転生悪役令嬢と転生ヒロインの取引。
似ている作品があったらスミマセン。
この王立学園には噂になっている貴族がいる。
プリシラ・ルーヴァ子爵。
その才能を買われ、一代で貴族へと至った天才的な少女。
私はトルカ・ヴァイレナ。
ザイル王国の侯爵家の長女にして王太子であるアレクサンダー・ザイルの婚約者だ。
この世界は前世でハマっていた乙女ゲームの世界なのである。
そのヒロインがプリシラ・ルーヴァ子爵なのだ。
私はゲーム内でプリシラを虐め倒して断罪される存在、それが私。
つまり悪役令嬢ということ。
上等よ。
私がヒロインを負かしてあげるわ!
○
……私は目の前に座る彼女を見る。
「ルーヴァ子爵?」
「本日は私のため時間を取らせてしまい申し訳ございません」
「あー。うん、いいよ」
どうしてこんなことになっているのかしら?
私はプリシラ・ルーヴァに呼びだされた。
こういうのって確か、相手が転生者ってパターンで『どうして虐めないのよおぉォォォォオ!?!?』とか叫ぶシーンじゃない?
悪役令嬢モノでは良くあるわよね。
「で?」
「私、前世の記憶がございます」
「あら。私もよ?それで、虐めないからストーリーが進まないって言うつもり?」
やっぱり転生者だったわね。
彼女は顔をあげると、真剣な様子で。
「婚約者の座を私に譲って下さい」
「直球ね!?」
まさかこんな直球で言われるとは……!
でも駄目よ!私は負けず嫌いなの。ヒロインに譲ってなるものですか!
「そんなの駄目に決まっているでしょう?現実的な問題、貴女は子爵。私は侯爵令嬢よ。だから――」
「こちらがアレク様と婚約解消する利点にございます」
「アレク様ッ!?」
な、な、な……!?もう愛称で呼べる仲だなんて……!?
ズルいズルいズルい~!
私は許可されていないのに!いっつも義務的な対応されてるのに!
「ズルいわよ!破廉恥よ!」
「心の声が漏れてますよ。ヴァイレナ様、貴女、本当はアレク様を愛していないでしょう?気持ちを偽っているんでしょう?」
「ッ!?」
そんなことは……。
「私が勝つのが嫌だから。だからアレク様が好きだと、そう心に焼き付けた。違いますか?」
「違……くない」
確かに好きではない。
でもゲーム通りに進むのが嫌なのだ。
だから――。
「貴女がいくらアレクサンダー殿下を愛していても、アレクサンダー様が貴女を愛していても!私は貴女の邪魔をし続ける!それが私の今世の目標なのよ!貴女を王妃にはさせないわ」
ヒロインを指差して不敵に笑う。
悪役令嬢の笑いで。
「私、アレク様のこと好きじゃないですよ」
「え?」
なんつった?
「ですから私、アレクサンダー様のこと好きじゃありませんよ?」
「え?じゃあなんで婚約者の座を譲ってって……」
「私は日本の文化をここに根付かしたいんですよ。その為には子爵程度の力では不可能です。なので王妃になりたいのです!アレク様の好きなところは権力とお金!」
ヒロインは目を輝かせて微笑んだ。
「だから、アレク様と婚約解消する利点を読んで下さいな」
「ええ……」
なんか、邪魔する気が失せたわ。
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「どうしたの?ロイ」
「ああ。トルカ」
私はその後、アレクサンダー殿下との婚約を解消し、新たに隣の獣国の大公子息、ロイ・ウォルシュ様と婚約した。
ヒロイン曰く、『ウォルシュ卿は初めて会った交流会の時に一目惚れしたらしいですよ』と。
なんで知っているのかと聞くと『私は貴族になる前、商人として成功して子爵になりましたから』らしい。
「アレクサンダー殿下とルーヴァ子爵が結婚したみたいだよ。恋愛婚だってここにも話がきてるから」
「恋愛婚……ねえ」
ヒロインは愛してないらしいけれどね。
そして着々と日本の製品なんかを売りに出しているらしい。
私もたまーに手伝っているわ。
「トルカ、愛してるよ」
「私もよ」
私たちも恋愛婚かしら?
私は婚約してから好きになったのだけれど……。
今は転生ヒロインと取引して良かったと思っているわ!
だって今はとても幸せなのだから。
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