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お互い様(3)

「それでは行ってきます」

「気をつけてください」

「大丈夫です。私もイグノーツだから」


 私に向けてウインクをすると、ラシェルは窓縁に足をかけ、ばっと跳躍するかの如く飛び出ていった。

 彼女が飛んで行った方向を見つめ、その姿が見えなくなるまで追い続ける。


「大丈夫だよ。ラシェルお姉ちゃんが言ったことは本当だから」


 横からした声に振り向いた私は、こちらを見上げるツェレンと目を合わせる。


「ツェレン……」

「絶対にサヤお姉ちゃんを守ってくれる。だから、信じて待とう?」


 不安など感じてなさそうな声で、ラシェルへの信頼を表すように憂いのない表情で、今もサヤのことを気にしている私の手を、ツェレンはそっと掴む。


「信じて、いいの?」

「うん。ラシェルお姉ちゃんは大きな森にも負けないよ」

「そっか……」


 そう力強く頷いてくれる姿に、なんだか勇気をもらえた気がした。

 私もその手を握り返し「ありがとう」と答えると、ケイスケさんの方を見遣る。


「なんとかなりそうで良かったね」


 こちらの視線に気付いたケイスケさんは微笑むと安堵するように喋ったが、私はそれを直視出来ない。


(またやっちゃった……)


 気まずさと気恥ずかしさが絡み合ったような気持ちが内側より込み上げてきて、ぶわっと熱を感じる。


 サヤのお兄さんで彼女の家族とはいえ、部屋に招き入れて二人になった後、私がサヤのことをどう思っているか吐露してしまった。急にこんな話を聞いてもらって、迷惑じゃなかっただろうか。


 少し情緒が変になってたという言い訳はあれど、平常心が戻ってくるほど「私は何をやってんだ」という羞恥心は膨らみ、心の中で悶絶する勢いとなる。とにかく自分のしたことを思い出すのが恥ずかしい。


