もしもの終わり
彼女の発動した光線状の魔法はツカサの方へ飛んでいき、手を伸ばせば届きそうな距離で【障壁系】の魔法に防がれた。事前に発動されていたらしき魔法によって防がれた形となる。
しかし、それを想定していた彼女はニヤリと笑った。
(もう避けなくても対処出来る、と)
流石の対応力だと褒めてあげたい。そんな気持ちで頬が緩んだ間に、ツカサから同一魔法の反撃が放たれる。それを横に移動して避けた後、彼女は光線を牽制に2つ、角度をつけて返す。
「…………?」
ツカサは思考を挟むような表情を一瞬浮かべ、その場で防御を選ぶ。そのため攻撃は防がれた。
(失敗か)
横に回避するならそれを見越して障壁系の透明な壁を射線上に置き、反射した光線で回避先を狙うつもりだった。そう考えていた幻影の彼女にとって、この失敗は痛くはないが勿体ない。
(でも半分の確率で防御だろうと思ったし、次だ次)
焦る必要はないと彼女は冷静に努める。
そこから幾度かの撃ち合いと壁や結界による防御が続き、時間が過ぎていく。
互いに回避は最小限に、攻撃手段となる【放射系】や【切断系】魔法を主軸に相手の動きを誘導しようと魔法を発動。それらを結界などで反射させ死角から迫らせたり、当てるつもりの光線を見抜いて潰したり、瞬間的な攻防が断続して起こる。
(結界が増えて邪魔になってきた……)
複数個の形状が違う【結界系】を所狭しと発動させた影響か、単純な直線攻撃は当たらなくなった。代わりに自分と相手の発動した結界系と障壁系を避けたり貫いたりして相手の元へ向かわせなくてはならない。加えてツカサも透明の結界系を発動してきているので、結界の形状を覚えるために魔法を当てて把握する必要がある。そのため邪魔になってきた魔法を解き、新たに発動し直すことにする。
(拡散する放射系を撃てばざっと形は掴める。後は穴埋めされないよう攻撃で意識を逸らしつつ、防御への意識を下げさせていく)
拡散するタイプの魔法を撃つため、距離を取ろうと牽制用の魔法を撃ちながら下がる彼女。すると離れようとする彼女の目的を察したか、ツカサは光線を2発、室内を大きく迂回するような軌道で放った。
(牽制? 当たるとは思えないけど)
落ち着いて迎え撃つ構えを取る。ツカサへの牽制も忘れずに放ちながら、迫る光線を出来るだけ引き付けて1枚の障壁系と自身を球状に包む結界系で二重に防御を張り、完璧に防いで見せた。
魔法の障壁に当たって弾けるように消えたのを見て、『この程度楽勝だ』。そう語っているかのような表情のもとふっと笑う。だがその直後、彼女の体へ鈍く重い衝撃が走った。
「え……?」
衝撃を感じた部分を見れば、結界の上からツカサの放った放射系魔法が激突し、内側にいる彼女の脇腹付近まで歪に凹み直に接する形となっている。
事実はそれだけ。けれど彼女には何故そんなことになっているのか分からなかった。
(おかしい。一発受けたくらいで私の結界が凹むはずない)
直線的な軌道であったことから、ツカサが防御用に正面に発動していた魔法を解除して撃ったのは間違いない。下がる彼女の行動に合わせて発動したのだろう。彼女が視線をそちらへ向ければ、ツカサは牽制攻撃を受けた痛みに耐えるよう片方の目を細め、第2射の準備に入っていた。
(回避より防御を優先したかと思えば、防御より攻撃を優先って……貴方正気?)
