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災害再現

「とある外国には、『学問なき経験は、経験なき学問に勝る』という諺がある。実際に体験して得た経験は、机の上で学ぶだけよりも役に立つという意味らしい。書物や映像だけを見て学んだ気になれるのは楽しいだろう。しかしそれを実際に活かせるかといえば懐疑的だ。入力する技術と出力する技術は分かれているのだからな」


 私達以外誰もいない、体育館の中。面白げな表情をして語るアーノルド。こちらを一瞥するでもなく、遠くの方を見つめながら独り言のように口を開く。


(……これは、現実?)


 館内は時が止まった風の静けさに包まれてある。少しの間、自分が現実にいるのかどうか曖昧になるが、外から指す光は朝焼けのようで、壁に飾られている大時計も朝の5時くらい。今はもっと昼に近い時刻であったはずなのに。

 加えてこちらの都合で区分けしたはずのスペースも見当たらず、端から端まで見通せてしまえる状態。こんな綺麗に片付けされているはずはない。よって、この空間が精巧に作られた偽物であるのは確かだ。


「確かに知識は実践で使ってからものになるけど、これ全部シミュレーションだって言うの……? 今のVR機器でもこのレベルのものは……いえ、五感に訴えてくるほどのはないわ」


 サヤもここが現実でないと実感し始めたらしく、しゃがんで床の手触りを調べたり、館内を包む匂いを嗅いだりして、実際の体育館内との違いを確かめている。私自身VRに詳しい方ではないけれど、動画や放送なんかでこれと同じレベルのもの、同じ規模のことを可能な機器は聞いたこともない。私とサヤは揃って疑問に思ったことだろう。


「アーノルドさんの世界って、地球よりも先を行ってるの?」

「……私のいた世界に興味があるかい?」

「は、はい」

「そうか。だが教える気はない」


 いかにも話す用意がありそうな風に確認してきたので、断られることが予想外だった私は一瞬思考が止まった。

 一方、彼はこちらの表情を見た後、悪戯心を働かせたような顔を浮かべる。その反応にサヤが眉を顰めながらアーノルドに近付き、目前まで顔を寄せた。


「意地の悪い聞き方はやめてくれない? 貴方がどんな性格だろうが構わないつもりだけど、私の友達をただ困らせて楽しむつもりの行動なら、黙って見ていないわよ」

「ほう?」

「さ、サヤ! いいよ大丈夫、私気にしてないから!」


 手を出しそうな雰囲気をサヤから感じて慌てて背後へ回ると、2人の距離を剥がそうとする。サヤには本気で暴れるつもりはなさそうだけど、全身の力み具合から推察するに半ギレくらい怒っているのだと察せられた。


(急にキレすぎだよ! どうしたの!?)


 北棟校舎で何があったか、その詳細をサヤには伝えていない。もし聞かせたらサヤがアーノルドへ何をしようとするか、それを止められる自信がないからである。だからこの程度の意地悪をされたくらいでキレるだなんて、と内心戸惑う。

 彼には昨日だけで散々な目に遭わされたが、ここで止めずに眺めていたらアーノルドが何らかの報復をするかもしれない。そうなることは避けたい一心で私は動く。


「離してツカサ。この人全く信用ならないのよ。そこのイグノーツが上澄みに思えるくらい、嫌な奴に感じる」

「これはまた、初対面でキツい毒を吐いてくる娘さんだ。どういう教育をすればあれだけの発言でこういう推理をする者に育つのだろうか。興味を唆られなくもないが、地球の文明レベルを考えるに偶然の産物なのだろう。残念で仕方ない」

「なんですって?」


 彼を鋭く睨むサヤと、それを煽るような言葉と澄ました顔で見返すアーノルド。そしてサヤが手を上げてしまわないよう後ろから抑える私。もう限界だった。


(というか見てないで助けてよ!)


