。
この場ですぐ使えるのは私だけだ。
でもここで治療に魔法を使えば、魔物は間違いなく襲いかかってくる。
(魔物はさっきの罠を警戒してるはず。でも魔力の動きが見えるから、魔法を使えばそれに反応してくる。攻撃以外の魔法は使えない。隙だと思って狙われたら、凌げるかどうか)
「ケイスケさん」
「……大丈夫。魔法も、なんとか使えるよ」
本人はそう言っているが、冷静に考えればきつい話だ。
普通に考えて、今のケイスケさんは思考が痛みに散らされ、魔法が失敗しやすい状態にある。
今の魔法成功率は普段より大きく下がるだろう。
仮に成功率が7割あるとすれば、良くて半分、下手すればそれ以下。
使えるといっても問題であった。
「——っ!」
考えようとした矢先、魔物がこちらへ突進を始めるのを視界に捉えた。
一先ず時間稼ぎを優先だ。
(さっきのを学習しているなら、今度は避けてくるはず)
イグノーツの動きを真似して、斜め向きに障壁魔法を突き出させる。
それを見て、魔物は通りの向こう側、そちらの建物の屋根へ跳び移った。
迂回して接近する気か。
ならばと魔物のいる方へまた斜めの壁を発生させる。
跳んで来たらこれでブッ刺すという警告だ。
「……手伝うよ」
ケイスケさんも私の意図に気付き、同じように魔法を使う。
無理はしないでと願いつつ、二人がかりで魔物の進路へ壁を生やす。
「このっ……!!」
するとまた魔物は迂回して近づこうとするので、その繰り返し。
そうしてやがて、私達を中心にウニのように、外へ突き出た壁だらけになっていた。
ほぼ全方位へ来たらブッ刺す意思を表明してある。
容易には近づけないだろう。
唯一、真上に向けてはガラ空きだったが、別にいい。
真上から来るなら、狙いは中に飛び込んでくること。
そうして入ってきた魔物を必殺するための罠なんだから。
仮に中に飛び込んでこなくとも、壁の上に乗ったらそこを崩して転ばせる。
そうして隙を晒したところを狩るつもりだ。
(魔物はどう動く……?)
どこから来る。
上か、横か。
それ以外の何かを仕掛けてくるか。
あまり時間はかけたくない。
どうにか耐えている様子だけど、土台となる建物がいつ崩れてもおかしくない音を立てているのだ。
実体がある壁を出せる魔法。
それを選んだがゆえに、その重量がのしかかっているためである。
「っ…………!」
まだ崩壊を迎えていないのは、おそらく極大繁茂で成長した植物が受ける力を分散しているから。
災害によって生まれた巨大な雑草が、嵐でボロボロになった建物を支える一助をしているなんて。
皮肉な話だ。
(まずい。限界が)
その時、一番最初に出した壁が撓み出したのに気づいた。
すると他の壁も次々と同じようになっていく。
軋む音を立てながら、ゆっくりと。
自身の重みで壁が倒れる瞬間が迫っているのだ。
私はすぐに察した。
(崩壊が進むまで、魔物はもう来ない)
この様子は外からでも見えていることだろう。
魔物ならどう考えるか。
おそらく、時は自分に味方していると思っているはずである。
放っておけば有利になるなら、危険を冒す必要はない。
(追加で壁を出す意味もないか)
元々、イグノーツが戻るまで待てそうにないなら倒す気でいた。
以前やった時に倒し方は学んでいる。
必要とあらば接近してきた魔物へ、怪我を負っても当てる覚悟である。
状況が変わった今、動きを変える必要があるのは私達の方。
こちらから動いて、向こうの動きを誘導しないと。
(本を見て位置は確認出来る。壁の向こうにいようと、動きは追える)
私はケイスケさんの方へ振り返った。
「怪我の具合は?」
「痛いけれど……我慢出来る」
傷口の周りが赤く染まり始めている。
私は今のうちに破片を抜いて治療することを提案する。
「向こうが仕掛けてこないこの時間を使って、魔法で治します」
「分かった……お願いするよ」
狙いは二つある。
一つはケイスケさんの傷を治すため。
もう一つはわざと隙を見せることで、壁の守りが機能するうちに向こうが仕掛けてくるよう誘うため。
私はしゃがんで彼の肩に手を伸ばそうとした。
しかし直後、ケイスケさんはその手を払いのける。
「これは自分で抜けるから。ツカサさんは、魔法をお願い……」
回復魔法に専念してほしい、と。
彼が痛みを堪えながら言おうとしたその意図を、私は静かに汲んだ。
するとケイスケさんは微笑んで、自分の右肩に刺さっている破片を引き抜く。
傷口が露わになるが、私がすぐさま回復魔法による治療を始めた。
(まずは消毒。次に止血……!)
魔物の動きは本のマップ情報から確認を怠らない。
こちらの作った壁の外をグルグル回るばかりで、何かを仕掛けようとしている感じはない。
今近づくかどうか、壁が崩れきるのを待つべきか、その間で決められないでいるようだ。
(こっちが何の魔法を使っているかまでは、見えている? 見えていない?)