幻覚の攻撃といえど無視すれば良いとはいかないのはもう実体験したはず。それが簡単に出来るのであれば、幻覚に苦しむ人間はこの世にいない。
よろけから立ち直りつつ思考を重ねていると、ツカサが前方に突き出した手、それを目印にするかの如くツカサのO系魔力が集結する。
動きから彼女は攻撃を察し、急いで射線上に障壁系魔法を重ねる。避けるべきだと思ったものの、結界を凹まされた動揺が尾を引いて安全地帯を作ろうという思考が働いた。
障壁の展開が終わると同時に撃たれた光線は、見事に一直線の軌道を描く。そして真正面から障壁にぶつかると防がれ——障壁がバラバラに弾けた。
「——は?」
反応も間に合わぬ内に射線上にあった障壁を全て叩き割ると、光線はそのまま彼女の最終防衛ラインだった結界の凹んだ部分に直撃。再び強い衝撃を彼女に与え、残った余力で彼女を教室の隅へ吹っ飛ばした。
(訳が……分からない)
一度ならず二度までも想定外のことが起きた。そんな事実が彼女の思考を揺らし出す。
(あっちが使っているのは私が使っているのと同じ魔法。威力は知っているし、私自身それを想定して防御出来るようにしていた。それがたった2回の攻撃で破られた? 何かおかしい)
魔力圧の変動が抑えられたとき、魔力が放つエネルギーによって引き起こされるのが魔法という現象。その効果はどの魔力圧域で抑えるかにより大まかに決まる。しかし威力は変動を抑えられた魔力の量によって決まり、これは下げることは容易でも上げることは容易ではない。威力を大きく変えたいのなら工夫が必要になる。
特殊な魔法紋などによって自身の制御能力を増加させる、使う魔力をE系などの効果量の高い魔力にするなど方法は幾つか存在するが、知識を持つ彼女はそれらを思考と共に否定していく。
(そういう魔法紋を使っているようには窺えない。M系魔力じゃなくてE系魔力を使った? いや、いくらマジックネイティブの能力があってもちょっとやそっとで簡単に使いこなせるわけない。あっちがE系を使い出すにしろ、イグノーツと接触してからのはず。私はもっと長くE系を使う練習をした前提の存在だけど、まだ慣れているM系の方が安定するし、O系魔力の方も十分とは……)
可能性は低いと考える彼女。そこで、では残っている可能性や現実的な方法として出来ることはないかと思案すると、第3射となる攻撃の光が正面より来た。
思考を中断して回避に移ろうとしたその時、迫る光線の中に答えがあったのを目撃する。
(光線のほぼ弾頭部に、切断系の魔法……!?)
避ける時間を確保するために発動した結界とそれがぶつかると、【放射系】である光線の僅か前——弾頭に相当する部分——を先行する切断系の魔法が結界と反応、程なくして結界へ細い傷穴を開けた。続いて光線が衝突し、その隙間を広げながら貫通してくる。程なくして結界は断面から加わる破壊的な圧力に耐えられず、バリンと砕け散る。
一瞬の出来事。余程注意深く見なければ認識も出来ないような攻撃の先端部に原因があったと知る彼女は、「なるほど……」とその驚愕のほどを顔に浮かべた。
「障壁と当たる直前に切れ込みを入れて、ただ当てるよりも効果的に壊せるようにしていたって訳……」
楔を打ち込んで石を割れやすくするように。切断系魔法を楔代わりに障壁や結界へ突き刺し、そこを起点に脆弱点を生み出す。
回避しつつ技のタネを見抜いたことを宣言した彼女。その発言の目的は多少なりとも動揺を誘って隙を生み出すことだったが。
「じゃあ対処ももう出来るよね?」
動揺の見られない表情でツカサから逆に挑発的な言葉をぶつけられると、更にツカサはもう一度同じ攻撃を使ってきた。
(——なんでもすぐに対処出来ると思って!)