 お兄さんであるケイスケさんの方を見るものの、サヤを止める気がないのか、余計なことを言って矛先が自分に向かうのを恐れたか「止めなくて良いんじゃないかな」という消極的な返事を受け取る。ちょっとお兄さん、しっかりして。


 子供であるツェレンに頼むのは気が引けるし……と消去法で、いつもニコニコしているイグノーツへ目で訴えた。こちらのSOSサインが伝わったらしく、イグノーツは私の目を見てからふうと小さく息を吐くと、2人の間へ仲裁に向かう。


「サヤさん、この場は落ち着いてください。アーノルドさんも、言葉のナイフを振るって物理的に怪我をしたとしても、私は庇えませんよ」

「それはそれで楽しそうで良い気もするがね。私は既に死んだ身なのだから、殴り合いから生命の危機に発展するリスクのない現状、これもある意味話し合い(コミュニケーション)だろう?」

「ご冗談も程々に。それともこれも予行演習のつもりでしょうか? 災害前後の貴重な時間、それを無駄話で浪費する方にどう対処するべきかという」

「その答えはシンプルに、『殴ってでもどうにかしろ』が正解だな。では君、お手本を見せたまえ」


 アーノルドが期待を込めた眼差しでサヤの方をじっと見つめてくる。視線を受けたサヤはゆっくりとこちらへ振り返り、私の目を見た。


「……ツカサ。本人がやれって言っているんだから、もう私を抑える必要ないわよ」

「で、でも…………ううん……」


 これは合意と見ていいのだろうか。普通は良くない。でもアーノルドは普通じゃないし。

 今の彼の発言を聞いて果たして本当に止めるべきなのか、疑問に感じた私も頭がこんがらがってきた。最終的にサヤの好きにさせることを選ぶと、サヤは彼の股座(またぐら)へ叩き上げるような一撃を入れた。足で。

 衝撃と共にアーノルドは「ぐふっ」と息を吐きその場で片膝を突き、そのままの姿勢でサヤを見上げる。


「とりあえずは及第点だな……だがもう少しアドバイスをすると、股間を打たれた相手は素早い移動が難しくなるから、ケースバイケースだ。用途に応じて使い分けたまえ」


 殴るどころか大事なところを蹴られているのに、なんで冷静に助言をしているんだろう。痛みを耐えているからか声は震えているけど、発言内容は妙に落ち着いているし。

 でもそのお陰(?)か引き気味になったサヤは冷静さを取り戻しつつあった。


「なんなの、この人……」

「彼は学者なんですよ。さて、この話は一旦ここでお仕舞いにして、皆さん残り時間を確認してください。手元に浮かんでいる本にカウントダウンが出ているはずです」


(そうだ、残り時間……)


 私は意識を周囲から手元にある本に向ける。そこには残り何分というカウントダウンが始まっており、災害の再現というのは秒刻みで進行していることを伝えてくる。既に残り時間は8分を下回っていた。


「どこかの誰かさんのせいで2分もダメにしてしまいましたね。2分の遅れは緊急時だと命を取るのですが、今回は避難訓練のようなものです。慌てずに落ち着いてやることを覚えてください。さあ皆さん、走って逃げますよ。ツェレン、こちらに」

「うん」


 ツェレンを抱きかかえたイグノーツが、訓練開始を宣言する。

 私達はイグノーツに先導される形で体育館を出ると、学校を出て市街地を走っていく。慌てるなと言われた私達であるが、訓練というのもありどこか気が引き締まりきらない感じがあり、逆に気が抜けないようにするのが大変だった。それでも時間だけはキッチリ過ぎていく。


 極大繁茂、本格発生まで残り7分。


「どこへ逃げるの? こっちは海の方よ」


 植物に侵食された市街地を駆ける途中。

 自分達が海の方へ向かっていることを気付いたサヤは、その行動の意図を聞いた。


「極大繁茂が本格化すれば一番危険なのは植物が生えている場所ですので、逃げるとすれば海か空しかないんです。もし発生した際に近くにいれば、巨大植物発生時に巻き込まれたのと同じことが起きます」

「あ、あの時のやつが?」

「そうですよ。また特等席でご覧になりたくなければ、死ぬ気で走ってくださいね。海岸部までまだ距離がありますから」


(そ、そんなぁ……)