 だから正直、穴があったら入りたい気分だった。

 顔を見るのも、見られるのも恥ずかしくて顔を逸らしてしまうのもそのせい。

 当然、その様子もまた対面しているケイスケさんに見られている訳だが……


「ケイスケさん、さっきはその…………」

「うん?」


 微塵も気付いてなさそうな自然な表情を浮かべているので、私の自意識過剰なのではと——思いかけた時である。


「でもお姉ちゃん、男の人を部屋に入れて二人きりになるのはちょっと大胆……」

「わー!! わー!!」


 ツェレンがとんでもないことを口にしかけているのに気付き、彼に聞かせまいと反射でその声を遮った。

 手を握ったままだったので私はツェレンを引っ張り室内の反対側まで移動すると、彼に聞こえない声量で彼女との対話にかかり出す。


「あ、あのねツェレン。あれは話そうとしていたものが廊下で話すにはどうかなーってことを話そうとしていたから部屋に入れただけで……それを超える意味はないんだよ?」

「えーでもそれって誰がいてもそうするつもりじゃないでしょ? ツカサお姉ちゃんはケイスケお兄ちゃんなら部屋に入れて良いと思ったから入れたんじゃないの?」

「それは……」


 正直そこまで的外れな言葉じゃないし、気持ち的にアリかナシかと問われたら「ナシ」とは思えない。

 けれどそれを声に出して認めるのが、ツェレンの前でそうだよと答えるのが恥ずかしくて。

 もしかしたら(ケイスケ)に聞こえてしまうかも……なんて考えると、また顔に熱が上ってくる感覚がして言うのに躊躇した。


 私は悩んだ。

 目の前にいるツェレンへどう言えばいいのか。

 適切だと頷ける返答に窮している。


 考えろ。

 頭をフル回転させて答えを導き出そうとする。


「ケイスケさんはサヤのお兄さんでもあるから! それに優しくて良い人だもの。部屋に入れても良いと思うのは変じゃないでしょ?」

「たしかにお兄ちゃんは良い人だけど……」

「でしょ?」

「けどお姉ちゃんが押し倒せば応えてくれると思うよ」


 彼女がそう言った時、私は無意識のうちに自らの手でツェレンの口を押さえていた。


「きゅ、急になんてことを言うのツェレン!」


 声を抑えつつ思わず突っ込む。

 いくらなんでもとんでもない発言が飛び出てヒヤヒヤした。


 今の、ケイスケさんに聞こえていやしないだろうか。

 一瞬振り向いて確認すればツェレンを連れて移動する前と変わらぬ位置に立っている。


(落ち着いている)


 見た感じ動揺などは窺えなかったので聞こえなかったのだと判断。

 少しだけ安心しつつ、この子の両親はどんな情操教育を施していたのかと疑い始める。


 異世界だからなのか? 日本とは常識が違うからなのか?

 そういうのはガンガン行こうぜの派閥なのか?

 ツェレンの両親は実の娘に何を教えているのだ。


 本の中から見ていたとして、私達の関係がどんな風に見えていたのだろう。

 父か母かどっちの影響かは知らないけれど……。


 などといった様に考えていると、口を塞いでいた手を退けてツェレンが首を傾げた。


「私のお母さんは、お父さんを押し倒して家族になったって言ってたよ?」


 おのれマザー……!


 母親の仕業と分かり文句がよぎったものの、顔に出してしまわないように耐えた。

 一体いつ教えてたのだそんな話。

 私が同じくらいの年齢で聞いていたら字面通りに捉えるぞ。

 ツェレンに変な影響が出てないか心配……いやもう出てるかもしれない。


(……他にも何か教えていたりしそう)


 このくらいの年の娘にそんなエピソードを教えているなら、その数は一つじゃ済まないのでは?

 そう思った私はツェレンに尋ねてみる。


「そっか、お母さんに聞いたんだね。他にもそんな感じのこと言ってたりしなかった?」

「えーっとね、押してダメなら引いてみるのも大事だぞって言ってたかな」

「なるほど……それってどういう時に使うテクニックかは聞いてる?」

「ううん。でも、いろんな時に使えるやつだから覚えておくといいよって言ってた」


 まだ幼い子供へそんな駆け引きを伝授しようとしてたのか。

 というか他のイグノーツは何をしていた。


 ラシェルの話が本当ならツェレンの見聞きしたことは他のイグノーツ……ザガムとかも知ってたはずだけど。その時のことを知っていたとして何と思ったのだろう。


 頭の中でザガムの思考をシミュレートしてみる。

 こういう時に彼がどんな風に思いそうか。

 今まで接してきた記憶から組み立て想像してみると、脳内ザガムはこう評価した。


『娘想いの良い親ですね』


(…………シミュレーションミスったかな)


 無駄なことに想像力を働かせてしまった。

 眉をひそめたあと思考を切り替える。


 とりあえず、ツェレンに理解してもらうなら先ほど使ってくれた家族という言葉が良いだろう。

 私はその言葉を活用し、幼い少女へ伝える。


「だったらツェレンは分かるかな。そういうのは将来『家族』になることを考えた相手にしかしちゃいけないって。間違っても気軽にやっていいことじゃないの。もし軽い気持ちでやった二人だけの問題じゃない、お互いの家族にも迷惑をかけちゃうんだから。きちんと相手と話し合ってから、やってもいい? って聞いてからじゃないといけないって。ね?」

「うーん……家族になりたい人と、ちゃんと話して決めてからじゃないとダメってこと?」


 自分なりに噛み砕いて理解しようとするツェレン。

 私は「そうだよ」と頷き、微笑んで返した。

 それでツェレンも渋々という風にだけれど分かってくれたらしい。

 まだ言いたげに口を尖らせていたけれど、「……分かった」と言いそれを飲み込んでくれた。


「じゃあ、これだけは教えて。ツカサお姉ちゃんは、あっちのお兄ちゃんと家族になりたい?」

「…………えーっと……それは」


 時としてストレート過ぎて困る質問をぶつけて来るのが、子供の恐ろしいところ。

 すっかり終わった気になりかけていた私は、予想外な方向から放たれた疑問につい言葉を詰まらせてしまう。


(嘘をつくわけにもいかないし)