原理は理解した。でもだからといってすぐ対応出来るなんてことじゃないと、彼女は己の内で悪態をつく。飛んでくる光線には楔を打ち込むための切断系魔法が張り付いている。1枚の壁程度はすぐに突破されるだろう。複数枚あったとしても、先に重ねた障壁が突破されているので割ってこられるだけの威力がある。
(恐らくあの切断系の効果自体は大したことない。効果をきちんと選んだものならもっと有効で面倒なやつはいくつもある。あれはただ触れたものを切っているだけ。切断系の効果を切った上で防御すれば防ぐことは出来る)
切断系魔法は威力が高い傾向にありその効果も他の族と比べれば有用な方である。だがそれと同時に無視し難い弱点も有していることを彼女は知っていた。
(【切断系】の最も有名な対処法は同族魔法を切断する魔法……)
皮肉にも同じ族に分類される魔法の中に、特効級の魔法が存在していた。それが異世界で発見されている。これにより切断系の最大の脅威は結界系や障壁系ではなく同族たるこの4族魔法であるらしい。幻影の彼女はアーノルドに与えられた知識から最適な魔法はそれと判断するやすぐ対応に移る。
まずツカサと同じものから一回り大きい魔法を発動し、その先端に相手同様切断系の魔法を付けて同速で飛ばし、標的へ向け発射する。狙うはツカサが放った魔法。
空中で互いの魔法がぶつかり合うと、彼女が先端につけた魔法の効果で、ツカサ側の4族魔法が効果ごと断ち切られる。切った魔法はその後2族魔法に飲まれてかき消されるが、今度は彼女の2族魔法とぶつかり合い、サイズ差によってツカサの魔法は飲み込まれた。
「くっ……!」
少し前に即座の対処は無理と判断しておきながら、彼女は高速で頭を回転させた結果導いた方法による対処を実行して見せる。
発動も回避も間に合わず、避け切れなかった攻撃を胴体側面に受けるツカサ。痛みで片膝をつきながらもなお彼女の方を睨むように見続ける。
(痛みを無視しきれている訳じゃないでしょうけど、幻覚だと分かれば気持ち持ち堪えられる、って感じか。血の幻覚くらい追加でお願いしとけば良かったかな)
既にダメージ表現としてかかっている幻覚はツカサの着る服をないもののように見せ、彼女など同じ幻覚空間内にいる者からは生まれたままの格好にしか映らない。彼女は自分と同じ姿を見てもなんとも思わないが、ケイスケなどはそんな姿を幻覚といえど直視出来ないようで、こちらに背を向けて全く見ようとしない。
(嘘でも裸に近い格好を見られていると認識させれば動きが鈍るかもって狙いなんだけど、効果がありそうなのはあっちの男だけか)
思惑通りにはそう行かないかと彼女は気を引き締めた。
一番動きを封じたいツカサは若干の恥じらいを残しながらも動けていた。狙い通りに効いているのは戦う予定のなかった乱入者の方で、ツカサを助けに来ながらもその格好を目に入れないため背を向けて動けず、ツカサも彼の視線がこちらに向いてないかチラ見する程度で確認するなど、僅かながら彼女にとって隙を作ることになっている。
そのため、彼女を有利にするだけの隙を提供しているかといえばあまりないという実情。しかし彼女はそれで十分だった。
(多少は甘さが抜けたみたいだけど、そう簡単に根付いた価値観がひっくり返るもんですか)
「あ、そっちの男が見てる」
「え!?」
「隙あり」
バッと後ろを向いたツカサへ攻撃を入れる。直後、振り向いてなどいなかった彼を見て罠だと気付いたツカサが防御の障壁を割り込ませる。
「あら、失敗」
「この……なんて最低な気の逸らし方」
攻撃が当たらずやや残念そうに言う彼女だったが、騙されたツカサは顔を赤らめて文句を言う。
「戦っている最中にそんなこと気にして気を逸らす方が悪いんでしょ。大体裸なら今さっき見られたじゃん」
「そ、それとこれとは別! 一回見られたからってずっと見られていい理由にはならないでしょ! 貴方だって!」
「時と場合によるかな。戦いは隙を多く晒し、打つ手を間違えた方が負けるの。裸になったことで相手が打つ手を間違え隙を多く晒すなら、私はお色気や際どいものだろうと実行する。だってそれで勝てるんだから」
自信と余裕に満ちた顔で言った後、ツカサが彼女に与えたダメージの影響が出てきて、彼女の服がぼろぼろと剥がれ出す。破けて素肌を晒していく自身の服を見ながら、彼女は冷静に思考を紡いでいく。
「……このままじゃ私も同じ格好になっちゃうかな。そうなる前に決着を付けないと」