 非情な返答に、私は冷や汗をかきながら精一杯走るしかなくなる。ここがいわゆる仮想空間の中で実際に死ぬ危険がないとしても、極端に高いところは苦手なのである。見下ろすとあまりの高さに足がヒュンッと竦んじゃうのだ。あの感覚にはどうしても慣れない。


 なのでまた捕まりたくない私は走った。サヤとケイスケさんも走る。アーノルドだけは宙に浮いて同じ速度で移動するというズルをしているが、その魔法は絶対にあとで教えてもらう。


 本格発生まで残り5分。このまま走っていけば海岸までは辿り着けるだろう。ただし、それが出来るのは身体が十分に成長し、かつランニングも可能な大人に限る話だ。今抱えられているツェレンのような子供や、もう激しい運動をするのが難しい老人などに同じことは出来ない。

 

(車が使えれば……)


 道路は異常成長した植物達によってどこもかしこも亀裂が入り、なだらかどころかボコボコ。もし走れたとしても車内は酷く揺れるしどれだけ速く移動出来るだろう。少なくとも、今私達が走っているこの道はダメだ。異常成長した街路樹により両側から破壊された道路は、速度を出せるような状態とは決して呼べない。


 地上を覆う雑草を掻き分け、隠れた根に転ばないようにしながら急ぐ。こんなに足元に注意を払いながら、かつ速く移動しろだなんて、無茶な話にしか聞こえない。


「急いでください。このままだと時間がなくなります」


 本格発生まで残り2分。イグノーツの声に前を見れば、海岸線が見えてくる。ゴールが見えたと思ったそのすぐ後、足元から無視出来ない揺れを感じて立ち止まってしまう。


「な、何? 地震?」

「いえ、極大繁茂発生直前に起こる揺れです。今のうちに移動しないと揺れが大きくなって動けなくなりますよ」

「……見て、植物が!」


 その時サヤが大声で言った。視線の先には、既に十分な異常成長をした植物が、瞬きする間にぐんぐんと成長していく光景が。


(——ヤバい!!)


 急速に成長し出した植物によって、締め付けられている家や塀が崩壊を始めた。地面から押された電柱が傾き、傾いた方へと倒れ出す。揺れはどんどん増していき、走るのも困難になる。


「もう終わりだな」


 本格発生まで残り0分。

 アーノルドの呟きと同時に起こった【極大繁茂】は、その本性を露わにした。


 今までのそれらがただの予兆であると……何度も理解していたはずの私は、自分が思っている以上にそれを理解出来ていなかったようだ。視界に見える範囲だけで、瞬く間に普通の木が数十メートル以上縦に伸び、それを支えるように一気に幹も太くなる。雑草もまたあっという間に私の目の高さを超えていき、周囲で何が起こっているかなど、碌に分からなくなった。


「きゃあ!」


 地面が大きく割れる音。建物が崩れる音。

 近くのアパートでも崩れたのか、盛大に舞う土埃。それに伴う大きな風圧。

 木々の間を通りながら、瓦礫が転がり落ちる音。みるみると自分が小さくなったかのように、周囲の植物が巨大化していく。近くにいたはずのサヤ達の声も、もう聞こえない。

 地上からそれらの急激な変化を感じる私は、自分の胴体へ絡みつくような感触を覚えた直後、ぐいっと上へと持ち上げられた。しまったと思うが既に遅い。

 そのままギュウギュウと体を締め付けられた私は間もなく死亡判定をもらい、シミュレーションから退場させられた。




 正直、今ので死んだという実感が湧かなかった。

 シミュレーションから出された私が戻ったのは、災害再現機能を使う前にいた空間。


『貴方は極大繁茂からの避難に失敗し、内臓破壊による生命維持能力の喪失で死亡しました』


 この本に書かれてある内容を読み、「あ、死んだんだ私」とやっと自覚を持てたくらいである。それくらい唐突で、心が追いつかない速さの死だった。


(他の人は……?)


