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(4)眠れる小説

ロケ収録の合間、食事時間に入り、今回のドラマの共演者で相手役の広瀬一也に

声をかけられた。

「恭香ちゃん、一緒にお弁当食べない?」

広瀬の誘いに坪井の目が光った。

共演者なので邪険にできない恭子は、微笑みながら丁寧に断った。

広瀬は残念そうな顔をして自分のロケ車に戻っていく。

「恭ちゃん!」 その様子を見ていた坪井がよしよしと、恭子に向って真顔で

Vサインを送った。

恭子もうなずきながら坪井にVサインをした。


広瀬は28歳で女性からの指示を100%受けている人気No1の俳優だ。

その広瀬と坂井恭香が共演するとあってドラマの視聴率獲得に関係者の期待は

高まっている。

広瀬一也は坂井恭香に好意を抱いていたが、坪井がすかさずキャッチし、

寄せ付けないようにしている。

業界関係者の間で、広瀬の女性関係の話でいい噂は聞こえてこないからだ。

「絶対仕事以外では近づけないように」 と事務所からも強く言われている。





恭子は急いでロケ弁を食べ、残った時間を利用して撮影現場に一番近い本屋に

行った。

―――4冊出しているって言ってたよなぁ。

自分では見つけられず、店員に尋ねると2冊は見つけられたが残りの2冊は

取り寄せになると言われ、次はいつ来られるかわからない場所のため、

見つかった2冊だけを購入した。


恭子は大切に本を抱えてロケ車に戻り、さっそく本を取り出した。

「あれ?恭ちゃん、小説なんかも読むんだ」 

坪井に言われた。


「うん、ちょっと読んで見たくなったの」

恭子は表紙の「かんの ゆう」という文字を見ながら答えた。


「じゃぁ、今度からプロフィールの趣味のところに(読書)も加えておこう」

坪井のそんな言葉は耳に入らず、表紙をめくった。



読んでいる途中で撮影再開の合図が入り本を閉じたが、

―――む、難しくて…わかんない。

恭子の素直なマサルの小説に関しての感想だ。

時代設定が戦国時代、その中での恋愛物語なのだが、言い回しが難しい。

売れないのは、それだけ今の時代にはそぐわない内容なのかもしれない。


撮影が終わり、広瀬に食事に誘われたが、これも微笑みを付け加え丁寧に断った。

広瀬は「なぜ自分が食事に誘っているのに断られるんだ」と疑問に思っている。

恭子と坪井は現場をそそくさとあとにした。

「しつこいね~広瀬君。恭子ちゃん、スキャンダルはご法度だからね!男なんて部屋に

 呼んじゃダメだからね!」

「…はい」

坪井に念を押され、恭子の頭に浮かんだのはマサルの顔だった。



自宅に着き、シャワーも浴びずにすぐさま本を取り出し、最初から読んだ。

が、すぐに睡魔に襲われ、寒さで目を開けたら深夜2時を回っていた。

湯船にゆっくり浸かり、ベッドに入り、また本を読み始めた。


2分で寝れた。


この後、恭子は寝付けないときはマサルの本を読んでいる。

5分で爆睡に落ちる。

そのため先に進めず、1冊も読破できない魔法の本だ。

不眠症で悩んでいる友人が何人かいて、マサルの本を勧めた。

友人たちから何気に感謝され、複雑な気持ちもあったがマサルの収入に少しは

貢献している恭子であった。



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