言葉とは裏腹に、自身の格好がどうなろうと構わないように喋るのだった。
(この人を倒すには、私が一切油断せずに戦って生み出した隙を突けないといけない)
ケイスケと会話している間に思いついた攻撃も真似され、更に上を行かれた。同じ攻撃は通用しないどころか、逆に攻撃を喰らう機会になってしまっている。幻影でもマジックネイティブの能力はあるのか。そう思いたくなる対応速度を見せられたツカサは、隙を晒させてからトドメに繋げられる手を考える必要に迫られる。
(E系魔力は全然使いこなせていないし、イグノーツさんから教わった魔法も多くは練習量が足りていない。ここ一番ってタイミングで発動が失敗したら、今度こそお終いになる)
ツカサはあらゆる手を考える。自分一人で出来ること、失敗も可能性に含むハイリスクなやり方、相手が都合よく動いてくれないと機能しないやり方。そういったものを現実レベルで可能なやつ以外除外して、選別していく。
「ツカサさん。俺に出来ることはないか?」
ツカサが思考を巡らせていた時、後ろで背を向けたままのケイスケが尋ねた。
「ケイスケさん……」
「このまま黙って成り行きを見守っているなんて嫌なんだ。ツカサさんだけに任せたくない。俺も手伝いたんだ」
顔もツカサの格好を見ないように逸らしているので、ツカサからはケイスケがどんな気持ちを顔に浮かべているかは定かでない。分かるのは彼の声と言葉から伝わってくる、このまま成り行きに任せるのが嫌だという思い。
(助けてもらえたら嬉しいとは思う。でも、例え手伝いでもケイスケさんに彼女を倒すのを手伝わせるのは……)
自分が幻影の彼女を殺すことには多少覚悟は定まったつもりでいるが、他の人、それもサヤの兄に手伝いだけでも任せるのに抵抗が残るツカサは躊躇う。
助けに来てくれた彼の優しさにツカサは心から感謝している。心の中で生まれていた理性と感情の争いは理性側の意見が正しかったということで決着が付き、少し前まで恐怖で分からなくなっていた彼への信頼は戻っていた。だがそのためにツカサは彼へそういうことをやらせたくないという思いが出てくる。
けれど悩んでいる時間はない。お互いに攻撃の手が止んでいる今を利用し、向こうの彼女もツカサをどう倒すか考えている様子。いつ彼女が方法を決め実行に移すか分からないのにうだうだと悩んでいたら、それどころではなくなってしまう。
(防御だけならケイスケさんに任せて……ダメだ。ケイスケさんは魔力制御が上手いけど正式な魔法士じゃないし、私と違ってイグノーツさんから障壁系や結界系を教わってる訳じゃない。魔法を発動する感覚にも慣れてないかも。全く知らない魔法を発動するとなると失敗する恐れが……でもそれなら)
ツカサの脳裏に1つ方法が思い浮かぶ。それは自身の持っているO系魔力を彼に一部譲渡することで、障壁系の魔法などを発動する時の成功率を上げるというもの。
(私のO系魔力ならあの魔法を使うのに多少は慣れてるはず。ケイスケさんに渡して魔法が少しでも成功しやすく出来れば、ケイスケさんでも……)
そのためには前に一度やったことのある魔力を譲渡するやつをしなくてはならない。ツカサは本を呼ぼうとしてそれがルールに抵触するか一瞬考えるが、本を使うなとは言われてなかったので使用に踏み切った。
「ケイスケさん、こっちへ来て」
すぐに本を通して床に譲渡用の魔法紋を出させると、彼を指定の魔法紋の中に入れようと誘導する。「え?」とよく分からないまま円の内側にそのまま誘導されたケイスケ。準備が完了したと思いツカサはすぐ始めようとするが、
『警告:受け取り側に受容の精神が出来ていません。特殊な環境にいる影響により距離を空けた譲渡に障害が出ています。双方が中央円に入って物理接触を実行してください』
という警告文が本に浮かんできた。
(受容の精神のやり方ケイスケさんまだ知らないんだった! すぐに教えて……え? 障害が出ている? 中央円に入って………………)
書かれてある文章を読んでいくうちにツカサは焦る表情から戸惑う表情へ、更に石像のように固まったあと、今までにないほど顔が熱くなるのを感じた。
「つ、ツカサさん? 俺はどうすれば……」
困った様子のケイスケは背を向けたまま、黙ってしまったツカサに何事かと尋ねる。答えに困るツカサ。
“戦いは隙を多く晒し、打つ手を間違えた方が負けるの”
(〜〜〜〜もう!!)