 私だけが退場されたのか気になったので、周りをグルリと見渡す。すると私同様に死亡判定をもらったのか、サヤとケイスケさんが固い表情で本に出ている内容を見ていた。


「サヤ、ケイスケさん。どうだった?」

「あ、ツカサ……ごめんなさい。死んじゃったみたい」

「俺も同じだよ」


 それぞれ本を掴むと、私の方に内容が見えるように向けてくれる。内容は私と一緒だ。同じ原因で死んだ判定を受けたのだろう。お返しに私も自分の結果を2人に見せる。


「私も同じだったよ。あはは……」

「あははって、なに仲良く死んでいるのよ? そこはツカサだけでも頑張って生き延びなさい」

「いや、そんなこと言われても、どうしようもなかったじゃん……」


 私はサヤに言い返した。あの極大繁茂の発生の瞬間、再現とはいえどうすればいいのか分からなくなりそうな、そういうどうしようもないものを感じたと思う。正解が見えない、どう動けば生存率が高くなるのか計算出来ない状態だった。逆にどうやれば生き延びられたの、と聞きたいくらい。


 それにはサヤも同じ感想であったらしく、


「それは、そうね……けどもし現実で起こった時もこんなことになったら、嫌よ絶対」


 自分から言ったものの言葉に詰まっているらしかった。

 私だって嫌だよ、と心の中で同じことを思う。


「あともう少し時間があれば、海岸まで辿り着くことは可能だったとは思う。でも極大繁茂か、あれが本当に起こるなんて、俺は今も信じ切れない」


 ケイスケさんは今さっき体験した経験について悩んでいた。極大繁茂という魔力災害は、私達の世界では誰も経験したことのないものである。あれが本当に起こると言われて、すぐに頷ける者はまずいない。けれど、その予兆とされる現象は既に現実で起こっている。


 平穏無事な世の中だったら、私自身も変な噂かと思って聞き流していたことは容易に想像がついた。


「信じられないのは兄さんだけじゃないわ。けどこれが嘘だと言い切るにしろ今の状況が未知過ぎて危険よ。そもそも、赤の他人に信じて欲しい嘘ならこんな突拍子もない話は却って逆効果。そういうのも含めていけば……」

「分かっている。分かってはいるんだ、俺も……」


 そう言ってケイスケさんは、自身の顔に手を当てる。分かろうとしているけど、分かっていいものか考えている姿を見て、私もまた感じる。


(私は実際、イグノーツさんのお陰で助かったことが何度かある。だからこの話もすんなりと信じられた。けどケイスケさんはそうじゃないから……)


 逆の立場だったら、私もきっと似たようなことを思ったかもしれない。これが本当に近い将来起こることなの? と。そう疑う前に信じていられるのは、この情報をくれたのがイグノーツで、その彼を信用出来るのが理由だ。信じられない人から情報をもたらされたとことろで、すぐ信じるような真似はしない。ゆえにケイスケさんの反応は当然である。


(どうしたら……)


 どうすればケイスケさんの悩みを軽く出来るか考え出した時、この場に戻っていなかった人達が帰ってきた。ツェレンを横に抱えたイグノーツに、無重力下のように宙を漂うアーノルド。いなかった3名が戻ってきたので、私達はそちらへと振り向く。


「おや、3人とも死んでしまいましたか。初めてではこんなものですかね」

「結果が出るぞ。君たち本を確認したまえ」


 アーノルドの言葉を聞いた私はまた本の方を向いた。すると先程の文章から更に切り替わっており、シミュレーションの結果とやらが表示されている。


 まず極大繁茂による死亡者数。これは3名。数字を見た段階で確認するまでもなかったが、死亡判定を受けたのは私とサヤ、ケイスケさんだけだった。続いて生存者数は2名。これはイグノーツとツェレンが該当者である。私が退場した後きっちり退避まで成功したようらしく、怪我の情報なども書かれてあるので見てみれば、どちらも無傷の判定であった。