 ツェレンはイグノーツだ。

 心を読む魔法を使えるし使うことへの抵抗も恐らくないので、下手な誤魔化しならあっさりとバレてしまうだろう。

 どうしたものかと考えざるを得ない。


(私がどう思っているか……)


 本音を言えばそんなの分からない。

 ケイスケさんに抱いている気持ちの正体はまだ確かめようとしている段階にあって、それが何なのかを確定出来る状態じゃないし、そのために何をしようかも考えている最中である。

 はいかいいえで答えるのは多分無理だ。ならばどうするか。


(——情けないけど、素直に言うしかないか)


 腕を組みながらその結論へ辿り着いた私は、じっと見つめて返事を待つツェレンに答えた。


「ごめんね。私がケイスケさんのことをそういう相手と思っているかは、まだ私にも分からないの」

「そうなの?」


 言葉以上の意味はなさげな顔で、首を傾げて聞き返すツェレン。

 私もこくりと、頷いて返す。


「昔、似たような気持ちを別の人に感じたことがあった。その時は驚くくらいその人のことを考えてたよ。ずっと一緒にいたいなって。もっと沢山話していたいなって。でも、その気持ちもある日突然消えちゃったの」

「どうして?」

「分かんない」


 頭を左右に振りながら答えた。

 誤魔化しなどでなく本心からそう言っているのを伝えるように。


「私も、急に消えるとは思ってなかったから……。どうしてそうなったか分からないと、この気持ちの先にも同じことが待っているのか不安なの。だからそれを確かめておきたいんだ。それまではそういうのって、難しいかも」


 これが同じ気持ちなら、また消えるのではないか。

 前の繰り返しになってしまうのではないか。

 そんな不安を抱いているから、とツェレンに語った。

 そうなるのが嫌だから、なった後が怖いからと。


 私の心からの言葉が伝わったのか、それを聞いてツェレンも真剣に悩んだ顔をする。難しい話だろう。きっと長考すると予測し、ツェレンの返事を待つか、この話を一度終わらせるか考える。


 ——が、そのどちらにもならない。


「……ツカサお姉ちゃんはどう思ってるの? 今の気持ちがその時と同じでいてくれたら嬉しい? 同じじゃなかったら嬉しい?」


 私の気持ちを聞いたツェレンは、私が想像してもいなかったことを尋ねたから。


「同じじゃなかったら……?」


 分からないとは思っているけれど、それが違ったら同じだったらどっちが良いと思うのか。

 どっちなんだろうと悩むばかりで、判断材料を集めることで決めようとしていた。


 だからその質問にドキっとした。

 思考の盲点を突かれたような気持ちで目を丸くする。


「………………」


 ツェレンの真っ直ぐな視線が刺さる。

 私に答えてと望んでいる視線。

 無言ゆえに、子供らしく急かされるより圧力が強い。


(……考えてみよう)


 私は今一度、深く思考の海へ潜ってみた。

 その気持ちがふっと消えたら、消えなかったら、嬉しいのか、悲しいのか。

 この気持ちの答えとして、何であることを望んでいる?