別の方法を考え直す時間すら惜しい。
長いようで短い数秒の間、困った末に彼女の言葉が過ぎったツカサは行動に移した。
「も、もっとこっちに来てください!」
「こ、こう?」
「そのまま動かないで!」
ケイスケが真ん中にある中サイズの円に入ったと同時に、ツカサも同じ円に入る。
(物理接触っていうけどどれくらいくっつけばいいの!? 手を繋ぐくらい? それとももっと密着しないとダメなの!?)
恐らくは接触しないと譲渡が出来ないほどの妨害をアーノルドがしているのだろうと考えるツカサだが、どの程度ならいいのか荒ぶる感情の波のせいで混乱していた。そして続いてその疑問に答えるように本に出てきたメッセージを読む。
『接触量が高いほど譲渡は早く完了します。必要に応じて調整してください』
(……もう知るかああああ!!)
ツカサは完全に投げやりモードになると、彼の背中の方から抱きついた。背後から突然のハグを受けたケイスケは「え、え!?」と驚くが、下にある魔法紋を見てツカサが何をしようとしているのかを察する。
「今から私の魔力を一部渡します! それでケイスケさんは私達を魔法で守ってください! やり方は後で言いますから、とにかく、受け取れるように私を信頼してください!」
いきなり後ろから抱きついてきて「使ったことのない魔法を使って」、『信用』を飛び越して『信頼』までしろと、無茶な要求をするツカサ。けれど懇切丁寧に説明する余裕も時間もない中、ツカサが話せるのはこれが限界だった。
ケイスケはそれを聞いて頷く間もなかったが、「無理」や「待って」など止めるようなことは言わなかった。
やがて淡い光を放ち出す魔法紋。次いで本のページに譲渡を開始する合図が浮かぶ。
『受け取り側は精神を受容に、受け渡し側は自身の魔力を操作して相手の方へ送ってください』
(お願い間に合って……これ以上触れるのは私が保たないから!)
ツカサは身体の中にあるO系魔力を感じ、それをケイスケへと送り出す。密着して伝わってくる彼の熱に、己がしていることの恥ずかしさで高まる体温。それらに混じるように自身の中から何かが抜け出ていく感覚。反対にケイスケの方では入ってくる他人の魔力へO系魔力の免疫反応が始まったのか、痛みに耐えるような小さな声がしてくる。
「っ…………!」
それは前に魔力を受け取った時感じたものだと、ツカサも気付く。
彼の中で守ろうとしている。ツカサが送っている魔力から、彼の魔力が守ろうと動き回っている。
「これは……どうすれば……!」
拒絶反応のような痛みに耐えながら、彼はツカサに聞く。
ツカサは一度目を閉じると、あの時にツェレンから言われたことを思い出す。
「ケイスケさんの中にある魔力に伝えてあげてください。私が送っている魔力のことを、怖がらなくていいよって」
「魔力に……それって、オドってやつに?」
「はい。オドに伝えてください。受け入れていいんだって」
自分がツェレンに言われたことを、今度は彼に向けてやるツカサ。
そのまま暫くすると、魔法紋から放たれていた淡い光が消えていく。ツカサは魔力の譲渡が完了したのか、或いは失敗したのか判別出来ずにいたが、
『O系魔力の譲渡を完了しました。吸収率64%』
宙に浮いている本へ表示されたメッセージを確認し、ホッと胸を撫で下ろした。




