(13)粉雪
クリスマス・イヴ。
夜の空には、手が届きそうなくらいの低い雲が空に広がっている。
恭子は7時に仕事を終えたが、その後、いつもお世話になっている業界の人たちとのクリスマスパーティに参加した。
マサルは深夜1時までバイト。
そのあと友人宅の風呂を借り、自分のアパートに向い歩いていた。
日付はもう、イブからクリスマスに変わっている。
マサル御用達のエロ本立ち読み専門のコンビニを通り過ぎると
「マサル!」 コンビニから突然恭子が出てきた。
「なにやってんだよ、こんな時間に!あぶねーだろ?!」
恭子は12時前に自宅マンションに着き、マサルの帰宅時間に合わせ駅近くのコンビニで
マサルを待ち伏せしていた。
「迎えに来たのに…」 恭子は怒った顔をした。
「寒いし、あぶねーし…家で待ってればいいだろう?」
心配して言っているマサルの気持ちはわかっているが、恭子は脹れた。
「じゃぁ先に帰ってまってるからいい!」 と、とっとと足早に歩きだした。
マサルは呆れながらも恭子のうしろ姿を追いかけて手を掴み、
「送っていきますよ。お嬢さーーん」 と、おどけて言ってみたが、
恭子の頬っぺたは脹らんだままだ。
マサルは苦笑いをしつつ、
「恭子の頬袋何入ってんの?ひまわりの種?クリスマスケーキ?
すんげーデカイ頬袋!ほらほらクリスマスなんだから、拗ねない拗ねない」
マサルは恭子の頬っぺたを両手で包んでつぶし笑った。
マサルを見上げている恭子の鼻の頭に冷たいものが落ちた。
「あれ?」 恭子はマサルの手で潰された顔のまま空を見上げた。
マサルもつられて上を見ると、雪が二人の顔にあたり始めた。
「うわぁ、粉雪!」
小さな結晶は地面に落ちることなく10分にも満たない時間、宙に舞うだけだったが
「プレゼント交換無し」と決めていた二人には空からの素敵なクリスマスプレゼントだ。
少しの間、二人は向かいあったまま空を見上げていた。
「ほら、私がマサルのこと迎えに来たから一緒に見れたんだからね、雪!」
今度は恭子がマサルの頬っぺたを摘んだ。
「っ痛ぇなぁ…、迎えに来てくれてありがとう!」
ニッっと笑ったマサルに、恭子はニッと笑い返した。
「冷えるから帰ろうか」
まだ少しだけ舞う粉雪の中、二人はアパートへ向った。