「逃げ切ったの? どうやって?」

「どうと言われましても、普通にですが。あれくらいの揺れで動けなくなったら、そのまま死に直結しますからね」


 異世界人特有のタフネスか身体能力か。あまり『普通』の範疇に入る気がしないものの、その部分はいま重要なことではないと思いスルー。

 なお結果の続きを見ると、行方不明判定が1名いたらしく、該当者の名前はアーノルドだった。途中まで一緒にいたはずなのになぜか。彼にこの行方不明者扱いな理由を尋ねてみたら、


「死亡判定を受ける前に抜けるとそういう扱いになる。君達の結果が見えた時点でさっさと抜けたから、観察者モードになったのだ」


 と答えられた。観察者モードとはこの災害シミュレーションみたいなやつで、俯瞰視点で様子を観察出来るやつらしい。


(これは……後で使い方を聞いておこうかな)


「……それはそうと、アーノルドさんの無駄話で今回3人とも逃れられない結果に終わったような気がしますね。その点について申し開きはないのでしょうか?」

「既に出ている結論があるのに、今更コメントすべきことがあるかね? まあ、初めて経験したであろう災害だからな。どう行動すべきか自分達だけでは判断も難しかったであろう。むしろ初回で死亡判定なだけマシではないかな?」

「ふむ、それもそうですね」


 イグノーツはそれに同意を示すかの如く首を縦に振った。

 予想外の肯定だったのか聞いていた私は驚愕。


(いやどこがマシなのさ! 死亡判定より下の判定でもあるの!?)


 思わずそう突っ込みたい気持ちを感じた私だけど、その答えはすぐにイグノーツの口から出る。


「初回で生存判定をもらってもそれで調子に乗ってしまい、本物の災害発生時に慢心から命を落とす人もいますから、まずやってみて死にました、くらいの方が今後油断しにくいでしょう」


 成功体験に感覚が狂わされて取り返しのつかない失敗をした。まるでそんな人を見てきたような言葉。


「それはそうよね」


 サヤはそれで納得がいったのか頷いている。ケイスケさんは苦い顔をしているが、理解は示している感じ。イグノーツから下りて近くで聞いているツェレンに至っては、慣れた様子で気にしている素振りもない。私も一応は理解出来た。


(舐めてかかったりするよりはマシなんだろうなあ。でもこのままだと不安……これもあとでやった方が良さそう)


 今はあくまでも本の機能を教えてもらっている最中だから、アーノルドはこれを説明し終わったら次へ移る。私としては今の機能で2週間後の備えをもう少しやりたいと思い始めているものの、彼にも彼の予定があるらしい。どこか行きたい場所があるようだと本人から聞いた。


 まだ関わって1日しか経ってないけど、彼との間に良い思い出はまるでない。どこかへ行くと言われて止める気も行き先を尋ねる気も更々ないし、精神衛生的には今は会わない方が気楽だ。暫く会えなくなるというのは私にとっては有り難い話なので、この機能で色々したいという気持ちは抑えた。


(けれどイグノーツさん、本当にそんなことがあったみたいに言う。もしかして……?)


 などと考える私の方へ、イグノーツが振り向いて言う。


「流石に実際に見たわけではありませんよ。ですが過去にそういう例はあったらしいので、ツカサさん達も気をつけてくださいね。死から生き返らせる魔法は発見されていませんから」

「は、はい」

「本当に気をつけてくださいね」


 念入りに聞かれているけど、もしかして私死ぬかもしれないって思われてる?

 そう考える私に、イグノーツはニコリと微笑む。


「今回の災害、真面目に放っておくとツカサさんは死ぬ可能性が高いので。前に私が言っていることを覚えているならお分かりだと思いますが」

「あ……」


 その時、イグノーツから前に聞いた言葉を思い出した。


 “——の通過した直下地域、かつての暴風圏内はまず危ないと思ってくれて結構です。日本で安全と言える地域は北海道、沖縄本島より西側——”


「今思い出しましたね? 絶対に気をつけてくださいよ?」

「あ、あはは……」


 心まで読まれたのか呆れられ、もう苦笑するしかない私だった。

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