何枚もの壁の向こうで何をしているか。
それがどこまで把握出来るのかは疑問だが、回復魔法を使ったタイミングとほぼ同時に動きに変化が起こった。
私が魔法を使っている、それが伝わっていることは間違いない。
けれど現実には何も仕掛けてこない。
(ギリギリ壁の罠は生きているからね)
やはり壁を突破する方法を探っていると見るべきか。
私が彼の傷を治す時間、魔物は何も出来なかった。
「……終わりました。どうですか?」
「ああ……。まだ痛みは残っているけど、大分マシになった……ありがとう」
マップ上ではまだ魔物は壁の外側を彷徨いている。
こちらの予想よりも慎重に行動しているらしく、壁を跳び越えて近づこうとする様子はない。
「……来ないね。これなら保つかな?」
イグノーツが戻るまで耐えられるかとケイスケさんが呟いた直後。
魔物はこちらの思惑に反する動きを見せた。
屋根から降りてこちらへ向かって駆けてきたのである。
(まず……!?)
これまで見られなかった行動に、何か意図を感じた私。
咄嗟の判断で近づけてはいけないと思い、道を阻むように壁を生やした。
しかし、壁の向こうのせいか狙った場所から発動地点がズレる。
止められない。
そう思った私は大声で伝えた。
「揺れるから伏せて!」
暴走トラックの如きスピードで、魔物は私達の足元のある建物へ突っ込む。
その衝撃は猛烈で、立っていられないほどだった。
日本は地震大国であり地震で簡単に崩れないよう頑丈な建物が多いが、そんな国でも凄まじい重量を誇る物体が横から突っ込んで耐えられるような構造など、普通の建物に施してある筈もない。
破壊的な音と、凄まじい揺れを伴う一撃によって、私達の立つ場所は土台から崩れていった。
(離れないと!)
崩壊に巻き込まれる前に跳んで離れようとした私だが、その時体が何かに引っかかった。
(うそ、木の枝が……)
跳ぶ方の安全をしっかり見ていなかった。
極大繁茂で成長した街路樹に引っかかると、そのまま勢いを失って地面へ落ちていく。
落下するだろう地点には魔物。
待ち構えている?
(これなら!)
それが魔物と初めて戦った時の、トドメを刺す寸前の光景を思い出させた。
私は自分に魔法をかけ、肉薄してからの攻撃を狙う。
すると魔物はこちらが構えた後——自ら私の方へ跳んで、その大きな頭部で頭突きを喰らわせてきた。
(な——!?)
衝撃吸収の魔法を発動してあったので、頭突きを受けてもなんともない。
だが、その衝撃によって私は大きく吹き飛ばされ、魔物から遠ざかっていく。
遠ざかっていく私を数瞬の時見つめていた魔物は、やがて視線を外し、別の方向へと走り出す。
それはケイスケさんが跳んで離れた方向。
(逃げてケイスケさん!!)
分断されたと察した私はすぐに戻ろうとする。
けれどその時、本に映されたマップで気になる動きが。
(西から来る反応が近づいている? っ、まさか……!)
後になって思えば、戦闘の中で散々大きな音が響いていた。少し遠くにいる彼らにその音が聞こえていたとして、それで向かってきていようとおかしなことはない。
振り向いた私は、猛スピードで通りを抜けながら迫ってくる2体の魔物を視界に収める。どちらも私をターゲットとしているらしく、目指すはここだと一直線に駆け抜けていた。
(こんな時に……!)
判断を迫られる。
ここであの2体を相手にしなければケイスケさんのところへ向かっても、3体同時に相手しなくてはならない。
けれど私がここで2体を足止めするのも、同じくらい危険である。
足止めか、合流か。
どちらを選ぶにも迷いが生じて、貴重な時間を浪費させる。
そうこうしている間にも2体の魔物はグングンと距離を詰めてきている。
「っ…………!」
選ぶ側から選ばされる側になり始めていた、そのとき。
私と魔物の間を横切るように、いくつもの爆発が起こった。
まるで一線を引くように放たれたそれ。
不意をつかれたみたく、魔物はその場で止まる。
そして不意の爆裂音から身を守っていた私の前へ、それを放った人が降り立つ。
「西の2体も引きつける必要はなかったのですが、ご無事で何よりです」
優しげな声でそう告げたあと、イグノーツは魔物のいた方向へ2つの爆発を立て続けに起こした。刹那のうちに魔物がいる場所へと何度も連続で発生させ、例え魔物が動き回ろうとも正確に追撃を入れ続ける。
「こちらは私が引き受けます。ツカサさんは彼がいる方へ向かってください」
「……イグノーツさん!」
最初の1体を倒してすぐ向かってきてくれたようだ。
その場に駆けつけてくれた姿に、光が差したような気持ちが湧く。
「同時に相手はツカサさんにはまだ大変でしょう。ケイスケさんが耐えておられるうちに、急いでください」
「……ありがとう」
「いえいえ、お気になさらず」
促される形でその場を後にすると、私はケイスケさんの方へと向かった。