 それを想像した時に思ったことは。


(どうなんだろう)


 気持ちが消えたら、同じだったと残念に思うような気がする。

 気持ちが消えなかったら、私は彼とどうなりたいと考えるだろう。

 嬉しいか悲しいかで言えば、消えれば悲しいかもしれないけど消えなくても嬉しいかは想像出来ない。

 その時の自分の顔が、反応が、気持ちが、まるで思い浮かばなかった。


「分からない?」


 ツェレンは、ずっと長考する私にもしやという顔で問うた。

 顔にでも『分からない』と浮き出ていたのだろう。


「…………うん。私も、何か分かったらいいなって思ったんだけど」


 それに私も渋々ながら、首を縦に振る。

 顔や声には出さなかったが、自分自身にがっかりした。

 気持ちの正体を探れそうな気がしたのに、『分からない』で終わったのが残念で。


 この気持ちを知ることが出来るかもしれないと、少しでもそんな気がしたからこそ答えが出ることを期待していたのかもしれない。


(そんな簡単に分かることなら、とっくに理解出来ているよね……)


 はあ、と横を見る。

 何を見るわけでもなく、何もない方へ目を逸らしたくなって。


「そういうこともあるよ、気にしないで」

「そうかな……?」

「分からないことが分かったって、言うやつだよね? 大丈夫だよ。それも前へ一歩進んだことだから」

「……ツェレンは難しい考え方を知っているんだね」

「ザガムおじさんが言ってた。自身が何も知らないことを知るのは、考える道の始まりなんだって」


 自身が何も知らないことを知る。『無知の知』みたいな言葉だ。

 異世界でも人は人。

 似たようなことを考える人はいるのか。


 ツェレンの方へ振り向いて考えていると、ツェレンがこちらを見つめて「あのね」と言い出す。


「私手伝うから。もしお姉ちゃんがその気持ちを知りたいって思ったとき、声をかけて」

「手伝うって……どんな風に?」

「色々。ケイスケお兄ちゃんと二人きりになりたい時とか、他の人が来ないように通行止めする」


 ツェレンはふんすと息を荒くして両手を握り込んだ。

 続いて私に熱望するような視線を送る。

 なんだか無性にやる気になっているらしい。

 どうしてそこまで積極的なんだろう。


「なんでそこまでしようとしてくれるの?」

 

 疑問に思って尋ねた。


 客観的には、私とツェレンはイグノーツの本の所有者とその中に保存されている意識データという関係。

 言ってしまえば、ただそれだけの関係だ。

 私の個人的な事情へ手を伸ばそうとする理由なんて————


(……いや、違う)


 そう思っていられるのは、つい最近までの話だ。

 確かに最初に本を取ってからこの船に乗る前までは私とツェレンを繋ぐ関係は本以外になかった。

 でも、この本には私の祖父、ゲンマおじいちゃんの意識データも保存されている。

 それをつい最近だけど知った。


 ツェレンにとってイグノーツはもう一つの家族。

 その中には私のおじいちゃんも入っている。

 なら……私とツェレンの関係は?


 ツェレンが私の疑問に答えたのは、そう思い至った時だった。


「実は私、ツカサお姉ちゃんのことずっと前から知ってたんだよ」

「ずっと? それって……私があの本を手に取る前から?」

「それよりもっと前。この世界に生まれてくる前から」


(私が生まれてくる前から?)


 正しく聞き取れなかったかのようにキョトンとした顔で見つめる。


「この前、災害から逃げる練習をしたときに使った機能。お姉ちゃんは覚えてる?」

「災害再現機能だっけ? 極大繁茂から逃げる訓練で使った……」

「あれ、使ってみてどうだった? すごかった?」

「それはもう凄かったよ」


 フルダイブ型拡張現実(VR)というやつの一種なのか詳しく知らないけど、恐ろしい出来だったのは覚えている。

 現実に等しい再現度、現実のそれと同じ五感、物理演算の正確さ、認識出来るようなラグの有無、それを実現出来る範囲の広さ。

 どれをとってもこちらの技術水準で見ればオーバースペックとしか思えない代物だ。

 けれど、それが今の話にどう関係しているのだろう。


「あれって()()なんだよ」

「一部?」


 どういう意味で一部なのか。

 今の一言だけだと情報がまるで足りず、私は聞き返した。


「限定用途? とかいうので使用するために一部だけ使ってるの。そもそもこの機能は『災害を再現するために一から作った』んじゃなくて、元からある別の機能をちょっと借りて、『災害を再現する用』に作ったものなんだって。だから、本当はそれをするためのものじゃないの」

「なら……本当の機能は?」

「バンショウエンザン? って言うやつで……文字が難しいけど、これ」


 そう言ってツェレンは本を側に召喚し、中が見えるようにこちらに開く。

 私が開かれたページをまじまじと見れば、彼女の発した言葉が日本語として変換され浮かび上がる。


(『万象演算』……)


 万象とは、形を持つあらゆるものを指す言葉。

 演算とは、なんらかの計算式を使用して計算することを指す言葉。

 確かに小さい子には理解しにくい単語と組み合わせだ。


(何の捻りもせず読むなら、あらゆる事物を計算する機能ってところ、かな)


 言葉の意味を紐解くと恐らくそのような意味になる。

 なんとも大層な名前を持つ機能だろう。

 あらゆるものを計算するなんて、まるで夢みたいな話。


(災害再現機能は、この万象演算の機能を部分的に利用したものってこと?)


 ツェレン本人も全て理解しきっている風じゃなさそうなので断言しないが、機能を借りている、一部だけ使っているとの言葉から推測するに、そういうことなのではないか。

 あれだけの規模とクオリティの再現をしておいて、それが実は本来の機能の一部分でしかありませんなんてふざけた話に聞こえるが、だとすればこの万象演算にはどれだけのことが可能だというのだろう。再現機能時の体験から、物理演算に近いか等しいものと思われるが。


(ツェレンの口振り的に、この万象演算を使って私のことを知ったっぽいけれど……)


 何が演算出来るのだろう……。そう思案を巡らせようとした時、「あっ!!」とツェレンが悲鳴を上げた。


「ツェレン、どうしたの!?」


 俯いた状態より顔を上げ、ツェレンの方を見た。


 両手で本を持ち、中身が見えるよう開いていたツェレン。

 その口元に覆い被さる形で、紫色の雲みたいなものがまとわりついている。


 あれはなんだ。

 先ほどまで存在しなかったはずの異物感ある物に、思わず瞠目する。


「ーーーー!! ーーーーー!?」


 ツェレンは何かを伝えるように、必死で口をぱくぱくさせている。

 しかし、言っている内容は一切分からない。

 声が聞こえてこないから。

 何かを言っていると窺えるのは確かだが、


「……声が出ないの?」


 観察した結果からもしやと思い聞けば、彼女は大きく首を振った。

 それによりこの紫色の雲が、ツェレンが声を出すのを妨げているのだと気付く。

 口から剥がそうとしているので手伝おうとした。でも、


(剥がせない……!!)


 本物の雲みたく手で触れることすら出来ず、剥がすことは出来なかった。

 抵抗は無理と悟ったのか、ツェレンの顔にも諦めが浮かび、大人しくなる。


 なぜ、こんなものが急に現れた?

 彼女とはこれまで何日も話したり一緒にいたけど、このような現象は一度も起こったことがない。


 原因を考える私の前で、宙に浮かんでいる本のページに、新たな言葉が書き連ねられる。


“子供だからと、好き放題して許されると思わない方がいい”


 数秒の間それが表示されたあと、ページはまっさらな状態に戻っていった。

 唐突に浮かんできた文章の、警告染みた内容。


(なに、今の……?)


 事態を飲み込めない私は、声が出せなくなったツェレンを一瞥すると、すでに消え去った威圧的な文章を思い出す。そして書いた者の正体を察した。

 収集録に保存されているイグノーツ達の意識、それへの干渉が可能と考えられる候補は一つしか知らない。


(まさか……【管理者】?)


 この時初めて私は、【管理者】らしき者がイグノーツへ介入してきたところを目撃したのだった。

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